2017/12/30

非薬物的な気道クリアランス療法のガイドライン:AARC2013

AARC Clinical Practice Guideline: Effectiveness of Nonpharmacologic Airway Clearance Therapies in Hospitalized Patients

Respir Care. 2013 Dec;58(12):2187-93.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24222709/


気道クリアランス療法は様々な疾患で用いられている。非薬物的気道クリアランス療法が酸素化を改善し、呼吸器装着期間を短縮、ICU在室日数減少、無気肺や合併症の予防、呼吸機序の改善のために、有効かどうかのシステマティックレビューからガイドラインを作成。

入院患者で、嚢胞性肺線維症以外の成人と小児の患者に対して
1)胸部理学療法は、肺合併症の治療にルーチンで用いることは推奨しない
2)気道クリアランス療法は、COPD患者にルーチンで行うことは推奨しない
3)気道クリアランス療法は、分泌物の症状があるCOPD患者や、患者の耐久性、治療の効果を考慮して行うべき
4)気道クリアランス療法は、咳で分泌物の移動が可能な患者には推奨しないが、効果的な咳ができない患者には有用かもしれない。


神経筋疾患患者に対して、呼吸筋弱化や咳の障害がある場合
咳介助は、PCF<270L/minの患者に対して行うべき。胸部理学療法、呼気陽圧、肺内パーカッションベンチレーション、高頻度胸部振動刺激は十分なエビデンスが無い

術後の患者に対して
1)インセンティブスパイロメトリーは、術後患者に予防的にルーチンで行うことは推奨しない。
2)早期離床と歩行は、術後合併症の予防と気道クリアランス確保のために推奨される
3)気道クリアランス療法は、術後ケアにルーチンで行うべきではない。


これらの療法を強く推奨するデザインでの研究がされるべきであり、気道クリアランス療法の高いレベルのエビデンスは欠けている。

2017/12/26

CAT15点以上は増悪リスクの独立した予測因子

Comparison of COPD Assessment Test and Clinical COPD Questionnaire to predict the risk of exacerbation

International Journal of COPD 2018:13 101–107

https://www.dovepress.com/articles.php?article_id=36134

<目的>
ガイドラインは簡単COPD患者の健康状態を評価するツールとして、CATやCCQなどの包括的なツールを推奨している。目的は、CATとCCQの点数とCOPD患者の増悪予測との比較をすること。

<方法>
多施設でのコホート研究。CAT、CCQとその他の臨床的評価の関係を相関分析を用いて分析し、CAT、CCQの増悪への影響をロジスティック回帰分析とROC曲線を用いて分析。

<結果>
121人のCOPD患者が対象。CAT、CCQスコアは、症状、肺機能、運動耐容能と良く相関していた。増悪を経験していない患者で比較すると、増悪を経験している患者の方が、重症の気流制限があり、過去の増悪頻度が高く、より高いCATスコアを呈した。CCQスコアは、増悪とは関係していなかった。
CAT15点以上は、増悪の独立したリスク因子であった。更に、CAT15点以上は、現在ガイドラインで示されている増悪のリスク(CAT10点以上、CCQ1点以上)と比べて、予測可能性が向上していた。

<考察>
CATスコア15点以上は、COPD増悪のリスクを上昇させる。一方、CCQスコアは、増悪のリスクの上昇の根拠とはならなかった。


ーーーーーーーーーーーー
状態を把握して、増悪の兆候を評価するには、CATが有効


2017/12/21

安定期COPDでのネーザルハイフローの使用の効果と安全性について

Efficacy and safety of nasal high-flow oxygen in COPD patients

BMC Pulmonary Medicine (2017) 17:143

https://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12890-017-0486-3

<背景>
ネーザルハイフロー酸素療法(HFOT)は、急性期や慢性期のCOPD患者から行われる新たな治療オプションである。
目的は、高二酸化炭素血症のあるCOPD患者に対して、従来の酸素療法と比べてHFOTの安全性と効果を比較する事。

