2020/08/28

COVID-19患者で早期リハに参加した患者の状態

Early rehabilitation in post-acute COVID-19 patients: data from an Italian COVID-19 rehabilitation unit and proposal of a treatment protocol. A cross-sectional study

Eur J Phys Rehabil Med (IF: 2.258; Q1). 2020 Jul 15. 


<背景>
COVID-19パンデミックは、急速に拡大し、世界中の健康制度や特にICUに重大なストレスを与えている。リハビリテーションユニットは、患者を地域に戻すために機能障害を最小限に留める重要な役割を担っている。
目的は、肺機能と機能障害の状態の特性評価と、イタリアのリハビリ病棟に入院した亜急性期COVID-19のコホートに対して、早期リハビリテーションプロトコルを導入すること。

<方法>
亜急性COVID-19患者で、入院リハビリ病棟にて実施。
患者背景、アナムネ、臨床的特徴、ラボデータ、画像データをコホート参加時に収集。
入院時アウトカム評価:必要な呼吸補助の種類、FiO2、P/F ratio、Bathel Index、修正MRC、6MWT。
早期リハプロトコルは、ベースラインのFiO2をもとに提供。

<結果>
31人のCOVID-19(男性22名)、平均年齢72.6歳。
BI45.2点、より高いFiO2(40%以上)が必要な患者は、BIが低かった:39.6 ± 25.7 vs 53.3 ± 29.3.
全患者のmMRCは4か5。
14人の患者のみ(43.7%)歩行可能。
6MWTが実施できたのは6人で、平均距離は 45.0±100.6m

<考察>
亜急性COVID-19患者は、最小限の活動で息切れを感じており、結果として、重度の活動制限、数人の患者のみ6MWT(悪い結果)の実施ができるという状態。
早期リハプロトコルは、患者のベースラインの状態に応じて提供した。

2020/08/23

ICU入院患者の自宅退院を予測する評価はFSS-ICU

 The Use of Physical Therapy ICU Assessments to Predict Discharge Home

Crit Care Med (IF: 7.414). 2020 Sep;48(9):1312-1318.

<目的>
標準的な理学療法評価を用いて、自宅退院可能なカットオフ値が算出できるかを検討すること

<方法>
後方視研究
対象は大規模大学医療センターの5つのICU、1203人
The Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)とICU mobility scaleを理学療法初期評価、ICU退室時、退院前に評価
急性期ケア後の活動評価”6clicks”を初期評価時のみ実施
自宅退院を予測するカットオフ値をROC曲線で算出
ROC曲線は、入院前の活動状態と同様にICU日数や入院日数を補正して算出

<結果>
ICU退室時のFSS-ICUが、ICU入院患者の自宅退院を予測するのに最も優れていた
ICU退室時のFSS-ICUのAUCは、0.8
ICU退室時のFSS-ICUが19点以上は、自宅退院を予測(感度82.9%、特異度73.6%)

<考察>
ICU退室時のFSS-ICUは、ICUに入院した患者の自宅退院をタイムリーに最も正確に予測した。

2020/08/22

間質性肺疾患の呼吸リハ review

 Pulmonary rehabilitation in interstitial lung diseases

Current Opinion in Pulmonary Medicine: September 2020 - Volume 26 - Issue 5 - p 470-476


<本レビューの目的>
間質性肺疾患(ILD)患者に対する呼吸リハの現在のエビデンスについてレビューを行った。特に、運動療法と教育を用いたQOLと運動耐容能の改善に関して注目した。

<結果>
より長い期間の呼吸リハを実施すると、運動耐容能やQOLが向上
ILD特異的な教育項目を監視下運動療法に加えて行った。
高酸素療法を用いて運動を行う効果に関して、さらなる研究が必要であり、口すぼめ呼吸のようなその他の方法は逆効果である。

<考察>
現在のILD患者に対する個別的な呼吸リハプログラムに関するエビデンスをまとめた。
運動の方法や教育内容、呼吸法など、ILDに特化した内容のさらなる検討が必要である。

・運動処方
最大運動負荷もしくは6MWTの最大歩行速度から処方していた
週2回、1回90分を12週間行っているものが多かった
プログラムの完遂率は77-93%
Nishiyamaらの研究では、歩行速度の80%もしくはエルゴの最大運動負荷の80%。20分の上下肢筋トレを実施。

・運動の効果
ILDを含む呼吸器疾患での6MWDは14-30mがMCIDと記されている
SGRQで評価したQOLはー20からー6ポイントの改善
歩行距離や筋力が改善するが、歩数や中等度以上の身体活動量は増加しなかった
1日10時間以上座って過ごしていると入院リスクが2.4-5倍
週の歩行時間が150分以上であると、入院リスクが74%減少、死亡リスクが86%減少
運動療法に加えて身体活動量の測定と行動変容のアプローチが必要


・呼吸法
COPD患者に対して、口すぼめ呼吸は呼気時間の延長を図り、動的肺過膨張の抑制のために有効である
ILD患者に対しての効果は不明であるが、Parisien-La Salleらがデザインしたクロスオーバー試験で、口すぼめ呼吸は、呼吸数や肺容量を減少したにも関わらず、息切れが増強(borgスコア+1)し6MWDが減少(-29m)した
動作に伴って換気需要が増加したことが原因と思われる
患者の状態に応じて、評価し、実施することが重要である

2020/08/21

長期入院病院でのFSS-ICUの有効性

 The Clinical Utility of the Functional Status Score for the Intensive Care
Unit (FSS-ICU) at a Long-Term Acute Care Hospital: A Prospective Cohort Study

Phys Ther (IF: 3.14). 2012 Dec;92(12):1536-45. 

