2018/12/20

重症状態(clitically ill)で人工呼吸管理中の患者に対する、早期からのリハ介入の効果

Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients: a randomised controlled trial.

Lancet. 2009 May 30;373(9678):1874-82.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19446324

<背景>
ICU-AWや神経精神疾患を含めた重症疾患は長期間合併している。
集中治療で機械換気が行われている患者に対して、日中の鎮静解除と併せて理学療法と作業療法を行い、機能的アウトカムの効果を評価した。

<方法>
鎮静されている成人で少なくとも72時間人工呼吸を行っている患者で、元々機能的に自立している患者を選定し、無作為化比較対照試験を2つの大学病院にて実施。
日中に鎮静が解除されている間に、早期運動、モビライゼーションを実施する群(介入群n=49)と日中鎮静解除とケアチームから介入オーダーがあった場合に介入する群(コントロール群、n=55)に無作為に分けられた。
プライマリーエンドポイントは、病院退院時に、機能的に自立に回復した患者の数。(機能的自立とは、6つのADL動作が可能で、独歩可能であること)
評価するセラピストは、治療の振り分けは分からないようにした。
セカンダリーエンドポイントは、入院後28日までの鎮静期間と呼吸器離脱日数。解析は、intention to treatで実施。

<結果>
104人の患者が解析に含まれた。退院時に自立まで回復したのは、介入群29人(59%)、コントロール群19人(35%)。 (p=0.02; odds ratio 2.7 [95% CI 1.2-6.1]).
介入群は、鎮静期間が短く(2日 vs 4日)、呼吸器離脱日数が長かった(23.5日 vs 21.1日)。
498の治療セッションのうち、1件の重篤なイベント(SpO2<80%)が発生した。
患者の状態不安定のため、治療を中止したのは、全てのセッションのうち19 件(4%)。
最も多かったのは、呼吸器との不同調。

<考察>
重篤な状態での、早期からの鎮静の中断と理学療法、作業療法から構成される全身的なリハビリテーションは安全で容認されるものであった。
結果として、標準的ケアと比較して、退院時の機能的アウトカムの改善や、鎮静期間の短縮、人工呼吸器からの離脱日数の増加が得られた。

2018/12/16

気管支拡張症の英国胸部学会ガイドライン:リハのみ抜粋(Thorax 2019)

British Thoracic Society Guideline for bronchiectasis in adults

https://thorax.bmj.com/content/74/Suppl_1/1?etoc=

 Thorax 2019;74(Suppl 1):1–69.

【安定期の介入】
<どの患者の気道クリアランスを指導すべきか>
⇒個別にクリアランス法を指導する
⇒最初の評価にて、患者の状態について教育すべきであり、(吸入/経口治療、運動について)補助的に適切なアドバイスを行うことが、患者の気道クリアランステクニックの効果を高めるかもしれない

<どの排痰法を指導すべきか>
⇒しばしば、ACBTや呼気陽圧振動が用いられる
⇒体位ドレナージ(ポジショニング)は、禁忌でなければ気道クリアランスの効果を高めるかもしれない
⇒強制呼気(ハフィング)をすべての気道クリアランス法に取り入れるべき
⇒胃食道逆流の症状がある場合は、座位での気道クリアランスを実施する
⇒気道クリアランスを促進するために、通常の身体活動(+ハフィング)を奨励されるべき。
⇒効果が無い場合や患者が許容できない場合は、胸壁振動器具や肺内パーカッションベンチレーターの使用を検討

【どのくらいの時間排痰を行うべきか】
⇒排痰の頻度や期間は、患者個別に必要に応じて決めるべき
⇒最低10分、最高30分のクリアランス介入を進言する。これらの介入の後、患者は2回のハフィングまたは咳を患者が疲労感を感じ始めるまで行う
⇒1日1、2回の介入を推奨するエビデンスは無い


【増悪時の排痰介入】
⇒徒手的な排痰手技は、増悪で疲労している患者において、気道クリアランスを向上させるかもしれない
⇒呼気陽圧呼吸や非侵襲的換気は、呼吸仕事量の増加している患者に考慮し、より長い治療セッションや体位ドレナージに耐えられるかもしれない


