2021/09/26

肺がん術後合併症を術前活動量で比較

Preoperative Physical Activity Predicts Surgical Outcomes Following Lung Cancer Resection

Integr Cancer Ther (IF: 3.28; Q3). Jan-Dec 2021;20:1534735420975853.


【目的】
術前身体活動のレベルが、肺切除術後の合併症を予測するかを検討すること。

【方法】
身体活動レベル(歩数)は、歩数計を用いて、15日連続で評価。
対象は、90人の患者。
アウトカムは、循環および呼吸器合併症、入院日数、30日以内の再入院率

【結果】
78人の患者のデータセットを解析。(12人はコンプライアンス不良により除外)
歩数をもとに、患者を4分位に分けた:1(低活動)から4(高活動)
年齢、喫煙歴、COPDの有無、BMI、%FEV1.0、KCO、循環器リスク因子は、グループ間で差はなかった。
合併症の発生は、1,2群(低活動)と比べて3,4群(高活動)で有意に少なかった(8 vs 22; P = .01)。
3,4群の入院日数(中央値4日、5日)が、1,2群(どちらも6日)と比べて短い傾向にあった(P > .05)。

【考察】
術前の身体活動は、術後アウトカムの予測を補助することができ、術後合併症のリスク層別化と術前介入の影響をモニターし、短期的なアウトカムの改善ができる。


・2015年から2017年にVATSもしくは胸腔鏡下にて肺切除術を行った患者。良性腫瘍の手術や重度の整形疾患がある患者は除外。

・活動量測定
入院15日前から歩数計を装着。
術前にルーチンで指導している内容を説明:禁煙、運動の重要性、できる限り最大の活動を行うこと
特に、1日2回のウォーキングを行い、歩行距離を日に日に延ばすようにした。
術前の理学療法介入は無し。

・術後合併症の定義
画像所見にて肺炎の特徴がある、炎症マーカーの上昇、血ガスにて呼吸不全、アシデミアのために呼吸器管理が必要、酸素を使用しても低酸素である、呼吸不全の状態
循環器の合併症:不整脈、急性虚血性イベント、血清トロポニンの上昇

・身体活動レベル
1日平均3888歩。21人は平均5000歩以上、4人は10000歩以上を達成。
患者を歩数で4分位に分けた。以下、各郡のmedian歩数
1:967歩
2:2672歩
3:4159歩
4:7673歩

各グループ毎の合併症の発生
歩数が少ないほど、呼吸器合併症が多い
循環器合併症は変わらない

・考察より
肺切除術後の合併症と、術前の直接介入なしでの術前身体活動の関係を報告した最初のスタディである。
肺がんの手術を受ける患者の多くはPS0か1であるが、身体活動が術後合併症リスクを層別化できるかもしれない
今回の結果が、どの患者が、術前リハプログラム"プレハビリテーション"の効果を得られるかを判断するのに有効かもしれない。

Garciaらは、プレハビリテーションが術後在院日数の減少や合併症の予防に有効かもしれないとしているが、術前8-12週から開始すべきとされている。
プレハビリテーションのために手術を遅らせることは、患者の苦痛やその他の重要な制限をもたらしてしまう可能性がある。

今回は術前2週間の身体活動量で、術後合併症を予測した。

2021/09/21

市中肺炎で入院した患者の早期介入(24時間以内の離床)は安全

 Early mobilization of patients hospitalized with community-acquired pneumonia

Chest (IF: 9.41; Q1). 2003 Sep;124(3):883-9.


【目的】
市中肺炎(CAP)で入院した患者の早期離床(early mobilization:EM)が、入院日数を減少させるかを検討する事。

【方法】
3つの病院で行われた、集団ランダム化試験。
1997年11月から1998年4月までに、CAPで入院した458人の患者。
EMの定義:入院後24時間以内に、ベッド座位もしくは歩行を最低20分行う。
入院中は、モビライゼーションを漸増していった。

【結果】
介入群n=227、通常ケアn=231
年齢、性別、疾患重症度、治療までの時間、点滴から内服への切り替えた時期(IV-to-po switchover time)は、両グループで同様であった。
入院期間は、EM群が有意に短かった(平均5.8日vs6.9日)
両グループで、有害事象の発生やその他のアウトカムに違いはなかった。

【考察】
急性冠動脈疾患やTKA患者のように、CAPで入院した患者のEMは入院日数を減少させ、有害事象の発生は認めずに有効な治療を行えた。

2021/09/19

1分間起立テストはCOPD患者の動作時低酸素血症を評価できるか?

