2021/05/31

入院高齢患者の歩数、強度と死亡率の関係

Association of accelerometer-derived step volume and intensity with hospitalizations and mortality in older adults: A prospective cohort study

J Sport Health Sci (IF: 5.2; Q1). 2021 May 21;S2095-2546(21)00052-1.


【背景】
高齢患者における、死亡率と歩数、強度の関係を調査した。

【方法】
前向きコホート研究。768人の地域高齢患者(スペイン人、平均年齢78.8歳、女性53.9%)が対象。
1日の歩数と歩行率(ケイデンス 歩数/分)を腰に装着した加速度計で測定。
測定は、ベースラインで少なくとも4日間実施。
患者を入院に関して3.1年間、死亡率に関して5.7年間追跡した。

Cox比例ハザード回帰モデルで、入院や死亡に関しての歩数と強度の関係を検討した。

【結果】
歩数は1日平均5835±3445歩、強度は7.3±4.1歩/分
年齢、性別、BMI、教育年数、収入、配偶者の有無、併存症で補正したところ、より多い歩数(入院;HR=0.95、95%CI0.90-1.00、死亡;1000歩増えるごとにHR0.87 95%CI0.1-0.95)と高い強度(入院;HR=0.95、95%CI0.91-0.99、死亡;歩数/分が増えるごとにHR0.89 95%CI0.84-0.95)は入院と死亡リスクの低下と関係していた。
低い歩数と強度のグループと比べ、高い活動量のグループでは、入院リスクが低く(HR = 0.72 (95%CI: 0.52-0.98))、死亡率も低かった (HR = 0.60 (95%CI: 0.37-0.98))

【考察】
高齢者において、高い歩数と歩行強度は、入院率や死亡率の低下と関連していた。歩数や強度を増加させることが、高齢患者に有益かもしれない。

・測定
加速度計を腰に装着
非装着時間の定義:0強度の時間が60分連続している or 0-100の間のカウントが2分以上ない場合
総歩数の計算:装着した日数の歩数の総和/装着日数
歩行強度:有効装着時間の歩数/有効装着時間




2021/05/30

増悪入院中のCOPD患者の歩行速度とアウトカムの関係

 Gait speed and adverse outcomes following hospitalised exacerbation of COPD

Eur Respir J (IF: 12.339; Q1). 2021 Apr 29;2004047. 


4m歩行速度(4MGS)は簡便な身体パフォーマンス評価であり、高齢者のフレイルを反映する指標でもあり、アウトカムの悪化と関連している。
目的はCOPD増悪(AECOPD)で入院した患者において4MGSが予後予測となり得るかを検討すること。

213人のAECOPDで入院した患者が対象(52%男性、平均年齢72歳、%FEV1.0 35%)
1年後の再入院と死亡率を多変量Cox比例ハザード回帰分析にて算出。
4MGSの4分位での再入院と死亡率をカプランマイヤーで算出。

111人の患者(52%)が再入院し、35人(16%)が死亡した。
4MGSは再入院と関連しており、調整後のハザード比は、0.1m/s歩行速度が増えるごとに0.868(95% CI 0.797-0.945; p=0.001) 
死亡率との関係は、ハザード比は、0.1m/s歩行速度が増えるごとに0.747 (95% CI: 0.622-0.898; p=0.002)

再入院と死亡率のモデルで、  4MGSは、年齢や%FEV1.0のみの場合よりも高い識別性を示した。
ROC曲線でのAUCは再入院:0.73、死亡:0.80

カプランマイヤーと競合するリスクカーブにおいて、歩行速度が遅いことは、再入院までの時間や予後(死亡までの時間)を短縮させることと関係していた。

4MGSは、COPD患者の退院時のリスクを反映させる簡便な指標である。
退院後のケアやサポートの計画に有益な情報を提供する。

2021/05/25

肺がん術前の身体活動量と術後アウトカムの関係

Preoperative Physical Activity Predicts Surgical Outcomes Following Lung Cancer Resection

Integr Cancer Ther (IF: 2.379; Q1). Jan-Dec 2021;20:1534735420975853.


