2023/05/31

食道切除術患者 術前握力が術後アウトカムを予測

Preoperative Muscle Strength Is a Predictor of Outcomes After Esophagectomy

J Gastrointest Surg (IF: 3.45; Q3). 2021 Dec;25(12):3040-3048.


【背景】
サルコペニア、筋肉量低下、筋力低下は食道切除術後の合併症の増加と関連している。
握力、筋肉量、筋内脂肪組織が、食道切除術後の術後アウトカムと死亡率の予測因子となるかを比較した。

【方法】
低侵襲食道術を行った175人の食道がん患者が対象。
骨格筋指数と骨格筋密度は、術前CTから判断。
握力は、握力計で評価。
単変量、多変量解析で解析をした。

【結果】
術前握力が、正常は91例(51%)、中等度低下43例(25%)、低下41例(23%)
握力が、骨格筋指数と骨格筋密度の両方と関連していた。
術後肺炎:握力低下患者の8例(20%)vs正常患者のうち4例(4%)で生じた(p = 0.006、コクラン=アーミテージ検定)。
術後人工呼吸期間の遷延:握力低下の11例(27%)vs正常の11例(12%)で生じた(p=0.036)
入院日数中央値:握力低下は9日、握力正常は7日(p = 0.005; Kruskal-Wallis Test)
自宅退院できなかった症例:握力低下で15例(37%)、握力正常で8例(9%)(p<0.001)
術後90日後の死亡率:握力低下で4例、握力正常で0例(p=0.004)
1年後の死亡率:1年間フォローできた158例のうち、握力低下で18例(46%)、握力正常で6例(7%)(p=0.001)

【考察】
術前握力は、術後肺炎、入院日数、自宅以外への退院、術後死亡率を強く予測した。

2023/05/23

身体機能(歩行速度)低下を予測する5回起立のカットオフ 12.8秒

Cut Points of Chair Stand Test for Poor Physical Function and Its Association With Adverse Health Outcomes in Community-Dwelling Older Adults: A Cross-Sectional and Longitudinal Study

J Am Med Dir Assoc (IF: 4.67; Q2). 2022 Aug;23(8):1375-1382.e3.


【目的】
地域高齢者における身体機能低下(5回起立:5STSで評価)を示す最適なカットオフと2年間のフォロー期間での臨床的健康アウトカムの予測ができるかを検討する事。

【対象】
横断的、縦断的分析を実施したコホート研究。
横断的にはn=2977、2年間のフォロー解析には=2515が参加。
韓国のフレイル・加齢コホートスタディ(the nationwide Korean Frailty and Aging Cohort Study (KFACS))に参加している70-84歳。

【方法】
階層回帰木分析(Classification and regression tree (CART) analysis)で歩行速度が遅いことで定義づけた(gait speed ≥1.0 m/s, gait speed >0.8 m/s and <1.0 m/s, gait speed ≤0.8 m/s)身体機能低下を予測する5STSのカットオフを算出。
多変量ロジスティック回帰モデルで歩行速度低下と発生を評価し、5STSの3つのカテゴリー(普通、中等度、悪い)による臨床アウトカムを横断的・縦断的に解析。

【結果】
歩行速度が≦0.8m/sは、9.0%、≦1.0m/sは32.1%。
CARTモデルで、中等度の身体機能低下を予測する5STSのカットオフは10.8秒、身体機能の低下がより顕著(悪い)のは、12.8秒。
調整したモデルにて、12.8秒のカットオフは、2年間のフォロー期間での歩行速度低下の発生や臨床的健康アウトカムの転帰(活動制限、フレイル、サルコペニアリスク、転倒など)の発生とリスクが大幅に増大していた。

【考察】
身体機能低下を予測する5STSのカットオフを算出した。
10.8秒と12.8秒が基準であり、身体機能障害のリスクを見つけるのに役立つかもしれない。
したがって、地域医療において、予防介入デザインに役立つであろう。

2023/05/14

入院急性リハプログラムの効果

Evaluating Effectiveness of an Acute Rehabilitation Program in Hospital-Associated Deconditioning

J Geriatr Phys Ther (IF: 3.38; Q3). 2020 Oct/Dec;43(4):172-178.


【背景】
急性入院は機能低下を示し、入院関連デコンディショニングとして知られている。高齢者は、最も弱く、結果として、機能的困難さや施設入所のリスクが高まる。
この研究の目的は、多面的な急性リハビリプログラムの、入院関連デコンディショニングに対する効果を、日常的に収集されるデータで評価し、対照試験が必要かを検討する事。

【方法】
2013-2014年の後方視的入院データベースレビューを実施。
患者のリハプログラムの経験を評価するために、2年間の患者のフィードバックアンケートを解析した。

【結果】
289人の急性リハプログラムを行った患者が含まれる。
多くの患者は、81-90歳で、全入院の47%を占めている。
急性リハプログラムにエントリーしたのは、中央値で入院5日。入院日数は9日。
これらの患者の多く(57%)は、自宅に直接退院していた。
21%の患者は、入院リハ部門への転院が必要であった。
平均のFIM利得点数は、22点。平均退院時FIMスコアは94点。
患者フィードバックでは、96%がプログラムをとても良かったor良かったと回答。
プログラムに参加した患者の多くは、機能的なアウトカムの改善が得られ、多くは直接自宅退院でき、リハ病院への転院は減少しており、この急性リハプログラムを受け入れていた。

【考察】
これらの結果は、急性リハプログラムが、入院関連機能障害において、より厳格な評価が正当であることを示唆している。

2023/05/12

地域在住高齢者、5回起立テスト 3年で3秒遅くなっていたらADL制限リスク高

Clinically meaningful change for the chair stand test: monitoring mobility in integrated care for older people

Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle 2022; 13: 2331–2339


【背景】
5回起立テストの臨床的に有意な変化量は統合されたケアを受けている高齢者の活動のモニタリングに不可欠である。
起立テストの臨床的に有意な変化の推奨値は知られていない。
目的は、高齢者の5回起立テストの臨床的に優位な変化の絶対値と相対値を推定する事。

【方法】
distribution-base とanchor-base でに加えてROC曲線で、地域在住高齢者(SAGE Mexico study,n=897)の5回起立テストの臨床的に有意な変化量を算出。
3種類のアンカーを使用:身辺活動、活発な活動、1km歩行
プライマリーアウトカムは、基本的ADL障害の発生
セカンダリーアウトカムは、健康なボランティア (MAPT, France, study n = 1575)を対象にして、ADL障害が生じる偶発的なリスクを推定するための臨床的に有意な変化を推定すること。

【結果】
SAGE Mexicoの参加者は、平均年齢69.0歳、54.4%女性
ベースラインの5回起立は12.1秒
48人(5.6%)は、3年間の間に活動制限が生じていた。
3年間の臨床的に有意な絶対値と相対値は、2.6秒と27.7%であった。
絶対値は、推定する方法によるが、0.5-4.7秒の間であった。
相対的な臨床的に有意な変化は、9.6-46.2%であった。
SAGE Mexicoの参加者の絶対値と相対値(2.6秒、27.7%)は、それぞれ臨床的に低下をしていない参加者と比べ、ADL障害の発生リスクの上昇を示した。
MAPT参加者(年齢70-94歳、5年間のADL障害発生=14.8%)は、相対的に有意な減少(ベースラインから3年間で27.7%以上)は、低下が無い参加者よりもADL障害発生リスクが74%高かった。

【考察】
地域在住高齢者で、3年間の5回起立テストが3秒or28%(1年間で約1秒or10%)増加している場合は、活動制限の予防や活動向上のための介入のターゲットとなるだろう。