2020/02/12

胸腔鏡下肺切除術後の理学療法が必要な患者の特性

Video-assisted thoracoscopic lobectomy: which patients require postoperative physiotherapy?

Physiotherapy (IF: 2.534) 2019 Jan 11.

https://www.physiotherapyjournal.com/article/S0031-9406(19)30006-9/fulltext

<背景>
胸部術後の理学療法は、肺容量減少の抑制、分泌物クリアランスの予防、活動性の改善のために推奨されている。しかし、VATSで最小限の侵襲の患者に対して、理学療法を行うことが求められているとは言えない。
目的は、VATS肺葉切除を行い、リハを行った患者で、純粋な問題の発生頻度を調査。理学療法で効果のあった患者のベースラインの患者因子を評価。

<方法>
ガンなどにて肺葉切除を行った患者を前向きに収取し、研究。
標準的な肺合併症(PPCs)予防のために、看護師が術後1日目(POD1)に離床を実施。
理学療法評価は、POD1に全患者に実施。リハ介入の可能性や治療について指示した。
アウトカムは、肺合併症の発生、入院もしくは行動治療ユニットの在室日数。

<結果>
285人中、209人(73%)が、活動量減少予防のために理学療法を実施。23人(8%)は排排痰について、65人(23%)は、肺容量切除の特異的な治療を実施。76人(27%)は、入院期間が著明に短く、合併症なく改善していることを反映した。
COPD、BMI、術前活動量、年齢は、独立して理学療法介入と関係していた。

<考察>
VATS肺葉切除で多くの患者が理学療法介入が必要であることが示された。
筆者は、この手術を受ける患者すべてに理学療法評価をルーチンで実施することを推奨さうる。
COPD、BMI、術前身体活動、年齢は、もっとも術後理学療法の効果を享受すべき患者を早期に発見するために必要であるが、これらの因子は理学療法が必要であることを予測できない。

・患者は、手術当日に入院し、手術を受ける。術後は、集中治療室にて管理。疼痛コントロールは、硬膜外麻酔、脊柱もしくは全身オピオイド投与。
術後1日目の標準的ケアは、看護師によるベッド端座位から患者ができる限り、安全にできるところから早期モビライゼーションを実施。
また、術後1日目に、胸部外科専門の理学療法士は、無気肺、排痰、運動耐容能を評価。
理学療法士は、必要に応じて排痰などから開始。標準ケアよりも多く活動し、身体活動レベルを低下させないように介入。


2020/02/01

早期離床は死亡率、QOLに有効か?

Early versus delayed mobilization for in-hospital mortality and health-related quality of life among critically ill patients: a systematic review and meta-analysis

J Intensive Care. 2019 Dec 9;7:57.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31867111

<背景>
重症患者に対しての早期離床がが有効であるか、無作為化試験のシステマティックレビューとメタアナリシスで検討した。

<方法>
CENTRAL, MEDLINE、医中誌を使用して、ICU入室1週間以内の早期離床群と、通常ケアよりも早いが介入群よりも遅く介入開始した群で無作為化比較試験を行ったものを調査。
2人のレビュアーが独立してデータを抽出し質を評価。プライマリーアウトカムは入院中の死亡率、ICU入室日数、入院日数、健康関連QOL

<結果>
1085件がスクリーニングされ、11件(1322人)がメタアナリシスに参加。
入院中の死亡リスクに関する相対的リスク(relative risk)は、早期離床群と比較して通常ケアで1.12倍
ICU日数は-1.54倍、入院日数は-2.86倍
退院後6ヵ月での違いは、(SF-36、EQ-5Dで評価したQOL)身体機能で4.65倍、VASで0.29倍

<考察>
早期離床と通常離床に関して、入院中の死亡率や健康関連QOLに違いは認めなかった。
重症患者における入院中の死亡率や健康関連QOLに関しての早期離床の影響は、より大きく詳細な対象群での検討が必要である

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早期離床の方が若干有効な結果が多いか。。。

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退院後のQOLは有意差なし

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四肢筋力(MRC)は改善するが、身体機能や握力は変わりない
有害事象は特に大きな差なし

2020/01/30

菌血症と敗血症

【菌血症:bacteremia】
本来無菌状態の血液中に細菌が存在する状態のこと
一過性で続発症が無いこともあれば、転移もしくは全身性に影響することもある
・原因
尿道カテーテル、褥瘡や膿瘍の外科的治療、静脈カテーテルなど

・症状
頻呼吸、悪寒、発熱、低血圧、腹痛、下痢など「敗血性ショック」を示唆する。
敗血症性ショックは菌血症患者の25-40%に発現。
無症状で経過することも。

・検査
血液培養で菌を同定


【敗血症:sepsis】
定義(sepsis-3):感染に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害
→国際的な定義は3度の変更がされてきた。
日本版ガイドラインの定義は、”感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態
診断基準:SOFA(sequential(sepsis-related )organ failure assessment) scoreが2点以上急上昇したもの


ICU外で感染が疑われる場合は、quick SOFAで評価。2項目以上当てはまれば予後不良の可能性

【敗血症性ショック】
定義:「急性循環不全により細胞障害および代謝異常が重度となり,死亡率を増加させる可能性のある状態
診断は、輸血負荷しても、平均血圧65mmHgを維持するために循環作動薬が必要で、血清乳酸菌>2mmol/L





