2020/01/19

術前6MWD≦450mは術後肺炎と関連

Preoperative six-minute walk distance is associated with pneumonia after lung resection.

Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2018 Feb 1;26(2):277-283.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29049742

<目的>
肺切除術患者の術前身体機能と術後肺炎の関連についてあまり知られていない。
術前6分間歩行距離(6MWD)と術後肺炎の関係について検討した。

<方法>
名古屋大学病院にて肺切除術を行った患者を後方視的に検討。術前肺機能、6MWTを評価。
ロジスティック回帰モデルとROC曲線で臨床的変数と6WMD、FEV1.0、DLCOを比較。

<結果>
321人の患者が対象。うち、283人は初発の肺がん、38人が転移性肺がん
肺炎は13人の患者で発症し、術後入院期間が延長していた。
肺炎発症した患者の術前6MWDは肺炎の無い患者よりも著明に短い(425 vs 500 m, P = 0.002)
ROC曲線にて、6MWD ≤ 450 mが術後肺炎を予測するカットオフであった(感度69.2%、特異度71.1%)
ロジスティックモデルにて、術後肺炎と関連していたのは、6MWD<450m、%FEV1.0<80%、%DLCO<80%、血清アルブミン<3.5g/dl、術中出血量>200g

<考察>
術前6MWDは術後肺炎の発症と関連していた。


・周術期リハは、全患者に同様のリハを提供。モビライゼーション、歩行、呼吸練習、筋力トレーニング。
・術前1-14日実施(中央値1日)
・術後合併症は、術後30日間の発症を調査。術後合併症は、the Clavien–Dindo classificationで評価。

・肺炎は術後3-9日に発症。術後入院期間が延長していた。
・6MWD≦450mは肺炎発症リスクが5倍であった。
・低アルブミンが術後呼吸器合併症の予測因子であることは知られており、筋肉量の減少によって筋機能の異常が栄養不良の原因かもしれない。

The distribution of 6MWD (m) and postoperative pneumonia in analysed population (n = 321). 6MWD: 6-min walk distance.

Area under the receiver operating characteristics curves for the risk of postoperative pneumonia as determined by preoperative 6MWD, % of predicted values of FEV1 and DLco. DLco: diffusion capacity of the lung for carbon monoxide; FEV1: forced expiratory volume in 1 s; 6MWD: 6-min walk distance.

2020/01/13

ICUでのモビライゼーションとリハビリの効果-systematic review-

The effects of active mobilisation and rehabilitation in ICU on mortality and function: a systematic review.

Intensive Care Med. 2017 Feb;43(2):171-183.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27864615

<目的>
ICUでの早期離床とリハビリテーションは、疾患の長期身体機能の低下を予防するために用いられる。
このレビューでは、ICUでの自動運動(active mobilization)やリハビリの、死亡率、身体機能、筋力、QOL、退院後180日の生存率、ICUと在院日数、人工呼吸日数、退院先への影響について調査した。

<方法>
PRISMA チェックリストを基に、RCTのレビューとメタアナリシスをじっし

<結果>
14件の研究、1753人の患者が質を満たしていた。
自動運動とリハビリは、予後(短期と長期)に影響しなかった。
メタアナリシスでは、自動運動とリハビリはICU退室時の筋力(MRC-SUMスコア)を著明に改善し、退院時に介助無しで歩行できる可能性が高く、退院後180日の生存率が高かった。
身体機能、QOL、在院日数、人工呼吸日数、退院先への影響は認められなかった。

<考察>
ICUでの自動運動とリハビリは予後に影響しなかったが、活動状態、筋力、退院後生存率は改善させるかもしれない。

2020/01/06

身体活動と炎症反応の関係

The effects of physical activity on serum C-reactive protein and inflammatory markers: a systematic review.

