2018/07/10

肺がん術後の高強度運動療法の効果

High-intensity Training Following Lung Cancer Surgery: A Randomised Controlled Trial

Thorax. 2015;70(3):244-250.

https://thorax.bmj.com/content/70/3/244.long

<背景>
肺がん患者の多くは、身体機能の低下によるデコンディショニングをきたしている。肺切除は身体機能を減少させ、さらに日常生活機能を障害する。

<方法>
単盲検無作為化試験。高強度持久トレーニングと筋力トレーニング(60分、週3回、20週間)、術後5-7週に開始した。
対照群は標準的な術後ケアを実施。
プライマリーアウトカムは疲れるまで歩行したときに直接測定した最大酸素摂取量の変化。その他のアウトカムは、肺機能、筋力(1RM)、総筋肉量、日常身体活動、QOL

<結果>
61人の患者が無作為化され、運動グループは最大酸素摂取量が大きく向上した(両群間の差が3.4 mL/kg/min)。
その他、対照群と比較して、一酸化炭素拡散能(5.2%)、1RM(29.5 kg)、椅子立ち(2.1回)、階段昇降(4.3回)、総筋肉量(1.36kg)の違いが得られた。
QOL(SF-36)の身体サマリースコアは、51.8点vs43.3点 (p=0.006)。精神サマリースコアは、55.5点vs46.6点(p=0.015)

<考察>
最近肺がんの手術をした患者において、高強度の持久力と筋力トレーニングは、耐久性を向上させ、最大酸素摂取量、Tlco、筋力、総筋肉量、身体機能、QOLにおいて、明らかな改善を示した。
この研究は、肺がん術後の運動療法の基本を提供するかもしれない。


・患者選択基準:80歳以下、非小細胞がんを新たに診断。
・評価のタイミングは術前、術後4-6週、20週目
・運動は、患者の自宅から近いフィットネスセンターで実施。
・それぞれの運動セッションは最低60分、週3回、20週間継続。可能であれば、週1時間の運動を実施。
・PTやパーソナルトレーナーが指導して運動を行った。
・プログラムは、個別に設定。ウォームアップ、インターバルトレーニング、漸増抵抗運動、吸気筋トレーニング。
・運動強度は、傾斜付きトレッドミルで最大心拍数の80-95%を目標、筋トレは6-12RM。

・最初の4週は安全に行うことに重きを置いて介入。強度は患者の改善度や息切れや疲労感に合わせて増加した

・化学療法を行っている患者はできる限りの運動を継続した。もし出来なかったら、化学療法終了後から運動を追加した

最大酸素摂取量、1RM、総筋肉量の変化。20週間運動を継続すると明らかな改善があった。