2019/12/29

SPPBと死亡率の関係-meta analysis-10点以下は死亡率上昇

Short Physical Performance Battery and all-cause mortality: systematic review and meta-analysis.

BMC Med (IF: 8.285) 2016 Dec 22;14(1):215.


<背景>
SPPBは、下肢のパフォーマンス状態を評価するためによく使用されツールである。
死亡率を予測するという報告が散見されるが、患者の状態が異なるため、結果が混在している。
この研究の目的は、SPPBスコアと死亡率についての関係をメタ解析で検討すること。

<方法>
対象文献は、MEDLINE, the Cochrane Library, Google Scholar, and BioMed Centralで2015年9月から2016年1月まで収集。
採用基準は、対象者が50人以上で、SPPBスコアで患者を層別化している、死亡率に関するデータが示されている、英語であること。
24文献がエビデンスとなり得る対象に選ばれた。
対象データを文献から抽出。年齢、性別、BMIを補正し、オッズ比や危険率でSPPBカテゴリーによる死亡率を算出。

<結果>
標準化されたデータは、17文献(n = 16,534, mean age 76 ± 3 years)。
SPPBスコア10-12点と比較して、0-3点(OR 3.25)、4-6点(OR 2.14)、7-9点 (OR 1.50)は、それぞれ死亡率の上昇と関係していた。
SPPBスコアが低いことは、フォロー期間、対象者、地域、年齢と独立して、全原因の死亡率と強く関係していた。
ランダム効果モデルのメタ回帰では、若年で、糖尿病の男性では、SPPB7-9点が最も死亡率が高かった。

<考察>
SPPBスコアが10点以下では、全原因の死亡率が上昇する。臨床でのSPPBの実施は、死亡率を予測するための有効なツールであるかもしれない。
さらに、SPPBは、研究において、死亡率のエンドポイントの代わりとしてなり得るかもしれず、特異的な治療やリハビリプログラムの効果や改善の度合いについて検討する必要がある。


2019/12/23

COPD身体活動レベルと予後 ERJ2014

Changes in physical activity and all-cause mortality in COPD.

Eur Respir J (IF: 11.807) 2014 Nov;44(5):1199-209.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25063247

<背景>
COPD患者の身体活動量の変化が死亡率に影響するかはあまり知られていない。
したがって、目的は、COPDの有無で身体活動量の変化を検討し、死亡リスクに対する身体活動の影響を検討すること。

<方法>
Copenhagen City Heart Studyに参加しており、2回評価を行えた患者を対象。
それぞれの評価は、質問表と臨床検査。
1270人のCOPD患者(%FEV1:67%)と8734人の非COPD患者(%FEV1:91%)が対象。

<結果>
ベースラインの身体活動が中等度もしくは高強度のCOPD患者で、フォローアップにて低身体活動になっていた患者は、死亡の危険率が最も高かった。(1.73 and 2.35)
ベースラインで低い身体活動であったCOPD患者は、フォローアップにて身体活動が変わらないもしくは増加しても生存率とは関係なかった。
加えて、低身体活動の非COPD患者は最も高い死亡の危険率であり、ベースラインの身体活動は関係なかった。
フォローアップ時に、低身体活動も行えていないと、COPDでも非COPDでも死亡リスクの増加と関係していた。

<考察>
今回のデータは、COPDの早期から身体活動を評価し、励行することの重要性を示唆した。
これは、できる限り身体活動レベルを高く保つことで、より良い予後と関連しているためである。


Copenhagen City Heart Study (CCHS)
20歳以上の対象者を無作為に対象として抽出
1976年から1978年にCCHSの最初の評価を実施
再評価を1981-1983年、3回目を1991-1994年、4回目を2001-2003年に評価。
新たな20-49歳の対象者を加えて評価。

・身体活動は質問表で評価
・身体活動レベルは低度、中等度、高度に分けて判定


a)-c)COPD患者
d-f)非COPD患者
a)ベースラインで低強度の身体活動
b)e)ベースラインで中道度の身体活動
c)f)ベースラインで高強度の身体活動

肺がん術後の理学療法は入院中の身体活動を向上させる。

In-hospital physiotherapy improves physical activity level after lung cancer surgery: a randomized controlled trial.