【呼吸リハビリテーション】
・息切れ(mMRC≧1)によって機能制限のある患者は個別の呼吸リハを提案する
・トレーニング効果を高める方法として吸気筋トレーニング考慮する
⇒気管支拡張症の教育は運動プログラムにおいて重要
⇒運動耐用能の評価として6MWT、ISWTを呼吸リハ前後に実施する。
⇒呼吸リハは、運動と教育セッションを適切な質を持った健康ケア提供者によって提供されるべき






2018/12/11

身体活動のガイドライン(JAMA2018)

The Physical Activity Guidelines for Americans

JAMA. 2018;320(19):2020-2028.

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2712935

【重要性】
成人、青年アメリカ人の約80%は、活動量が不十分である。身体活動は、正常発達や気分的、機能的、睡眠の質を良くし、様々な慢性疾患のリスクを軽減する。

【目的】
アメリカ人の身体活動ガイドライン第2版を要約すること

【エビデンス形成の過程】
ガイドライン委員会によって、身体活動や健康に関する科学的なシステマティックレビューが実施された。38の疑問と104の二次的疑問が取り組まれ、エビデンスグレードの強いもしくは中等度のものを主なガイドラインの基礎とした。

【推奨】
ガイドラインは、様々な人々の健康アウトカムを向上させるための身体活動の量や種類についての情報を提供する。

・就学前の子供(3-5歳):成長や発達を高めるために、日中を通して活動的であるべき
・子供から青年(6-17歳):中等度から高強度の身体活動を1日60分以上行うべき
・成人:少なくとも中等度強度の活動を週150分から300分。もしくは、高強度の有酸素運動を週75分から150分。もしくは、中等度から高強度の有酸素運動の組み合わせを同程度行う。筋力トレーニングも週に2日以上行うべき。
・高齢者:複数の種類(バランス、有酸素運動、筋トレなど)の身体活動を行うべき。
・妊婦や産後:少なくとも週150分以上の中等度強度の有酸素運動を行うべき。
・慢性疾患や機能制限のある成人:可能な限り、成人のガイドラインを目安に有酸素運動を筋トレを実施すべき。

すべての人に活動的で座っている時間を少なくすることが有益であることが強調されている。

身体活動による利益は少なくとも中等度から高強度の身体活動によって最ももたらされる。

有酸素運動と筋トレのどちらの活動も有効。

【結論】
アメリカ人の身体活動ガイドライン第2版は、健康に有益な身体活動の量や種類に関する情報を提供する。
このガイドラインは、健康活動従事者や担当者にとって、健康的な身体活動を促進し、それぞれのプログラム内容や練習へのサポートを簡単にするものである。


2018/12/08

成人気管支拡張症の管理ガイドライン【ERS2017】

European Respiratory Society guidelines for the management of adult bronchiectasis

Eur Respir J 2017; 50: 1700629

http://erj.ersjournals.com/content/50/3/1700629.short

<背景>
成人の気管支拡張症は、慢性的な病態であり、多くの患者でQOL低下や頻回の増悪と関連している。これまで国際的なガイドラインは無かった。

成人気管支拡張症の管理のための欧州呼吸器学会(ERS)ガイドラインは、適切な治療調査と治療戦略を文献のシステマティックレビューによって提示する。

呼吸器科医、微生物学、理学療法士、胸部外科、プライマリーケアによる学際的グループによって、気管支拡張症の管理に関連する方法論と最も妥当なクリニカルクエスチョンを検討した。

9つのクリニカルクエスチョンが生成され、これらの疑問に答えられるシステマティックレビューや無作為比較試験、観察研究が公表されているなかから識別された。

エビデンスの質や推奨レベルはGRADEアプローチを採用した。

結果として、増悪の治療、病原体の根絶、長期間抗菌薬治療、抗炎症、粘液活性薬、気管支拡張剤、外科治療、呼吸理学療法の基礎となるガイドラインを示した。

これらの推奨は、ヨーロッパの気管支拡張症患者のケアの質の基準となり、アウトカムの改善に利用することができる。

疾患の悪循環の概念と治療(筆者改変)


呼吸理学療法の介入フローチャート(筆者改変)

Q1.通常の理学療法(気道クリアランス、呼吸リハ)は、コントロール群(介入なし)よりも効果があるか?

