Eur J Phys Rehabil Med (IF: 2.87; Q2). 2020 Dec;56(6):780-786.
【背景】
急性心不全(HF)患者は増加している。退院先(disposition)は、心臓リハビリテーション(CR)の主なアウトカムの一つである。
しかし、急性期HF患者でCRを行った患者の自宅退院基準に関するデータはほとんど存在しない。
【目的】
急性期のガイドラインに沿ったCRを行ったHF患者で自宅退院を予想する明確な基準を明らかにすること。
【方法】
急性期病院での介入研究。
対象は、320例の急性期HF患者。日本のガイドラインに沿ったCRを実施。
膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、Barthel Index、MMSE、CONUTを入院時と退院時に評価
退院時、患者は、自宅退院グループ(n=255)と自宅以外のグループ(n=65)に分けた。
自宅退院を独立して予測する因子とカットオフをロジスティック回帰分析とROC曲線で評価。
【結果】
入院時の膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、BI、MMSEは自宅退院グループが有意に高値であった。
しかし、入院時のHF重症度とCONUTはグループ間で有意差なかった。
退院時、自宅退院群では、自宅以外のグループよりも、膝伸展筋力、運動耐容能、SPPB、BI、MMSEは自宅退院で高く、CONUTは有意に低かった。
多変量解析では、入院時の膝伸展筋力とSPPB、入院日数、退院時BIは、自宅退院の独立した予測因子であった。
自宅退院を予測するカットオフ値は、
・入院時膝伸展筋力≧12.1㎏
・入院時SPPB≧3点
・退院時BI≧80点
【考察】
入院時の膝伸展筋力とSPPBは、自宅退院困難な患者を早期に発見できる可能性を示唆した。
さらに、CRの目標設定として、BI≧80点が、急性期HF患者が自宅退院が有効である可能性を示した。
本研究は、自宅退院困難な患者の早期発見と、適切なリハビリの目標設定に貢献する。