<目的>
肺切除術を行った患者の術前身体活動レベルが術後合併症の発生を予測するかどうかを評価すること。

<方法>
90人の患者に対して、入院前の身体活動レベル(歩数)を歩数計で15日連続で記録。
アウトカムは、循環器および呼吸器合併症、入院日数、30日以内の再入院率

<結果>
78人の患者データが解析対象(12人はコンプライアンス得られず除外)
歩数で4群に分けた:1低い身体活動から4高い身体活動
グループ間に、年齢、性別、喫煙歴、COPD、BMI、%FEV1.0、KCO、循環的なリスク因子に違いはなかった。
合併症総数の違いを、3.4群vs1.2群で認めた(8 vs 22; P = .01). 
身体活動レベルが高いと、入院日数が短い傾向(P > .05)にあった(3.4群は中央値4日と5日、1.2群は6日)。

<考察>
術前身体活動レベルは、術後合併症を予測し、術後合併症のリスク層別化や術前介入の影響、最終的に短期間のアウトカム改善に影響することができる。

・身体活動レベル(平均±SD)
quartile1:967±656歩
quartile2:2672±656歩
quartile3:4196±528歩
quartile4:7673±2047歩
各グループ約20人ずつ
全体の歩数の平均は3888歩/日



2021/05/17

入院中の身体活動低下予防策:PTによる身体活動アドバイス

Physiotherapist advice to older inpatients about the importance of staying physically active during hospitalisation reduces sedentary time, increases daily steps and preserves mobility: a randomised trial

Journal of Physiotherapy (2019) 65(4) 208-214


<背景>
理学療法士による入院中の身体活動の重要性についてのアドバイスが、活動性、移動、筋力、入院日数、合併症に影響するかについて検討。また、入院中の高齢者の活動の妨げとなっているものを見つけることを目的とした。

<方法>
ランダム化試験、Intention To Treat解析、検査者ブラインド。
68人の60歳以上、大学病院に入院している患者。
通常ケアに加えて、介入群では、入院中の悪影響と入院中に活動的であることの重要性に関するブックレットを配布。
対照群は通常ケアのみ。

アウトカムは、入院中の加速度計で測定した身体活動量。
移動能(mobilty)は、the de Morton Mobility Index (DEMMI)で評価
筋力は、握力で評価
入院日数と合併症は記録から検索。
入院中の活動の妨げに関しては、質問票で調査。

<結果>
2群間で活動量の差が、974歩/日示され、介入群の方が有意に多かった(95% CI 28 to 1919)。
介入群は、中等度強度の身体活動が向上しており、安静時間が減少していた。しかし、これらは些細な効果かもしれない。
介入群で、入院中に移動能力を失ったのは、対照群の参加者(35人中10人)に比べて約1/5であった(33人中2人)。相対リスク0.21(95% CI 0.05 to 0.90).
筋力、入院日数、合併症に関して、2群間での違いは明らかではなかった。
患者の報告した入院中の活動の制限は、息切れ、スペースが無い、感染症への不安であった。

<考察>
高齢入院患者において、PTが入院中の身体活動を維持することに関するアドバイスは、入院中の身体活動レベルを向上させ、移動能力低下を予防する。


・対象基準
60歳以上、入院48時間以内、介助なしで移動可能、アドバイスを理解できる、評価に参加できる(MMSEで判定)
・除外基準
隔離患者、予定手術入院、医学的にベッド上安静が必要、緊急手術を受けた、加速度計を装着できない(皮膚の問題や切断など)

・ブックレットの内容
テキストとイラストで、入院中の活動の重要性と効果について説明。加えて、患者が入院中の身体活動を向上させるべきであることを記した。
PTはこのブックレットを用いて、口頭で20分説明。
ブックレットの内容


・握力は、座位、肘屈曲90度で測定

入院の原因疾患

加速度計の結果

活動の妨げになっているもの



2021/05/15

作業療法への支出は、再入院を減らすために必要な支出

Higher Hospital Spending on Occupational Therapy Is Associated With Lower Readmission Rates

Med Care Res Rev (IF: 3.212; Q1). 2017 Dec;74(6):668-686.


病院経営者は、質を向上しつつ、支出をコントロールしなければならないプレッシャーにさらされている。
過去の研究で、病院の支出と質の関係について焦点を当てた中に、特異的なサービスの支出と質にの関係についてはほとんど注目されていない。
今回、この文献では、経営者が希少な資源をどのように配分すべきかについて、限られたガイダンスしか提供していません。
医療請求と費用のデータを用いて、心不全、肺炎、急性心筋梗塞に対しての特定のサービスへの支出と30日間の再入院率を検討した。

作業療法への支出カテゴリーのみが、これら3つの疾患すべての再入院率の低下と統計的に有意に関係していた。

この考察としては、作業療法は、患者の機能と社会的役割に焦点を当て、即座に対応する職種であり、これらの問題が解決されなければ、再入院の重要な要因となる可能性がある。