2018/07/28

6MWT後SpO2が81%以下となるCOPDは肺高血圧の可能性

Exercise hypoxaemia as a predictor of pulmonary hypertension in COPD patients without severe resting hypoxaemia.

Respirology. 2017 Jan;22(1):120-125.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27471142

<背景>
COPDの肺高血圧は、罹患率と死亡率と関連している。これまでの研究では、安静時低酸素と肺高血圧の関係について示されているが、安静時低酸素血症の無いCOPD患者における、運動時低酸素血症と肺高血圧の関係についてはあまり知られていない。

<方法>
安静時低酸素血症のないCOPD患者を後方視的に収集し、運動時低酸素血症と肺血行動態の関係について評価した。
臨床的特性、肺機能、血ガス、6MWD、6MWT終了時のSpO2を収集した。
相関分析とステップワイズ回帰分析で、平均肺動脈圧(mPAP)の予測値を検討した。

<結果>
84人の患者が対象。平均%FEV1.0 47%。
単変量解析において、平均動脈圧は、年齢 (r = -0.27, P < 0.05)、PaO2(r = -0.24, P < 0.05)、%FVC(r = -0.28, P < 0.05)、%FEV1.0 (r = -0.40, P < 0.001)、FEV1.0% (r = -0.33, P < 0.005)、%DLco (r = -0.40, P < 0.001)、6MWD(r = -0.40, P < 0.001)、6MWT終了時のSpO2 (r = -0.74, P < 0.001)と負の相関を示した。
ステップワイズ回帰分析では、6MWT終了時のSpO2と6MWDはmPAPの独立した予測因子であった。
ROC曲線では、6MWT終了時のSpO2は、AUCは0.896、感度86%、特異度84%でSpO2 81%がカットオフ。(=6MWT終了時のSpO2が81%を下回ると、肺高血圧の可能性が高い)

<考察>
6MWDに加えて、安静時に低酸素血症が無いCOPD患者において、肺高血圧症があるとは運動時低酸素血症を引き起こす。

・肺高血圧は、右心カテーテル検査で安静時肺動脈圧が25mmHg以上で診断される
・公立陶生病院にて右心カテーテルを実施したCOPD患者155人が対象。
・参加基準は安静時低酸素が無い、3か月以内に増悪していない、肺動脈楔入圧が15mmHg未満。
・最終的に84人が参加した
・平均年齢69.9歳、BMI20.3、%FEV1.0 46.9%、6MWD 444m、安静時SpO2 94%、6MWT後SpO2 84.5%
肺動脈圧と6MWT後SpO2

SpO2<81%がmPAP≧25mmHgとなるカットオフ。
感度86%、特異度84%、AUC0.896

2018/07/26

COPD急性増悪中の理学療法(特に抵抗運動)はQOLを改善する

Effects of different physical therapy programs on perceived health status in acute exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease patients: a randomized clinical trial

Disabil Rehabil. 2018 Aug;40(17):2025-2031.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28478693

<目的>
COPD急性増悪患者の健康状態に対して、理学療法介入が影響するかについて評価すること。

<方法>
無作為比較試験。患者は、コントロールグループ(標準的な薬物療法)と、呼吸コントロール+関節可動域グループ、抵抗運動グループに分けられた。
ベースラインと退院時の健康状態はEQ-5Dを使用して評価。
患者の臨床的状態はベースラインで表した。

<結果>
90人の患者が無作為化された。すべてのグループで健康状態は改善した。
コントロールグループと呼吸練習+ROMグループの間において、EQ-5Dの活動、セルフケア、通常の活動の項目とVASが明らかに違いがあった。
コントロールグループと抵抗運動グループの間に、疼痛以外のすべての項目で明かな違いがあった。
最後に、通常ケアとEQ-5Dの不安/抑うつの項目は、呼吸練習+ROMグループと抵抗運動グループの間に明らかな違いがあり、抵抗運動グループの方が明らかな改善を認めた。

<考察>
COPD急性増悪患者の標準的な治療に理学療法を加えることで、標準治療のみと比べて健康状態が明らかに改善した。
入院している患者に理学療法を提供することで、より健康状態の改善をもたらしていた。
短期間の理学療法プログラムを標準治療に加えることは、COPD急性増悪患者の管理を助けることができる。

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短期間でも介入することで、不安や抑うつの予防やQOLの向上に役立つ。
短期間なら、筋トレをしっかりした方が有益?