A1.慢性的に排痰困難がある患者には、1日1-2回、気道クリアランス方法を教えるべきである(推奨度:弱、エビデンス;低)

A2.運動耐容能の低下のある患者には、呼吸リハに参加し、通常の運動療法を提供すべきである。
すべての介入は、患者の症状や耐久性、疾患の状態を考慮すべきである。
(推奨度:強、エビデンス;高)

2018/12/03

30秒椅子立ちテスト(STST)は、リハの効果を反映する

The one repetition maximum test and the sit-to-stand test in the assessment of a specific pulmonary rehabilitation program on peripheral muscle strength in COPD patients

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015; 10: 2423–2430.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4648595/

<背景>
COPD患者は、骨格筋力が減少しており、活動制限を招いているかもしれない。包括的呼吸リハは、下肢の筋力トレーニングを含むべきである。さらに、骨格筋力を簡単に評価できるシンプルなツールが求められている。

<目的>
COPD患者の骨格筋力を起立テスト(sit-to-stand test(STST))と、1RMとを比較し、研究的な場面でない場合の筋力評価のゴールドスタンダードを検討すること。
呼吸リハプログラムにおけるSTSTの反応性を評価すること。

<方法>
60人の中等症から重症の入院COPD患者を無作為に、特異的筋力トレーニング群と通常の呼吸リハ群に分けた。
評価項目は、30秒STST、1分間STST、1RM、6MWT。
ブランドーアルトマンプロット(Bland–Altman plots)で、1RMとSTSTの関係を評価。

<結果>
両群にベースラインで差は無し。
全ての患者で、1RMが、30秒STST(r=0.48, P<0.001) と1分間STST(r=0.36, P=0.005)と著明に相関。
30秒STSTの方が、疲労感と時間がかからない面において、良好な結果を示した。
特異的筋力トレーニング群は、30秒STSTと1分間STST、1RM、6MWDが著明に改善。
通常の呼吸リハ群は、30秒STSTと6MWTにて著明な改善を示した。

<考察>
安定期の中等症から重症のCOPD患者において、STSTは、妥当で信頼性のある下肢筋力評価のツールである。
また、通常の呼吸リハプログラムの効果も反映する。

・介入プロトコル
・1日目:既往歴聴取、身体所見、肺機能検査、血ガスなど
・2日目:6MWT、1RM(評価の間に2時間間隔を開けて)
・3日目:2種類のSTST(評価の間に2時間間隔を開けて)

。1RM:レッグエクステンションを使用。
・STST:椅子の高さは47cm。足が床につくように腰掛ける。30秒または1分間出来るだけ多くの回数起立運動を行う。
・疲労感:1RMとSTST測定後に、疲労感をVAS(0-100)で評価。

・呼吸リハプログラム
3週間15セッションからなるプログラム。少なくとも12-15回の監視下でのセッションを実施。
下肢筋持久力トレーニングとして30-40分運動(トレッドミルorエルゴ)。運動強度は6MWTの最大心拍数の60-70%。
息切れの自覚症状はborg3-4を目標。
上肢筋トレとして、上肢エルゴや軽いダンベル運動。
必要であれば、排痰法、口すぼめ呼吸、強制呼気、吸気筋力トレーニングを追加。
教育セッションは、最低1回ずつ個別とグループでの活動に参加。
内容は、自己管理、排痰、治療アドヒアランス、栄養サポート。

・介入グループ
上記呼吸リハプログラムに加えて、7種類の運動を2セット、各12-20回の筋トレを実施。
負荷は、1RMの60-70%から開始し、徐々に増大していった。


1RMとSTSTのベースラインでの関係
A:r=0.48, P<0.001
B:r=0.36, P=0.005

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30秒の椅子立ちテストで十分評価できる