2019/07/28

ILD患者の酸素供給システム:携帯型酸素濃縮器vs酸素ボンベ

Portable oxygen concentrators versus oxygen cylinder during walking in interstitial lung disease: A randomized crossover trial

Respirology (IF: 4.407) 2017 Nov;22(8):1598-1603.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28544460

<背景>
歩行時の酸素療法は間質性肺疾患(ILD)患者によく用いられる。軽量の携帯型酸素濃縮器は従来の酸素ボンベに取って代わるものである。しかし、ILD患者において、効果的であるかは評価されていない。
目的は、ILD患者に3種類の酸素供給システム(2つの携帯型濃縮器(portable oxygen concentrators (POCs))と1つの酸素ボンベ)を使って6MWTを行い、動作時低酸素を評価すること。

<方法>
20人のILD患者。室内吸入気(RA:room air)にて6MWTを行い、SpO2<90%となった患者が対象。
各患者は、RAにて6MWTを行い、後日無作為に選定した酸素供給システムを用いて6MWTを行う。(携帯型濃縮器:Inogen One G2 もしくはEverGo、酸素ボンベは5L/minで処方)

<結果>
それぞれのデバイスで6MWT中の低酸素に差はなかった。
歩行距離も同様にそれぞれのデバイスで差はなかった。

<考察>
ILDで動作時低酸素のある患者において、今回の携帯型酸素濃縮器では、酸素ボンベと同程度のパフォーマンスが示された。


・酸素ボンベからは5L/minの連続供給。
・POCはそれぞれpulse flow(おそらく呼吸同調の意味)で最大流量。
⇒POCのスペック表を見ると、maximum oxygen deliveryがそれぞれ1050と1260(mL/min)になっている。1Lくらいしか出せない機種かも。

・歩行時は患者自身でカートを引っ張って歩行

無作為化のプロトコル
・歩行距離は、RAにて400m前後。酸素供給を使用して最大40mほど延長している機種もある。


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酸素流量と供給方法(連続か同調か)が違うので、直接比較しにくいが。。

2019/07/22

COPD筋線維とSPPBの関係

Phenotypic characteristics associated with reduced short physical performance battery score in COPD.

Chest (IF: 7.652) 2014 May;145(5):1016-1024.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24337162

<背景>
SPPBは老人にてよく用いられているが、COPDで評価したものは無い。特に、下肢機能制限の評価として用いられるSPPBの値がCOPDの肺機能によって制限されるかについては知られていない。

<方法>
109人のCOPD患者が対象。SPPB、肺機能、6MWT、大腿四頭筋力、大腿横断面積、除脂肪量、身体活動量、健康状態、MRC息切れスコアを評価。
31人のCOPD患者に対しては、外側広筋を生検し、筋肉の構造特性とSPPBの関連を評価。
患者の特性をSPPBによって構造化した。

<結果>
多変量解析の結果、大腿四頭筋力と6MWTがSPPBスコアを予測する独立した因子であった。
さらに、年齢、息切れ、健康状態は、単変量解析にてSPPBの予測因子であり、1秒量は因子ではなかった。
SPPBスコアの低下は筋委縮と筋力低下、運動耐容能、日中身体活動量と同程度であった。
SPPB10点未満の軽度から主な障害のある患者は、筋のタイプⅡ線維(白筋線維)の高い割合を示した。

<考察>
SPPBは安定期COPD患者の機能制限、筋肉量低下、筋の構造的変化のタイプを発見する妥当で簡便な評価ツールかもしれない。


2019/07/09

肺炎患者に理学療法と神経筋電気刺激を組み合わせると身体機能が改善

Does Adding an Integrated Physical Therapy and Neuromuscular Electrical Stimulation Therapy to Standard Rehabilitation Improves Functional Outcome in Elderly Pneumonia in Patients? A Randomized Controlled Trial

Clin Rehabil 2019 Jun 27:269215519859930.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31244327

