2021/04/28

COVID-19患者に対するPT介入頻度向上で退院時活動レベル向上

Frequency of Physical Therapist Intervention Is Associated With Mobility Status and Disposition at Hospital Discharge for Patients With COVID-19

Phys Ther (IF: 3.14; Q1). 2021 Jan 4;101(1):pzaa181. 


【目的】
新型コロナウイルス(COVID-19)と診断された患者に対して、急性期病院での理学療法介入による治療効果の理解が求められる。
この研究の主な目的は、理学療法実施頻度と患者の退院時の活動状態の関係を調査すること。

【方法】
11の病院に入院したCOVID-19患者を対象にした後方視研究。
プライマリーアウトカムは退院時の活動状態(the Activity Measure for Post-Acute Care 6-Clicks basic mobility (6-Clicks mobility)を使用)とJohns Hopkins 活動スケールの最高レベル。
自宅退院を副次アウトカムとした。
これらのアウトカムと理学療法介入頻度もしくは平均実施期間を多変量直線or修正Poisson回帰にて検定。
参加した患者のこれらの関係を回帰モデルでの相互作用を用いて評価。

【結果】
312人の患者が対象。PT介入頻度が多いと自宅退院時の6-Click mobilityと活動レベルスコア(相対リスク比1.82倍)が高い傾向にあった。
より長期間介入することは退院時の活動レベル向上と関係しているが、その効果はあまり顕著ではなかった。
中和効果(moderation effect)はさほど見られなかった。

【考察】
COVID-19患者において、PT介入頻度が多く、期間が長いと自宅退院時の活動レベルがより高い傾向にあった。
これらの関係は一般的に患者特性によって調整されることはなかった。

・理学療法はCOVID-19入院患者のケアの項目として含まれるべきである。
十分な理学療法介入を行うためには、ウイルス拡散からの保護とのバランスをとる必要がある。

・平均年齢69.6歳、女性45.8%。重症度:重症(extreme)が53.2%、ICU入院54.8%

・入院から評価実施まで:median 4日
・評価実施から退院まで:median 6日
・PT訪問日数:median 3日
・1回の訪問での介入時間:mean 25.3分

介入頻度、時間と各種活動状態の評価
介入頻度(visit frequency)=介入回数/評価から退院までの日数



2021/04/18

TKA後早期SLRは入院日数短縮と関連

Early postoperative straight leg raise is associated with shorter length of stay after unilateral total knee arthroplasty

J Orthop Surg (Hong Kong) (IF: 1.095; Q2). Jan-Apr2021;29(1):23094990211002294.


<背景>
TKA後の入院日数(LOS)はコストパフォーマンスに優れている。
SLRは、TKA後によく行われる運動であるが、術後早期の効果については明らかになっていない。
この研究の主な目的は、術後早期SLRと入院日数との関係について評価する事。
副次的な目的は、術後早期SLRと歩行実施までの時間、階段実施までの時間などの要因との関連を評価する事。

<方法>
888件のTKA(865人)の三次病院の患者が対象になった後方視研究。
すべてのTKAはmedial parapatellar approach(内側パテラアプローチ)と止血帯(tourniquet)にて実施。
※切離部位:内側膝蓋支帯、内側広筋。
イベント(SLR,歩行、階段昇降)までの時間、LOS、これらのイベントに影響する因子を多変量ポアソン回帰モデルとロジスティック回帰モデルにて分析。

<結果>
術後1日目(POD1)にSLRができた患者は、できなかった患者よりもLOSが短かった(平均3.5日vs4.1日)
POD1でのSLRは、歩行や階段昇降までの期間の短縮とも関係していた。
女性でPOD1の安静時痛が強い患者は、術後SLRが遅れることと関連していた

<考察>
TKA後POD1でのSLR可否は、LOS短縮、歩行や階段昇降までの時間の短縮と関係していた。
術後早期SLRは早期回復と退院を促進することができる。
術前筋力と術後疼痛の最適化が、TKA後早期回復に重要であるかもしれない。

2021/04/17

転倒歴のあるCOPD患者のADLと転倒、バランスの関係

The Investigation of Falls and Balance from the Perspective of Activities of Daily Living in Patients with COPD

COPD (IF: 2.5; Q1). 2021 Apr 6;1-17.


<背景>
この研究の目的は、1)COPD患者で転倒歴の有る患者と無い患者で転倒リスクの認識、バランス、ADLを比較すること、2)ADLとバランスの関係を調査すること。

<方法>
14人の転倒歴のあるCOPD患者(過去1年間に平均2.64±0.74回転倒)と14人の年齢、性別をマッチさせた転倒歴の無いCOPD患者を対象。
アウトカムは、the London Chest Activity of Daily Living(LCADL)、Activities-Specific Balance Confidence (ABC) scale、BBS、6MWT、大腿四頭筋力