 Is the 1-Minute Sit-To-Stand Test a Good Tool to Evaluate Exertional Oxygen Desaturation in Chronic Obstructive Pulmonary Disease?

Diagnostics (Basel). 2021 Feb; 11(2): 159.


【背景】
COPDでは、6MWTを用いて評価される動作時低酸素血症が頻繁に関連する。
しかし、これは時間を要する試験である。
1分間起立テスト(1STST)は簡便で、身体機能を評価するツールとして既に使用されている。
この研究の目的は、動作時低酸素血症を評価するために、6MWTと1STSTを比較すること。

【方法】
6MWTと1STSTを同じ日に評価した30人のCOPD患者を対象とした横断研究。
6MWD、1STSTの回数、呼吸循環パラメーターを記録。

【結果】
6MWDと1STSTに著明な相関を認めた(r = 0.54; p = 0.002)。
2つのテストの最低SPO2は、良好な関係を示し(ICC0.81)、強い相関を認めた (r = 0.84; p < 0.001).
低酸素血症について、fair cohen's kappaで表されたテスト間の一致度は、73.3%、Bland-Altman 解析では93.33%であった。

【考察】
1STSTは、COPD患者の動作時低酸素血症を検出する有効なツールである。なぜなら、時間が短く、道具が必要ないテストであり、COPDの運動耐容能評価や動作時低酸素血症を診療している外来クリニックで良い適応となるかもしれない。

2021/09/09

6MWDが維持できていても活動量は減少している可能性

Physical activity declines in COPD while exercise capacity remains stable: A
longitudinal study over 5 years

Respir Med (IF: 3.095; Q1). 2018 Aug;141:1-6.


【背景】
日常身体活動(PA)と運動耐容能はCOPD患者で低下している。これらは、自然な経過なのか、一方が先行して生じているのか明らかになっていない。
目的は、COPD患者において、運動耐容能と身体活動の経時的な関係と全体の変化を検証すること。

【方法】
縦断観察研究。外来や病院に通院している患者を対象。
2つの運動耐容能テスト(1分間起立(1-STS)、6MWT)と身体活動量(1日の歩数を1-7年間計測)の評価を実施。
単変量と多変量モデルを用いて、STS、6MWT、歩数の変化について解析。

【結果】
202人のCOPD(class分類でA17%、B49%、C4%、D34%)。平均フォロー期間2.4年(最短0.9年、最長6.8年)
歩数は全体的に減少(年間平均451歩減少(95%CI:−605.3/-296.6)、p<.001)していたが、STSや6WDは維持されていた。

【考察】
今回の結果は、COPD患者は、運動耐容能が維持されたままでも日常身体活動の障害が増していた。
縦断的なPAの減少は、運動耐容能の低下によって説明できない。

・スイスの7つの外来クリニックで行われた前向き無介入コホート研究“The Obstructive Pulmonary Disease Outcomes Cohort Study (TOPDOCS)” 
・2010年から2016年に外来通院もしくは入院中にリクルートし、年3回の調査をした(一部の患者は7年間まで延長した)。
・少なくとも1回フォローできた患者を解析対象とした
・202人の患者が対象となり、そのうち142人が3年間追跡、49人は4年間追跡した。増悪した患者については、6週間経過したのちに研究に参加した。


・1分間起立:上肢を使わずに、1分間で何回起立を繰り返し行えたか
・活動量測定:3軸加速度計(SenseWear Pro)で測定。左上腕に1年に1回、7日間連続で装着。データは、最低1日22.5時間を4日間測定できていたものを採用。

・解析:単変量混合効果モデルを用いて、STS、6MWT、歩数の年間の変化を解析
活動のパラメーターと生存率、気流閉塞の進行を多変量混合効果回帰を用いて解析

・年齢64歳、BMI25.8、%FEV1.0 45% mMRC1、6MWD431m、歩数4581歩

・活動量は、年間平均で451歩減少。ベースラインで歩数が多かった患者の方が、より大きく減少していた。


・1秒量が低い患者で大きく減少していた。
・活動量の減少は、mMRCが経過とともに増加しているにも関わらず、mMRCとは関連していなかった。

・生存率に関して、生存と非生存の間に、6MWDで年間31mの有意な差があった。


・COPD患者において、活動量は年間450歩減少していたが、運動耐容能は維持されていた。
・生存率では、非生存者の方が、6MWDが有意に低下しており、PAとSTSは差が無かった。

・PA減少が、遅れて運動耐容能を引き起こすのかについて検討が必要。
・生存と非生存で運動耐容能とPAの経過が似ているかについては検討していない。