【出典】
MSDマニュアル:https://www.msdmanuals.com
敗血症.com:http://xn--ucvv97al2n.com/index.html
敗血症ガイドライン2016

2020/01/27

入院中1日20分の運動で、ADL維持できた

Effect of a Simple Exercise Program on Hospitalization-Associated Disability in Older Patients: A Randomized Controlled Trial

JAMDA(2019) 1-7

https://www.jamda.com/article/S1525-8610(19)30836-9/addons

<目的>
入院関連活動障害(Hospitalization-associated disability:HAD,退院時に基本的ADLの1つ以上で介助が必要な状態)は、高齢患者で良く見られる状態である。
急性に入院した超高齢者において、単純な入院運動プログラムが、HADの発生を減少させることが出来るかを評価した。

<方法>
無作為化ランダム試験。ベースライン(入院2週間前)、入院時、退院時、退院3か月後に評価。
計268人の患者、平均年齢88歳が対象。無作為に対照群125人と介入(運動)群143人に分けられた。
両群とも通常ケアを受けた。介入群は、1日20分以内の簡単な運動(歩行、椅子起立)を実施。
ADL機能はKatz indexで評価(primary outcome)。退院時と退院3か月後のHAD、SPPB、活動耐久性、転倒数、再入院、3か月間の死亡率を評価(secondary outcome)。

<結果>
入院期間の中央値7日。介入群は、ベースラインと入院時のHADの発生リスクが低かった。
入院時と比較して、退院時のADL機能は改善傾向にあった。
その他のエンドポイントでは、グループ間に有意差はなかった。

<結論>
入院した超高齢患者に対する簡単な運動介入は、HADの発生リスクを減少させる。


・主病名
呼吸器、循環器、腎臓/泌尿器、中枢神経、消化器
入院2週間前に歩行できていない、ADLで介助が必要な患者は除外。(ベースラインはインタビューで評価)

・運動内容
椅子起立:必要に応じてひじ掛けなどを使用可能。頻度は、1日1-3セッション、平日のみ。セッションの数は患者の状態に応じて徐々に増加させる。セッション間には30分の休憩を設ける。運動量は、1-3セット。1セット10回繰り返し。セット間は2分の休憩を設ける。
歩行:頻度は起立と同じで1日1-3セッション。患者の状態に応じて3-10分の歩行、必要に応じて休憩可能。

・結果
ADL機能(Katz  index)は、入院時vs退院時、入院時vs退院後3ヶ月後で介入群の方が有意に改善
ベースラインvs退院後3ヶ月は、対照群、介入群ともADL低下(退院後3ヶ月経過後も
入院前のADLまでは回復していない)

・考察
入院中の運動介入は安全で有効である。
入院中の歩行は入院前の活動に依存する。
急性期入院中に、歩行、バランス、レジスタンストレーニングを中央値5日行うことはh
活動、認知機能へ有効である。
歩行と起立運動は、主にフレイルの高齢患者に有効かもしれない。

2020/01/25

線維性間質性肺炎で呼吸リハの反応性

Cardiorespiratory adaptation during 6-Minute Walk Test in fibrotic idiopathic interstitial pneumonia patients who did or did not respond to pulmonary rehabilitation.

Eur J Phys Rehabil Med. 2019 Feb;55(1):103-112.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29904044

<背景>
線維性特発性間質性肺炎(f-IIP)患者において、呼吸リハは6MWTを改善させる。
しかし、呼吸リハに反応しない患者が多く存在する。
目的は、6MWT中の心肺反応の呼吸リハプログラムの影響と、呼吸リハで改善しなかった患者の特徴を調査すること。

<方法>
観察研究。フランスの病院でリクルートされ、8週間の自宅での呼吸リハを実施。
対象は、f-IIP19人、IPF12人、線維性非特異的間質性肺炎7人。
対象者は、呼吸リハの前後で6MWT、肺機能検査を実施。
ガス交換、心拍数、SpO2は6MWT中に評価。
QOL(SF-36)、息切れ(BDI/TDI)、不安/抑うつ(HADS)、を質問表で評価。

<結果>
呼吸リハ後の6MWTで30mの改善があったものを反応群(n=9)、改善が無かったものを非非反応群(N=10)として検証。酸素摂取量、呼吸数、歩行距離は、反応群でのみ優位に改善。SF-36、BDI/TDI、HADSスコアは、反応群と非反応群で違いは無かった。
非反応群は、有意にIPF患者が多く、6MWT中に著名な酸素化低下を認めた。

<考察>
呼吸リハ後に6MWTの改善が乏しかったのは、IPF患者、ガス交換能が改善していない、動脈血酸素飽和度が大きいことと関係していた。

f-IIP患者の多く、特にIPF患者であることや運動中の著明な低酸素を認める場合は、呼吸リハで反応に乏しいことと関係していた。また、
臨床において、呼吸リハ後に患者が回復していない場合は、運動の方法の検討やこれらの患者の運動様式の変化をすべきである。