なぜCOPD患者は外来呼吸リハを継続できないか

Why are COPD patients unable to complete the outpatient pulmonary rehabilitation program?

Chron Respir Dis. 2018 Jan 1

http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1479972318767206

<背景>
この研究の目的は、外来呼吸リハプログラムを完了できなかった患者の背景と臨床特性を比較すること。

<方法>
COPD患者は、2グループに分けられた:プログラムを完了したグループ1と、完了できなかったグループ2。
プログラムを完了できなかった患者には、電話でコンタクトをとり、なぜプログラムへの参加を中止したのかを尋ねた。

<結果>
グループ2では、喫煙している患者の数、ネブライザー、長期間酸素療法、緊急入院、息切れの割合が高かった。
%FEV1.0、運動耐容能、QOLは低かった。
社会背景では、グループ2は教育レベルが低く、独居が多かった。
プログラムを阻害する要因は、モチベーションの欠如(49%)、交通の問題(23.8%)、COPD増悪(18.4%)、仕事による理由(4.8%)、入院(4.1%)

<考察>
喫煙者と重症COPD患者は様々な理由でプログラムを完了することができなかった。特に、モチベーションの欠如は医療従事者にとって特に重要な情報で、ポジティブな姿勢で患者に接していく必要がある。

・トルコのクリニックで8週間の外来呼吸リハが行われた
・参加基準は、安静時の息苦しさがある、もしくは気管支拡張薬を使用している。
・呼吸リハ完了群をグループ1、脱落群をグループ2に分けて、リハ開始時のデーターを比較。

・脱落の基準は、開始時の評価には参加していたが、すべてのプログラムを始められなかった場合、もしくは、3回連続で不参加であった場合
・脱落者には、電話で参加しなかった理由を聴取

呼吸リハに参加しなかった理由。半分近く(49%)がモチベーションの欠如を理由としている。
・今回の対象者では、喫煙者や長期間酸素療法を行っている患者、前年の救急受診があった患者、独居の患者、教育年数が低い患者は、プログラムを完了できない割合が多かった。
・加えて、1秒量と6MWDが低い患者や息切れが強い患者はQOLが低下していた。
・1秒量はリハを完了できた患者で低かったため、肺機能が必ずしも影響するわけではない。
・医師からの前向きな働きかけが、プログラムのコンプライアンスを向上させたという報告もある。

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リハを始める前の評価から、初回運動に至るまでに半分が脱落しているという結果。状態が悪化する前から開始することが必要。
どの疾患でもそうだが、導入がスムーズにいくことが何より大事。
医者の声掛けひとつで患者の行動を変えられるのは、ほかの国でも同じなのかもしれない。

2018/07/19

頭部外傷患者の体位交換とバイタル(SpO2)の変化

The effect of positional changes on oxygenation in patients with head injury in the intensive care unit

J Family Med Prim Care. 2017 Oct-Dec; 6(4): 853–858.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5848412/

<背景>
頭部損傷でフォローしている患者の心肺機能は障害されており、酸素運搬を邪魔している。心肺理学療法は、治療アウトカムの改善と同様に、酸素運搬システムを拡大する。したがって、今回の目的は、ICUでの体位による頭部損傷患者の酸素化レベルを評価すること。

<方法>
30人の頭部損傷患者で、術後ICUにて血行動態的に安定している患者。年齢は15-50歳。
非侵襲的バイタルパラメーター(SpO2、脈拍、呼吸数、血圧)を異なる体位で測定。
体位は、5-15分のインターバルをはさむ。

