2019/09/29

肺炎で入院後は10時間以上安静になっている

Fast-track pneumonia pathway focusing on early progressive mobilisation: a clinical feasibility study

ERJ Open Research 2019 5: 00012-2019

https://openres.ersjournals.com/content/5/1/00012-2019

肺炎や下気道感染症はデンマークにおいて、急性期病院入院の1000人に3.1人の割合であり、最も共通した理由である。様々なヨーロッパでの研究において、肺炎で入院した患者の5-15%が死亡している。
肺炎はすべての年代、社会背景に生じ、高齢者においてはフレイルの大きなリスクである。肺炎患者は、複数の合併症をもち、機能レベルが低く、エネルギー摂取量が少なく、認知機能障害や抑うつといった特徴がある。
加えて、急性期病院に入院した高齢者は、ベッド安静や不活動が遷延しやすく、さらなる身体機能の低下を引き起こす。

外科術後の軌跡をたどった、ある研究に影響をうけ、市中肺炎患者かどうかを検索するための肺炎軌跡(fast-track pneumonia pathway (FTPP))は、系統的な治療の一部として、早期モビライゼーションを支持するかもしれない。
FTPPは、臨床的なワークシートに沿って実施:医師の意思決定のサポート(例えば、抗菌薬使用についてや、モニタリングの指示、国際的な肺炎ガイドラインに応じたケアの実施など)
FTPPの基準は、早期モビライゼーションを阻害、遅延させるような、不必要な治療を減らすこと。更に、生理学的評価ツールを用いて、入院中と退院後10日間、身体活動や臥床時間を観察し、モビライゼーションを把握する。

18歳以上でレントゲンにて肺炎がある患者をリクルート。
除外基準は、歩行補助具を使用してでも歩けない、デンマーク語が話せない、認知機能が低下しており、説明(インフォームドコンセント)が行えなかったり、加速度計を装着できない。


入院後最初の24時間:1/4の時間を臥位、座位、立位で過ごしている。看護師が、標準的なモビライゼーションに沿って実施。
ADLはBathle Indexで評価。
在院日数中央値は4日

全患者は入院後24時間以内に20分以上のモビライゼーションを実施。
加速度計の結果、1日約10時間臥床していたが、入院中に徐々に活動時間は増加。


今回の研究では、入院中の安静による影響を弱める必要があり、安静は、日常生活機能や主なアウトカムに即座に影響する。

2019/09/27

IPF患者で低酸素と低活動量の死亡リスクへの影響

Physical Activity and Exertional Desaturation Are Associated with Mortality in Idiopathic Pulmonary Fibrosis.

J Clin Med (IF: 5.688) 2016 Aug 18;5(8).

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27548238

<背景>
特発性肺線維症(IPF)は、低酸素血症、身体不活動、予後不良の慢性肺疾患である。
目的は、身体活動(PA)と動作時低酸素(ED)がIPFの死亡率を増加させるかどうかを評価すること。

<方法>
34人のIPF患者(平均68歳)。IPAQ質問表、6分間歩行前後でのSpO2の差(⊿SpO2 )を評価。
40ヵ月間フォロー。
ROC曲線で、死亡率と関係するカットオフ値を算出し、Coxで危険率(HR)の算出を行った。

<結果>
死亡リスクが増加するIPAQでのカットオフ値は417METs/週(p=0.004、HR9.7)、⊿SpO2は10%以上(p=0.002、HR23.3)。

<考察>
本研究では、IPF患者において、PAとEDは著明に関係していることが分かった。
今回の結果から仮定すると、進行の予測や早期治療アプローチ(呼吸リハ、PAカウンセリング、酸素療法、肺移植)などIPFリスク層別化のために、PAとEDの評価が臨床上重要になってくる。
これらの結果から、たとえ100-105分/週の低いレベルの活動しかしていない患者でも死亡リスクが減少することと関連していた。



2019/09/23

がんで入院した患者の下肢静脈血栓症の頻度、予測因子

Frequency of venous thromboembolism events during acute inpatient rehabilitation in a comprehensive cancer centre.