<目的>
肺炎で入院した高齢者に対して、集中的なリハビリと電気治療が、通常のリハビリと比較して、身体機能やパフォーマンスを向上させるかを検討すること。

<方法>
デザイン:RCT
場所:大学病院
対象:185人の肺炎で入院した高齢者。最終的に95人が無作為化された。
介入:無作為に標準リハと理学療法と電気治療を併せた集中リハに分けられた。
評価項目:患者背景、臨床データ。肺機能、入院日数、握力、自立度、併存症。
メインアウトカムはSPPB
セカンダリーアウトカムは息切れ、疲労感、咳の症状の程度

<結果>
介入群の平均年齢74.92歳、対照群の平均年齢72.53歳
SPPBの椅子起立テストと合計点数に有意差あり。
疲労感や咳の症状も介入群でより大きく改善を示した。

<考察>
理学療法と電気治療の組み合わせは高齢者肺炎患者の身体機能を向上させる。


・介入期間:入院2日目から退院まで毎日。2日目にパフォーマンステスト実施。
・リハ内容
対照群:薬物治療、酸素療法、呼吸練習などを実施
介入群:対照群の内容に加えて、理学療法を実施。
理学療法プロトコル
ウォームアップ10分、両下肢への神経筋電気刺激(50Hz)30分、クールダウン5分。
電気刺激と同時に、セラバンドを使ってレジスタンストレーニングも実施。
・SpO2<85%が1分以上続いたら酸素療法を併用して運動
・息切れborg>8で運動中止

・介入群SPPB合計の平均:ベースライン3.59、退院時5.91

2019/07/08

急性呼吸不全患者にICUでリハ介入しても在院日数は変わらない。

Standardized Rehabilitation and Hospital Length of Stay Among Patients With Acute Respiratory Failure: A Randomized Clinical Trial.

JAMA. 2016 Jun 28;315(24):2694-702

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27367766

<背景>
ICUでの急性呼吸不全患者に対する身体的リハビリテーションはアウトカムを改善させるかもしれない。
急性呼吸不全患者に対する通常ケアと標準化されたリハビリを比較した。

<対象>
単施設、無作為化試験。
急性呼吸不全でICUに入院し、人工呼吸が必要であった高齢者(平均年齢58歳)が対象。
無作為にリハ介入と通常ケアに分けられた。(n=150ずつ)

標準化したリハ介入は、日中から退院まで実施され、内容は他動的ROM-ex、理学療法、漸増レジスタンストレーニング。
通常ケアは、ケアチームから依頼されたときのみ、平日に理学療法介入。
リハグループでの各介入日数は、ROM-exは8.0日、理学療法5.0日、レジスタンストレーニング3.0日。(いずれも中央値)
通常ケアグループでの介入期間は、理学療法1.0日

評価は、ICU入室時と退室時、退院後2,4,6カ月後。
プライマリーアウトカムは在院日数。
セカンダリーアウトカムは、呼吸器装着日数、SPPBスコア、SF-36、機能的パフォーマンススコア(FPIスコア)、MMSE、握力、筋力。

<結果>
300人が無作為化、介入。
入院日数はリハ介入グループと通常ケアグループともに中央値10日。
人工呼吸器の日数、ICUケアが必要な日数に差は無かった。
6か月後の握力、筋力、SF-36身体的スコアと精神スコア、MMSEにグループ間で違いは無かった。
リハ介入グループにおいて、6か月後のSPPBスコア、SF-36身体的スコア、FPIスコアは通常ケアグループよりも大きく改善していた。

<考察>
急性呼吸不全で入院した患者において、標準化されたリハ介入は通常ケアと比べて在院日数を減少させなかった。

2019/07/06

運動時低酸素のある患者に対する酸素療法の検討

Supplemental oxygen during exercise training in COPD: full of hot air?