 2005 May 17;45(10):1563-9

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15893167


身体活動は、冠動脈疾患の発生の減少と関係しているが、この間に存在する機序については明らかにされていない。

最近、循環器疾患の病理における炎症について興味深い報告がいくつかある。
身体活動の役割は、炎症の過程における効果から、結果になっているかもしれない。

pubmedで1975年から2004年までの文献で、運動、身体活動、フィットネスとCRP、炎症、炎症マーカー、サイトカインの関係について検索。


レビューは、19文献が運動による急性炎症反応について報告、18文献が活動レベル、運動による効果を炎症のプロセスによって比較


短期間の運動で炎症反応が示された一方、交差比較した縦断的運動介入研究では、長期間の抗炎症効果を報告。


この抗炎症反応は、習慣的な身体活動の有効性に寄与するかもしれない。


<激しい運動後の急性反応>

42キロのマラソン後、一過性に白血球とCRP値が上昇。また、IL-1やクレアチニンキナーゼ(CK)も上昇しており、これは、筋損傷による炎症反応にようるものと示唆される。
これらは、運動後、2-6日でベースラインへ戻る。
運動後の急性反応は、活動量と筋損傷の程度を表している。
運動後の反応は、運動の種類や筋肉動員量によるかもしれない。肘屈曲運動を用いた等張性(遠心性)運動を100回やっても、血清CK値は上昇しなかった。



激しい運動後の急性反応は、運動療法によって減少する。運動後の急性反応のメディエーターの機序は明らかになっていない。

運動は、抗炎症メディエーターの上昇にも寄与する。
運動による筋損傷は、IL-6の最初の反応であると考えられる。最近の研究で、筋損傷と独立して筋肉への運動刺激がIL-6を産生することが示唆されている。
筋損傷によるIL-6反応は遅く、筋収縮によるIL-6産生量よりも少ない。

<通常の身体活動によってCRPレベルが低下する機序>
どのような運動が炎症を減少しCRP値を抑えるのかについてはよくわかっていない。
身体活動は、いくつかの交絡因子によって、CRP値の低さと独立して関連している。
同様に、教育レベル、インスリン感受性、アルコール摂取、フルーツと野菜の摂取が、CRP値と逆に関連している(負の相関?)

2020/01/02

市中肺炎患者への早期リハは死亡率を減少

Early Rehabilitation and In-Hospital Mortality in Intensive Care Patients With Community-Acquired Pneumonia.


Am J Crit Care. 2018Mar;27(2):97-103

<背景>
市中肺炎は、最も多い感染症であり、致命的になり得る。
ICUでの早期リハビリの有効性については、知られているが、市中肺炎でICUへ入院した患者への早期リハビリと死亡率の関係については知られていない。

<目的>
市中肺炎で、ICUに入室した患者への早期リハビリと病院での死亡率の関係を調査
早期リハビリによる在院日数や入院費への影響を調査

<方法>
日本で、2011年から2014年に市中肺炎で入院した患者を国立入院患者データベースを使用して後ろ向きに収集。
スコアマッチ分析で2群を比較。
入院2日以内の介入を早期リハとした。

<結果>
8732人が対象。スコアマッチ分析にて972組の早期リハと非早期リハのペアができた。
早期リハは、入院中の死亡率を著明に減少(17.9% vs 21.9%)
ICU在室日数、入院期間、総入院費に違いはなかった。

<考察>
入院2日以内の早期リハ介入は、市中肺炎でICUに入院した患者の院内死亡率を減少させた

誤嚥性肺炎患者の筋肉量の低下は死亡率を予測

Muscle Mass Loss Is a Potential Predictor of 90-Day Mortality in Older Adults with Aspiration Pneumonia.

J Am Geriatr Soc. 2017 Jan;65(1):e18-e22.
<目的>
筋肉量低下と誤嚥性肺炎の関係について調査した

<方法>
前向き研究
急性期総合病院
誤嚥性肺炎で入院した患者151人が対象、平均年齢85.9歳
四肢骨格筋量(Appendicular skeletal muscle index;ASMI)で筋肉量を評価
データは、年齢、性別、BMI、MNA−Short Form、Bathel Index、Charlson  index、肺炎重症度(CURBー65、AーDROP)アウトカムは、30日と90日での死亡率

<結果>
軽症から最重症の誤嚥性肺炎患者が対象
カプラン−マイヤー曲線にて、ASMIが最も低い患者は、男女とも最も死亡率が高かった。
多変量ロジスティック解析にて、ASMIとAーDROPが90日後の死亡を独立して予測。
AーDROPのみが30日後の死亡率を唯一予測。
Cox回帰分析でも、ASMIが独立して死亡と関係していた(HR 2.19)
<考察>
筋肉量の低下は、誤嚥性肺炎患者の長期予後を予測できる可能性がある。筋肉量の減少を予防することが、高齢者の誤嚥性肺炎からの回復に有効かもしれない。