<背景>
長期救急病院(LTACHs:長期入院を必要とする患者の治療を専門とする病院)は、短期入院の期間を超えて医学的な治療を必要とする患者が入院している。この病院機能での機能的なアウトカムの報告はわずかである。
目的は、(1)LTACH場面におけるFSS-ICU(the Functional Status Score for the Intensive Care Unit)の有効性を評価すること、(2)FSS-ICUと退院場所の関連を調査すること。

<方法>
対象は、LTACHに入院している101人の患者(中央値年齢70歳、女性39%)
退院先で5グループに分けた(1)自宅(n=14)、(2)入院リハビリ病棟(n=26)、(3)高度介護施設(n=23)、(4)長期ケア/ホスピス(n=13)、(5)短期療養型病院(n=25)
アメリカのLTACH38床のデータを8か月間、前向きに収集。
機能状態は、入院4日以内にFSS-ICUでスコア化し、退院まで2週間ごとに評価。


<結果>
退院までに、FSS-ICUスコアは9点から14点に改善。退院時のFSS-ICUスコアは退院先別に異なっていた
自宅:28点、入院リハ:21点、介護施設:14点、長期ケア/ホスピス:5点、短期療養型:4点(いずれも中央値)

<考察>
LTACHで治療を行っている患者は、退院までの期間でFSS-ICUスコアが改善していた。
FSS-ICUスコアは、退院先を差別化し、LTACHでの患者の機能的な改善を反映していた。

※FSS-ICUとは
5項目(寝返り、起き上がり、支持なしで座位、起立、歩行)から構成される。それぞれを0-7点で評価し、35点満点で評価するもの。
Zanniらの報告をもとにスコア化。
0点:身体的制限や治療状況のために遂行不可
1点:全介助
2点:最大介助(患者が25%以下の実施)
3点:中等度介助(患者が26-74%以下の実施)
4点:最少介助(患者が75%以上の実施)
5点:口頭指示のみ
6点:修正自立
7点:自立
-Example Scale for Scoring the Functional Status Score for the ICU*
FIMのスコアリングとほぼ同じ感じ。

転帰予測には有効か。

2020/08/20

肺高血圧症の運動療法の効果と安全性 systematic review and meta analysis

 Effectiveness and safety of exercise training and rehabilitation in pulmonary hypertension: a systematic review and meta-analysis

J Thorac Dis (IF: 2.046). 2020 May;12(5):2691-2705.



<背景>
肺高血圧(PH)は肺動脈血管抵抗の上昇が特徴の慢性の進行性の疾患で、予後不良であり活動制限を多く生じる。
PHに対して薬物療法の多くが使用されているが、ほとんどの患者が運動耐容能低下とQOL低下を生じている。
運動療法は、運動耐容能とQOLを向上させる可能性があるが、十分な研究がなされていない。
このレビューの目的は、PH患者への運動療法が安全で有効であるがを評価すること。

<目的>
2018年12月までの文献を検索。
このレビューのプライマリーアウトカムは6MWDの変化。
さらに、最大酸素摂取量、安静時肺動脈圧、安静時心拍数、最大運動時心拍数、嫌気性代謝閾値(AT)、最大運動負荷、QOLも評価

<結果>
651人、17文献が対象。
メタアナリシスの結果、6MWD、最大酸素摂取量、最大HR、QOL(SF-36)が著明に改善。
さらに、運動療法によって主な合併症は生じなかった。

<考察>
運動療法は、運動耐容能の改善やQOLの改善と関連していた。
また、安定しているPH患者に安全に行うことができる。
しかし、PH患者の運動療法の効果や安全性を確立するために、さらに大規模な多施設共同研究が必要である。

・対象PHの主な分類はクラス1(48%)とクラス4(24%)
・PHに対する治療を行っており、過去2か月間に入院や薬の変更がない患者(安定の定義)
・運動方法:低負荷の有酸素運動(エルゴメーター、トレッドミル)、呼吸練習、レジスタンストレーニング
・運動強度は多くの研究で最大運動耐容能の60-80%
⇒よく使用されていた運動処方:Mereles D et al .Circulation 2006
・ほとんどの研究が、入院や外来での介入を対象にしている


【6MWD】
3週間の運動療法後に約70m改善
12-15週の運動療法後、約75m改善
A:randam effect analysisの結果
B: 3週間のトレーニング後
C:parallel 介入と介入前後比較の結果

【安静時肺動脈圧】
3週の運動療法後、肺動脈圧の低下(-2.71mmHg)を示した
12-15週の介入でも低下を認めた

【運動の安全性】
490人中、17人でイベントが発生(発生率3.46%)
疾患の進行や右心不全、死亡など重大なイベントは報告されなかった。