<結果>
0分ー15分の間、背臥位、右側臥位、左側臥位、リクライニング座位(30°-70°)のすべての体位において、SpO2 が上昇した。
しかしながら、リクライニング座位は、その他の体位と比べて、統計的に有意な改善を認めた。その他のパラメーター(脈拍、呼吸数、血圧)は、それぞれの姿勢が終わる15分までより低い値で安定していた。

<考察>
上体を起こした姿勢は、その他の姿勢と比べて、SpO2が明らかに上昇していた。
その他のバイタルパラメーターは、15分後もより低い値で安定していた。

・4つの姿勢(背臥位、右側臥位、左側臥位、30°-70°リクライニング座位)を選択。開頭術や骨折などの問題がある患者は、45度側臥位で実施。
・それぞれの体位を15分継続。開始時と5分おきに、バイタル測定を実施。
・アウトカム(バイタルの測定項目)は、SpO2、脈拍、呼吸数、血圧

・上体を起こした姿勢が最も、SpO2の改善が良かった
⇒換気メカニクスの改善と換気血流のマッチが要因だろう。

・脈拍は15分後に統計的に有意な差はなかった。
⇒体位変換後1-2分で、血流の調整機能が作用して、5分ほどで自動的に調整が完了した

2018/07/10

肺がん術後の高強度運動療法の効果

High-intensity Training Following Lung Cancer Surgery: A Randomised Controlled Trial

Thorax. 2015;70(3):244-250.

https://thorax.bmj.com/content/70/3/244.long

<背景>
肺がん患者の多くは、身体機能の低下によるデコンディショニングをきたしている。肺切除は身体機能を減少させ、さらに日常生活機能を障害する。

<方法>
単盲検無作為化試験。高強度持久トレーニングと筋力トレーニング(60分、週3回、20週間)、術後5-7週に開始した。
対照群は標準的な術後ケアを実施。
プライマリーアウトカムは疲れるまで歩行したときに直接測定した最大酸素摂取量の変化。その他のアウトカムは、肺機能、筋力(1RM)、総筋肉量、日常身体活動、QOL

<結果>
61人の患者が無作為化され、運動グループは最大酸素摂取量が大きく向上した(両群間の差が3.4 mL/kg/min)。
その他、対照群と比較して、一酸化炭素拡散能(5.2%)、1RM(29.5 kg)、椅子立ち(2.1回)、階段昇降(4.3回)、総筋肉量(1.36kg)の違いが得られた。
QOL(SF-36)の身体サマリースコアは、51.8点vs43.3点 (p=0.006)。精神サマリースコアは、55.5点vs46.6点(p=0.015)

<考察>
最近肺がんの手術をした患者において、高強度の持久力と筋力トレーニングは、耐久性を向上させ、最大酸素摂取量、Tlco、筋力、総筋肉量、身体機能、QOLにおいて、明らかな改善を示した。
この研究は、肺がん術後の運動療法の基本を提供するかもしれない。


・患者選択基準:80歳以下、非小細胞がんを新たに診断。
・評価のタイミングは術前、術後4-6週、20週目
・運動は、患者の自宅から近いフィットネスセンターで実施。
・それぞれの運動セッションは最低60分、週3回、20週間継続。可能であれば、週1時間の運動を実施。
・PTやパーソナルトレーナーが指導して運動を行った。
・プログラムは、個別に設定。ウォームアップ、インターバルトレーニング、漸増抵抗運動、吸気筋トレーニング。
・運動強度は、傾斜付きトレッドミルで最大心拍数の80-95%を目標、筋トレは6-12RM。

・最初の4週は安全に行うことに重きを置いて介入。強度は患者の改善度や息切れや疲労感に合わせて増加した

・化学療法を行っている患者はできる限りの運動を継続した。もし出来なかったら、化学療法終了後から運動を追加した

最大酸素摂取量、1RM、総筋肉量の変化。20週間運動を継続すると明らかな改善があった。