J Rehabil Med (IF: 1.802) 2017 Nov 21;49(9):758-764

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28929167

<目的>
ガンセンターで入院リハビリを行ったがん患者における、静脈血栓塞栓症の発症頻度、予測因子を調べ、静脈血栓症とFIMスコア、在院日数の関係を検討すること。

<デザイン>
急性期入院リハビリを行った患者を後方視的に調査。

<方法>
ICD-9コードで深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓症、下大静脈フィルターとされたものを対象。

<結果>
静脈血栓症は5.2%(32/611)の患者で発症。23/611はリハを始める前から入院していたおり、9人は、リハビリ中であった。
入院時に下肢浮腫のある患者はその後に静脈血栓症が発症する危険が高かった (p = 0.0218)。
リハ中に静脈血栓症を発症した患者は、リハ入院時のFIMの移乗スコアが有意に低く、リハビリ入院日数、在院日数が長かった。

<考察>
移乗のFIMスコアが低く、下肢浮腫のあるがん患者は、下肢静脈血栓症のリスクが高かった。入院時の3つの所見は、静脈血栓症の積極的監視、評価が必要かもしれない。
静脈血栓症のある患者は、リハビリ期間が長いが、最終的にFIMスコアの変化(改善)は十分ではなかった。





2019/09/18

入院肺炎患者の機能低下、回復の予測

Determinants of short and long term functional recovery after hospitalization for community-acquired pneumonia in the elderly: role of inflammatory markers

BMC Geriatrics 2006, 6:12


<背景>
市中肺炎(CAP)で入院した高齢者は機能低下と関連している。
炎症マーカーと身体機能の状態の関係についてはあまり知られていない。
目的は、TNF-α、CRPとADLの関係を調査し、1年後の死亡率や再入院と関連するリスクファクターを同定すること。

<方法>
大学提携病院に入院した301人のCAP患者(平均年齢73.9歳)
全患者は、入院時にベースライン評価を実施。
社会背景、原因菌(微生物学)、認知機能、身体機能
血中TNF-αとCRPは同時に採取。
退院時に身体機能を再評価し、退院後3ヵ月まで毎月調査し、入院前と比べて身体的に回復したか低下したかを記録。
アウトカムは退院後1年間での再入院や死亡率を複合的に評価。

<結果>
患者の36%は退院時に機能低下が進んでいた
11%は3か月後も機能障害が残存していた。
血中TNF-αとCharlson Indexが、独立して退院時の身体機能低下と関連していた。
3ヵ月時点での機能回復していないことは、認知機能障害、入院前の併存症と関連していた。
Cox回帰分析において、3か月後の機能障害の残存認知機能障害Charlson Indexは、1年後の再入院や死亡を強く予測した。

<考察>
血中TNF-αレベルは、CAPで入院した患者の機能障害を予測した。
退院後3ヵ月時点で機能回復が遅れており、認知機能障害、既存の併存症のある高齢者は、再入院や死亡リスクが高い。
資源の少なさとともに、これらの結果に基づく将来のリスク層別化システムは、介入によって効果のある高齢患者を発見するためのよい指標となるかもしれない。

・ADLは6つの項目(入浴、整容、移動、歩行、トイレ、食事)について患者本人か近親者に入院2週間前の状態を聴取。スコアは1(自立)-3(全介助)点。
・2点上昇を機能低下、2点減少を機能改善と定義。
・認知機能は入院時にMMSEを聴取。

・入院日数は平均約7日程度

PSI:Pneumonia Severity Index(肺炎重症度)
重症ほど、退院時に機能低下(ADLで介助を要す)している患者が多い

2019/09/16

NSCLC術前運動療法は術後合併症を減少させる

Preoperative exercise training for patients with non-small cell lung cancer.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jun 7;6:CD012020.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28589547