Eur Respir J 2019 May 30;53(5). pii: 1900837.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31147425

慢性呼吸器疾患患者で重度の低酸素血症がある患者に対して、生存率の観点から長期間酸素療法が広く用いられている。
これらの根拠となった研究からは、低酸素血症のある患者に対して酸素療法を行うことは有益であり、酸素を処方することにつながっている。
しかし、RCTでこれらを支持する研究は行われていない。


運動誘発性低酸素(EID)のある患者に対して、酸素を投与すると、呼吸数が減少し、動的肺過膨張が減少するとされている。また、酸素運搬能の改善、運動関連の代謝性アシドーシスの減少も得られる。

60年以上前に、運動時低酸素血症がある患者に酸素を投与すると、運動時間が延長したと報告されている。このことから、酸素投与によってより強度の高い運動を行うことができると論理的な仮説が導かれた。
しかし、この仮説を検証すると、決定的な結論には至っていない。


Alisonらは二重盲検無作為化試験にて運動時低酸素血症がある患者(6MWTにてSpO2≦90%)へ運動時に酸素療法を行うことが圧縮空気と比較して、運動耐容能やQOLなどを向上させるか検討した。

週3回を8週間行うプログラム。運動強度は30分の有酸素運動(トレッドミル20分、エルゴ10分)。強度は、息切れのmBorg3-4を目標に調整し、漸増した。

結果は、両群(酸素vs圧縮空気)とも運動耐容能やQOLが改善し、酸素付加による効果は認めなかった。

トレーニングの内容を見ると、酸素投与群において,SpO2や息切れの自覚症状が保たれていたにも関わらず、1セッション当たりの負荷を増やせていなかった。
筆者は、より大きな生理学的な刺激を加えると、急性期の酸素導入による小さな生理学的な効果を超えると示唆している。
⇒今回の報告の内容を見ると、運動量が十分でなかった可能性がある。運動量を高く保てれば、効果が得られるが、運動制限の理由によって結果は異なると思われる。


現在の報告から、EIDのある患者の運動療法時の酸素使用による簡便なアルゴリズムを示す
運動時低酸素(SpO2:80-90%)があり、酸素付加によるフィールドテストにて90%以上を保てた場合⇒歩行距離がMCIDを超えて改善していたら、酸素付加での運動を考慮。
距離が変わらなければ、酸素付加せず運動(現状維持が目標?)。
SpO2<80%であれば酸素付加にて運動療法を行う。


依然として、酸素療法の役割や、急性効果における効果は不確かなままである。


今後、EIDのある患者が、酸素療法にて運動療法がより効果的であるかについては検討するべきである。
低酸素が運動制限となっていない多くの患者(特に、医療環境の無い地域在住患者に呼吸リハを行う際)にとって、今回の研究は重要な指摘かもしれない。
酸素療法のみを行い症状が軽減していないCOPD患者にとって、重要な影響を及ぼす結果となる可能性を秘めている。

2019/07/04

身体機能低下は認知症発症リスクと関連するかも

Performance-Based Physical Function and Future Dementia in Older People

Arch Intern Med. 2006;166(10):1115-1120.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16717174

<背景>
身体機能と認知症の進行の関係についてはよく知られていない。身体機能が認知症の発症やアルツハイマー型認知症(AD)と関係するかを調査した。

<方法>
認知症のない65歳以上の高齢者2288人を調査。2年間追跡調査し、認知所やADの発症をメインアウトカムとした。

<結果>
319人の患者が認知症となった。ベースラインのテストで身体機能テストの点数が低い(10点以下)患者で認知症を発症したのは1000人中53.1人。
身体機能スコアが高い患者(10点以上)は1000人中17.4人。
身体機能スコアが1点低くなると認知症のリスクは1.08倍高まる。

<結論>
身体機能が低いと認知症やADの発症リスクが高まった。身体機能が低いことは、認知症やADの発症に先立って起こっており、身体機能を高く保つことは認知症の発症を遅らせるかもしれない。

・身体機能テスト
10フィート歩行時間、椅子からの5回起立時間、立位バランス、握力。
それぞれの結果を0-4点でスコア化。16点満点。