<結果>
転倒歴のある患者群でADLにおける息切れが有意に強く、バランスに対する自信が低下しており、バランス能力が低下していた。
LCADLの項目”上半身の洗体”とBBSの合計点に、転倒した患者で強い相関があった(rho = -0.81, p = 0.001)。
LCADLの”社会的な外出”とABCスケールに相関があった(rho = -0.61, p = 0.001)。
LCADLの項目”上着の着替え” ”洗髪” ”階段を上る”とBBS合計スコアに中等度の相関があった(p < 0.003)。

<考察>
ADL動作における息切れの増強は、機能的能力や筋力に関わらず、パランス能力の低下やバランスの自信低下と関連していた。
転倒歴のあるCOPD患者では、機能的な移動を伴う活動において、バランスへの自信は低かった。

2021/04/02

吸入ステロイドと骨粗鬆症、骨折の関係

Osteoporosis and fracture risk associated with inhaled corticosteroid use among Swedish COPD patients: the ARCTIC study

Eur Respir J (IF: 12.339; Q1). 2021 Feb 17;57(2):2000515.



COPD患者で吸入ステロイド(ICS)が骨粗鬆症や骨折のリスクになるかについて、明らかになっていない。
目的は、COPD患者のリスクを評価すること。
スウェーデン国立健康機構に登録されたデータにおけるCOPD患者と52のスウェーデンのプライマリケアのデータでマッチングした患者が対象。
2000年から2014年までのデータを追跡。

アウトカムは、全骨折、骨粗鬆症に関連した典型的な骨折、骨粗鬆症の診断、骨粗鬆症の薬剤処方、その他骨粗鬆症に関連したイベントの発生を評価。
COPD患者は、ICS吸入のレベルで層別化。

COPD患者9651名、コントロール群59454名が対象。
追跡期間中、COPDの19.9%にて骨粗鬆症関連のイベントが少なくとも1回生じていた。コントロール群は12.9%(p<.0001)。
多変量解析にて、COPD患者で容量による影響の関係について検討したところ、高用量ICS使用は、骨粗鬆症関連イベントの発生と関連していた((risk ratio 1.52 (95% CI 1.24-1.62))
また、低用量ICSは、ICSを使用していないCOPD患者と比べ、1.27倍であった。
同様に、用量に関連したイベントの影響が4つの特異的な骨粗鬆症関連イベント(全骨折、典型的な骨折、骨粗鬆症薬剤処方、骨粗鬆症の診断)に見られた。

COPD患者は骨折や骨粗鬆症のリスクが高く、高用量ICSを使用している患者においては特にリスクが高いことが明らかとなった。

TKA術後早期の運動強度による身体機能の比較

Early High-Intensity Versus Low-Intensity Rehabilitation After Total Knee Arthroplasty: A Randomized Controlled Trial

Arthritis Care Res (Hoboken) (IF: 4.056; Q1). 2017 Sep;69(9):1360-1368. 


【目的】
TKA術後4日に開始する高強度のリハビリプロトコル(HI)が、低強度プロトコル(LI)と比べて安全で有効であるかを検討する事。

【方法】
162人の患者(平均年齢63歳、女性89人)をTKA後無作為にHIとLIに振り分け。
HIの主な内容は、漸増抵抗運動、早期荷重運動、活動を行うこと。
両グループとも外来にて週2-3回、11週間(26セッション)実施。
プライマリーアウトカムは、階段昇降テスト(the stair climbing test (SCT))、TUG、6MWT、the Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index (WOMAC)、SF12、膝関節ROM、大腿四頭筋とハムの筋力。
アウトカム評価のタイミングは、術前、術後1,2,3,6,12か月。

【結果】
両グループにおいて、術後3か月、12か月のアウトカムに違いはなかった。
有害事象の発生率も差がなかった。
術後12か月時点で、両グループとも6MWT、TUG、WOMAC、SF12、筋力は向上していた。

【考察】
TKA後、HIもLIも筋力や機能の改善が得られた。
HIはTKA後も安全に行える。しかし、術後早期の段階においては、関節性筋抑制(arthrogenic muscular inhibition )による制限のために効果が限定的であったのかもしれない。

・両グループともトレーニングは術後平均4.2日から開始。
・最初の6週間は週3回、その後の5週は週2回実施。
・両グループとも、教育、移乗練習、歩行、段差昇降、ROMex、回復に焦点を置いた徒手療法、自宅での運動指導を実施。

・高強度の内容
筋トレ:底屈、四頭筋、ハム、股関節内外転、伸展、屈曲の自重トレーニング。8RMをもとに8回を2セット。
歩行:週5回30分歩行。30分歩行を1回達成したら、スイミングやサイクリング、階段など運動の種類を増やした。

・低強度の内容
最初の4週は等尺性収縮とROMを中心に。
ゆっくりと荷重練習を実施。
荷重が難しければ漸増しない。
自重やセラバンドによる抵抗負荷はかけない。
最初の4週間は、ADL以外の活動が制限され、徐々に治療の終了後には30分になるよう、歩行や低強度サイクリングを実施。

高強度トレーニングの内容

運動の漸増基準、活動の処方

低強度運動の進め方

共通の介入内容
自宅での運動