Physiotherapy (IF: 2.534) 2019 Dec;105(4):434-441.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30871894

<目的>
肺がんの手術を行った患者は、理学療法がルーチンに処方される。ルーチンに使用されているにも関わらず、術後の身体的な回復の効果に関して示されていない。
目的は、術後の理学療法が、病院での身体活動レベルと運動耐容能を改善させるかを検討すること。

<方法>
単盲検無作為化比較試験
大学病院胸部外科にて、肺がん選択的胸部手術を行った患者94名において、在院日数を評価
介入は、日常的な理学療法の実施。モビライゼーション、歩行、肩の運動、呼吸練習。
対称グループは、理学療法を行わない。
アウトカムは、病院での身体活動を加速度計(Actigraph GT3X+)を用いて測定、6MWT、肺機能、息切れスコア

<結果>
介入群の方が、術後最初の3日間において、より活動的で、1時間あたりの歩数が多かった。
6MWTと肺機能(FEV1.0)は著明な違いは無かった。

<考察>
病院で理学療法を行った患者は、術後初日の身体活動レベルが高かった。しかし、6MWTや肺機能の値では違いが無かった。
術後早期の身体活動レベルの向上が臨床的に重要であり、さらなる検討が求められる。


2019/12/21

最重症COPDの運動療法の効果 -A Systematic Review and Meta-Analysis-

Aerobic Exercise Training in Very Severe Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.

Am J Phys Med Rehabil. 2017 Aug;96(8):541-548.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28099192

<目的>
最重症COPD患者に対する運動療法の効果を検証すること。

<方法>
データベース(MEDLINE, EMBASE, Cochrane Central Register of Controlled Trials, and Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature databases)で検索
検索ワードは、COPD, Chronic Obstructive Pulmonary Disease, Exercise, and Pulmonary Rehabilitation.
採用基準は、対象患者の%FEV1.0が35%未満。
入院、外来、自宅、地域でのトレーニングプログラムを最低4週間実施したRCT(通常ケアとの比較)。
アウトカムは6MWT、健康関連QOL(SGRQ)

<結果>
580件の論文のうち、10本が対象となった。
プログラム期間は4週から52週
週1-5回のセッション、1回15-40分。
介入グループは、6MWTで改善していた。標準化平均差(standardized mean difference)は、3.86(95% CI, 2.04-5.67)、SGRQは-1.23 (95% CI, -2.14 to -0.31)。

<考察>
運動療法は、最重症COPD患者の運動耐容能と健康関連QOLを向上させる。
しかし、いくつかの研究で、重症の影響があった患者が含まれており、トレーニングプログラムのばらつきが多くあった。より大きなRCTが必要である。

・運動内容
少なくとも1種類の上肢or下肢の持久力トレーニングを行っていること。
期間は最低4週間

通常ケアの内容は、運動療法や身体活動への追加介入(教育など)を行わず、通常の薬剤治療のみを行っていると定義。
一般的なの身体活動を行うことは通常ケアと考える。

・運動の種類を比較した研究や、陽圧療法との併用などを行っている論文は対象外

【結果】
・対象患者:外来や自宅での介入が4件ずつ、外来と自宅の両方で行ったのが2件

・頻度:週1-2回

・運動内容:サイクリング、トレッドミル、フリー歩行。1件だけ上肢持久力トレを実施
8件で、上肢もしくは下肢の筋トレを実施。7件で呼吸練習(口すぼめ呼吸etc)、1件でリラクセーション、ストレッチを実施。
7件で教育セッションがあり、1件で吸気筋トレも実施。

・運動強度:漸増負荷試験での最大負荷の70-90%の高負荷で行ったのが3件。2分ごとのインターバルトレーニング(最大負荷の42%と85%を交互に)が1件、低強度(サイクリングで最大30W)1件、中等度負荷(50W)から開始し症状に応じて上げていくものが1件、強度を設定しないのが2件、その他2件は強度に関して記載無し。


2019/12/19

術前ピークフローが肺葉切除術後の肺合併症(PPCs)を予測

Can Preoperative Peak Expiratory Flow Predict Postoperative Pulmonary Complications in Lung Cancer Patients Undergoing Lobectomy?

Zhongguo Fei Ai Za Zhi. 2017 Sep 20;20(9):603-609.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28935013

<背景>
術後肺合併症(PPCs)、特に術後肺炎(postoperative pneumonia (POP))は、肺がん術後患者の早期回復に直接影響する。最大呼気流速(Peak expiratory flow (PEF))は、気道開通性や効果的な咳嗽に影響する。さらに、咳嗽の機能障害は、気道分泌物の蓄積を導くかもしれず、PPCsのリスクを増大させる可能性がある。
この研究の目的は、術前PEFがPPCsに影響するかを検討した。

<方法>
後方視研究。2014年から2015年に西中国の四川省大学病院で肺葉切除術を行った433人の肺がん患者が対象。
術前PEFとPPCsの関係を患者背景と臨床データを基に分析。

<結果>
術前PEF値は、PPCsのあったグループで著明に低下していた280.93±88.99 L/min vs 358.38±93.69 L/min
ロジスティック回帰モデルにおいて、PEFと手術時間が、PPCsの独立した予測因子であった。
ROC曲線で、PPCsを予測するカットオフ値は320L/min (AUC=0.706, 95%CI: 0.661-0.749)であった。
PEF<320L/minのグループでは、PEF>320L/minよりもPPCSの発生割合が多かった(26.6%vs9.4%)。

<考察>
術前PEFとPPCsは相関しており、PEFはPPCsの予測として有用かもしれない。

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