2020/08/20

肺高血圧症の運動療法の効果と安全性 systematic review and meta analysis

 Effectiveness and safety of exercise training and rehabilitation in pulmonary hypertension: a systematic review and meta-analysis

J Thorac Dis (IF: 2.046). 2020 May;12(5):2691-2705.



<背景>
肺高血圧(PH)は肺動脈血管抵抗の上昇が特徴の慢性の進行性の疾患で、予後不良であり活動制限を多く生じる。
PHに対して薬物療法の多くが使用されているが、ほとんどの患者が運動耐容能低下とQOL低下を生じている。
運動療法は、運動耐容能とQOLを向上させる可能性があるが、十分な研究がなされていない。
このレビューの目的は、PH患者への運動療法が安全で有効であるがを評価すること。

<目的>
2018年12月までの文献を検索。
このレビューのプライマリーアウトカムは6MWDの変化。
さらに、最大酸素摂取量、安静時肺動脈圧、安静時心拍数、最大運動時心拍数、嫌気性代謝閾値(AT)、最大運動負荷、QOLも評価

<結果>
651人、17文献が対象。
メタアナリシスの結果、6MWD、最大酸素摂取量、最大HR、QOL(SF-36)が著明に改善。
さらに、運動療法によって主な合併症は生じなかった。

<考察>
運動療法は、運動耐容能の改善やQOLの改善と関連していた。
また、安定しているPH患者に安全に行うことができる。
しかし、PH患者の運動療法の効果や安全性を確立するために、さらに大規模な多施設共同研究が必要である。

・対象PHの主な分類はクラス1(48%)とクラス4(24%)
・PHに対する治療を行っており、過去2か月間に入院や薬の変更がない患者(安定の定義)
・運動方法:低負荷の有酸素運動(エルゴメーター、トレッドミル)、呼吸練習、レジスタンストレーニング
・運動強度は多くの研究で最大運動耐容能の60-80%
⇒よく使用されていた運動処方:Mereles D et al .Circulation 2006
・ほとんどの研究が、入院や外来での介入を対象にしている


【6MWD】
3週間の運動療法後に約70m改善
12-15週の運動療法後、約75m改善
A:randam effect analysisの結果
B: 3週間のトレーニング後
C:parallel 介入と介入前後比較の結果

【安静時肺動脈圧】
3週の運動療法後、肺動脈圧の低下(-2.71mmHg)を示した
12-15週の介入でも低下を認めた

【運動の安全性】
490人中、17人でイベントが発生(発生率3.46%)
疾患の進行や右心不全、死亡など重大なイベントは報告されなかった。