<方法>
シングルコホート、77人の臨床的に安定しており、長期間酸素療法を行っている高二酸化炭素血症が有るもしくは無い患者に対して、従来の酸素療法とHFOTをそれぞれ60分実施し、それぞれの間には30分のウォッシュアウト期間を設けた。

<結果>
HFOTは全患者に使用できた。HFOTで著明にPaCO2が減少していたおり、両方の方法で、SpO2の上昇、AaDO2の減少が得られた。フローが15L/minで、酸素必要量は、酸素療法よりも少なかった(2.2L/min相当)。
36人の患者においては、HFOT中に、安静時と動作時の肺容量が上昇しなかっただけでなく、残気量が著明に減少していた。

<結論>
短期間のHFOTの使用は、高二酸化炭素血症の有無に関わらず安全であった。呼吸不全において、より低い酸素量で効果があり、高二酸化炭素血症を減少させ、酸素需要量の減少を招いていた。HFOTの安全性、耐久性、臨床的効果について、長期間の研究が求められる。


・酸素療法:0.5L/minから開始し、0.5-1.0L/minずつ上昇。PaO2が60mmHg以上もしくは開始時より10mmHgとなるように必要量を決定していく。必要酸素量を吸入して10分後に血ガス分析を実施
・30分のウォッシュアウトフェーズでは、座位でPaO2が最初の値に戻るまで時間をとる。
・ハイフロー:フロー15L/min、酸素量は0.5L/minから開始し、PaO260mmHg以上もしくは開始時から10mmHg以上の上昇が得られる値を決定。











ーーーーーーーーーーー
安定期でもハイフローを使用すれば、残気量の改善や過膨張が得られるであろうという結果。安定期でも目的がはっきりすれば、使えると思うけど、活動範囲が狭くなるのは気がかり。

2017/12/05

肺線維症患者の身体活動性と活動範囲

Physical activity and activity space in patients with pulmonary fibrosis not prescribed supplemental oxygen

BMC Pulm Med. 2017 Nov 23;17(1):154.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5701349/

<背景>
肺線維症(PF)患者は、QOLが障害され、息切れや身体活動への影響が主な原因と示唆されている。PFの進行によって、何人かの患者は"世界が小さくなる"と感じている。
目的は、活動(身体活動性と活動範囲)を酸素療法が処方されていないPF患者コホートで検討すること。

<方法>
日中の酸素療法が処方されていない患者を2013年から2015年までリクルート。参加者は、質問に答え、連続する7日間加速度計とGPSを装着。

<結果>
194人の患者が対象。内訳は、男性56%、白人95%、特発性肺線維症(IPF)30%、結合組織関連肺線維症31%。
歩行量の中央値7497歩/日。1日の歩数は、症状とQOLのドメインと相関。年齢を補正すsると、BMI、手首に装着した加速度計、%DLCO、疲労感は独立して歩数と関係していた。

<結論>
酸素療法を日中行っていないPF患者は、幅広い活動を行っていた。日々の身体活動性は、QOLに影響していたが、GPSでの活動範囲とは関係していなかった。
装着して得られたデータは、天候との関連や、どのような介入がPF患者の活動に影響するかについて有効かもしれない。

・対象者に加速度計とGPSロガー(logger)を渡して、1週間装着
・質問表は、ADL(UCSD)、SF-36、疲労感(the Fatigue Severity Scale )、咳によるQOLの評価(the Leicester Cough Questionnaire)

・GPSは15秒ごとに位置を記録し、15分以上動きが無ければ記録を止める設定。
A:GPSの記録、B:同じ対象者の標準偏差、C:活動の分布
青は、ベースライン
緑は、酸素療法導入後

加速度計の身体活動時間の記録
・全体の歩数は1日7497歩(中央値)、手首に加速度計を装着した方が、ウエストに装着したよりも歩数が多かった(8238歩vs5357歩)
・ウエストに装着した記録は、中等度以上の身体活動が多かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー
酸素療法は活動範囲を狭めてしまうというのが著明に出ている結果。
加速度計の装着部位で結果が違うので、測定の際には同じ装着場所であることが望ましい。