<背景>
早期の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する外科的切除術は、治療の最善の機会であるが、術後合併症(肺炎、膿性痰、白血球>11000など)、気管支胸膜瘻孔、重度無気肺、人工呼吸期間の遷延のリスクがある。
現在、術前の運動療法が運動耐容能を向上させるように、術後肺合併症や肋間ドレナージ期間、入院期間などの術後アウトカムを改善させるかもしれないことについては明らかになっていない。

<目的>
主な目的は、NSCLCで予定手術を行う患者における術前運動療法が、術後アウトカムに影響するかを検討すること。
2つ目の目的は術前運動療法が入院期間、疲労感、息切れ、運動耐容能、肺機能、術後死亡率に影響するかを確かめること

<方法>
NSCLCで手術前に運動療法を行ったRCTを行った文献を抽出

<結果>
167人の患者を対象にしたRCTが対象(5文献、平均年齢54-72.5歳)
全体的に、研究バイアスは高く、全てのアウトカムのエビデンスの質は低かった。
4つの研究で蓄積したデータでは、術前運動療法が術後肺合併症を67%予防した。
運動療法を行った患者群では、運動しなかった群よりも肋間カテーテル期間が短かった。
術後入院期間は運動療法を行った方が短い。
2文献にて、術後運動耐容能(6MWT)、努力肺活量(FVC)は運動療法群が優れていた。

<考察>
術前運動療法は、肺合併症、ドレーン留置期間、術後在院日数を減少させ、運動耐容能、努力肺活量を改善させた。
このレビューは、研究間の不均等さがあること、バイアスリスク、サンプルサイズが少ない事を注意して解釈されるべきである。
大規模RCTの必要性が強調された。


・対象患者:アメリカ、中国、ブラジル、トルコ、イタリア
・運動期間:1日3回を1週間、週5回を4週間など様々
・運動種類:有酸素運動は対象の全文献にて実施。1文献でレジスタンストレーニング、2文献で吸気筋トレと教育、4文献で呼吸練習、1文献でストレッチを実施。


2019/09/04

SPPB評価方法

SPPB評価方法

https://www.nia.nih.gov/research/labs/leps/short-physical-performance-battery-sppb

1.バランス
A.立位保持
足をそろえて立位を10秒保持する
腕や膝を使って、バランスを保持するのはOK
足が離れたり、物をつかんだりしたら終了。

B.セミタンデム立位
踵の側面とつま先のくっつけて10秒保持。
Aと同様にバランスをとるために動くのはOK
足が離れたり、物をつかんだりしたら終了。

C.タンデム立位
踵とつま先を前後にしてくっつける。10秒保持できるか測定。
どちらの足を前にするかは、被験者のしやすい方で良い。
腕や膝を使って、バランスを保持するのはOK
足が離れたり、物をつかんだりしたら終了。

2.4m歩行試験
通常歩行速度(買い物に行くときに道を歩く速度)にて4m歩行を実施
併走可(Walk behind and to the side of the participant.)
必要であれば、杖など歩行補助具の使用は可能。
被験者の片脚が完全にラインを超えた時点でストップ。
2回測定し、早い方を採用
歩行ができなかった場合は、その理由を記載する(介助無しで歩けない、安全に歩けないやってみたが出来なかった、など)

3.5回起立
椅子から腕を使わずに起立できるかを確認
腕組みをして、足が床につくように椅子に座る
腕組みをしたまま起立を行う
腕を使わなければ立てない場合は、テストは終了。

できるだけ素早く、間に止まらないように起立-着座を5回繰り返す。

疲労や息切れなどで起立を繰り返せない場合、腕を使った場合、1分以上かかるった場合、検査者が安全でないと判断した場合は終了

5回目に完全に立位となった時点でストップ。

ーーー
椅子の高さに関してはここでは記載見当たらず。
他文献にて18-19inch(45-48cm)と記載あり。
また、日本人対象の報告では、40cmと記載されているものがいくつかあった。

参考までに。