2023/09/20

急性心不全患者の自宅退院を予測するカットオフ-膝伸展筋力、SPPB、BI-

Examination of independent predictors of discharge disposition in acute phase hospitalized heart failure patients undergoing phase I cardiac rehabilitation

Eur J Phys Rehabil Med (IF: 2.87; Q2). 2020 Dec;56(6):780-786.


【背景】
急性心不全(HF)患者は増加している。退院先(disposition)は、心臓リハビリテーション(CR)の主なアウトカムの一つである。
しかし、急性期HF患者でCRを行った患者の自宅退院基準に関するデータはほとんど存在しない。

【目的】
急性期のガイドラインに沿ったCRを行ったHF患者で自宅退院を予想する明確な基準を明らかにすること。

【方法】
急性期病院での介入研究。
対象は、320例の急性期HF患者。日本のガイドラインに沿ったCRを実施。
膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、Barthel Index、MMSE、CONUTを入院時と退院時に評価
退院時、患者は、自宅退院グループ(n=255)と自宅以外のグループ(n=65)に分けた。
自宅退院を独立して予測する因子とカットオフをロジスティック回帰分析とROC曲線で評価。

【結果】
入院時の膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、BI、MMSEは自宅退院グループが有意に高値であった。
しかし、入院時のHF重症度とCONUTはグループ間で有意差なかった。
退院時、自宅退院群では、自宅以外のグループよりも、膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、BI、MMSEは自宅退院で高く、CONUTは有意に低かった。
多変量解析では、入院時の膝伸展筋力とSPPB、入院日数、退院時BIは、自宅退院の独立した予測因子であった。
自宅退院を予測するカットオフ値は、
・入院時膝伸展筋力≧12.1㎏
・入院時SPPB≧3点
・退院時BI≧80点

【考察】
入院時の膝伸展筋力とSPPBは、自宅退院困難な患者を早期に発見できる可能性を示唆した。
さらに、CRの目標設定として、BI≧80点が、急性期HF患者が自宅退院が有効である可能性を示した。

本研究は、自宅退院困難な患者の早期発見と、適切なリハビリの目標設定に貢献する。

2023/09/15

多様な疾患の6MWTのMCID 14-30.5m

Minimal clinically important difference for change in 6-minute walk test distance of adults with pathology: a systematic review

J Eval Clin Pract (IF: 2.43; Q4). 2017 Apr;23(2):377-381.


【背景と目的】
6MWTは運動耐容能評価として広く用いられている。
いくつかの研究で、6MWTのMCIDが報告されている。しかし、研究結果は相互に検討されていない。
このレビューでは、病気のある患者の6MWTのMCIDの情報を集約することを目的とした。

【方法】
3つの電子データベースより関連文献を検索した。
採用文献の基準は、
1)原著、全文、査読あり 2)6MWTのMCIDを報告 3)成人の医療介入に焦点
ROC曲線以外の方法でMCIDを報告したものは除外
論文は、参加者情報、介入、6MWD、MCIDに要約してまとめた。
質的評価は、hybrid 9 itemsを使用

【結果】
6つ文献が基準を満たした。
対象疾患は、COPD、肺がん、冠動脈疾患、びまん性肺疾患、非嚢胞性線維性気管支拡張症、転倒恐怖のある成人
ベースラインの平均6MWDは295-551m
ROC曲線でAUC0.7以上のMCIDは14.0-30.5m。

【考察】
今回の結果では、14.0-30.5mが多様な患者グループのMCIDであった。

2023/09/14

COPDの身体的フレイルと呼吸リハ -前向きコホート研究-

Physical frailty and pulmonary rehabilitation in COPD: a prospective cohort study

Thorax (IF: 9.14; Q1). 2016 Nov;71(11):988-995.


【背景】
フレイルは、高齢者のアウトカム悪化と関連している重要な症候群である。
慢性呼吸器疾患のフレイルの罹患率と管理については明らかになっていない。

【目的】
安定期COPD患者におけるフレイルの罹患率を明らかにする
フレイルが、呼吸リハの完遂やアウトカムへ影響するかを明らかにする

【方法】
816人のCOPD患者(平均年齢70歳、%FEV1.0 48.9%)
フレイルは、呼吸リハ前後でFriedの基準を使用して評価。
プログラムを完了できない予測因子を多変量ロジスティック回帰、アウトカムを年齢と性別を補正した変数で解析。

【結果】
816人中209人(25.6%)がフレイルに該当。
フレイルの罹患率は、年齢、GOLDのstage、MRCスコアが高いほど罹患率は高く、年齢で補正した併存症の割合が多かった
フレイルの患者は、プログラムを完了できないオッズが約2倍(OR2.20、95% CI 1.39 to 3.46, p=0.001)、増悪や入院によって継続できないことが多かった。
しかし、アウトカムは、フレイルでリハを完了できた方が良好であった。特に、MRCスコア、運動能力、身体活動レベル、健康状態(QOL)
リハビリ後、115人中71人(61.3%)のフレイルと診断されていた患者は、その後フレイルの基準を満たさなかった。

【考察】
フレイルは、呼吸リハを行うCOPD患者のうち、1/4が罹患しており、リハビリプログラムを完了できない独立した予測因子である。
しかし、フレイルの患者の方が、リハビリの反応が良く、短期間で改善可能であった。



2023/09/10

COPDと疲労感

Fatigue is highly prevalent in patients with COPD and correlates poorly with the degree of airflow limitation

Ther Adv Respir Dis (IF: 4.03; Q2). 2019 Jan-Dec;13:1753466619878128.


【背景】
目的は、COPDの有無で疲労感を比較し、疲労感と背景、臨床的特徴、疾患重症度との関連を比較する事。

【方法】
1290人のCOPD患者(65歳、61%男性、%FEV1.0 56%)と199人のCOPDでは無い症例
疲労感は個別の疲労感の強さについてのチェックリストで評価

【結果】
COPD患者は、疲労度の強さが高く、重度の疲労感の割合が多かった
疲労感は著明であったが、気流制限の程度との関連は弱かった。
重回帰にて、疲労の分散の30%が予測変数にて説明できることが示された。

【考察】
重度の疲労感は、COPD患者の半数で蔓延しており、気流制限の程度とは関連が乏しかった。
今後、COPD患者の疲労感を増進または永続させる要因として、身体、精神的、行動学的、全身的な原因をよく理解していく必要がある。

考察:なぜCOPDで疲労感が強い患者がいるのか
今回の研究では、明らかな要因の同定までは行えなかった。
前項研究からも、気流制限(1秒量の低下)と疲労感は相関しないかもしれない。
息切れ症状と薬剤の数とは中等度の相関あり。

まだ不明な点が多いが、疲労度が強い患者群が一定数いる模様。