2024/12/31

低栄養の肺癌周術期患者は、ベースラインの運動能力は低いが、改善は大きい。

Malnourished lung cancer patients have poor baseline functional capacity but show greatest improvements with multimodal prehabilitation

Nutr Clin Pract (IF: 3.08; Q3). 2021 Oct;36(5):1011-1019.


【目的】
がんに対する肺切除術を行う患者における、術前の栄養状態とプレハビリテーションの効果とベースラインの運動耐容能の関連を検討し、栄養状態のある患者の特性について調べること。

【方法】
162例の患者。多次元プレハビリテーションもしくはコントロールにランダムに割り付け解析した。
栄養失調は、the Patient-Generated Subjective Global Assessment (PG-SGA)で評価。
低リスク(PG-SGA 0−3)、中等度リスク(4−8)、高リスク(9以上)
ベースラインの運動耐容能は6MWTで評価し、比較した。
栄養状態と介入による術前6MWD変化の平均をANCOVAで検討。

【結果】
低リスク51.2%、中等度リスク 37.7%、高リスク 11.1%であった。
低リスク患者は、中等度リスク、高リスク患者と比べて、ベースライン6MWDが高かった。
調整された術前6MWDの平均変化は、コントロールと比較して、18.1mvs5.6m。


【考察】
栄養状態の高リスクな肺がん周術期患者は、栄養の低リスク患者と比べて運動耐容能が低かった。
しかし、多次元的なリハビリ介入によっての改善著明であった。

2024/12/19

大腸がん術前身体活動と術後回復の関係について

Is preoperative physical activity related to post-surgery recovery?—a cohort study of colorectal cancer patients

International Journal of Colorectal Disease 2016


【背景】
術後経過を向上させるために、術前身体活動(PA)の役割についての関心は高まっている。
大腸がん後の改善における術前PAの短期的な影響については明らかになっていない。
この研究の目的は、大腸がんによる手術後の回復と術前PAレベルの関連について検討すること。

【方法】
予定手術を行なった大腸がん患者患者115例を対象とした前向き観察研究。
患者報告型の術前PAレベルと各評価の回復について比較した。

【結果】
通常の術前PAは手術3週後に身体的により良く回復したと感じる確率が高いことと関連していた。(相対確率 3.3 p=0.038)不活動と比較した場合。
入院日数、精神的な回復、再入院や再手術とは統計的な関連を認めなかった。

【考察】
臨床的には、患者のPAレベルを評価することは、大腸がんの手術を行なった後の経過を予測するツールとして有用かもしれない。
今回の研究デザインでは、因果関係までは明らかにできていない。
従前PAレベルが高いことは、術後に身体的な回復をより早く実感できることと関連していた。
PAは入院日数やその他の副次アウトカムとの関連は認めなかった。
術前PAを評価することは、予測のために必要かもしれない。
もし、計画的な術前後の身体トレーニングが回復を促進するのであれば、ランダム化比較試験を行うことが必要である。

2024/12/18

姿勢制御トレーニングで横隔膜の動きが改善

Effects of dynamic core-postural chain stabilization on diaphragm movement, abdominal muscle thickness, and postural control in patients with subacute stroke: A randomized control trial

NeuroRehabilitation (IF: 2.14; Q4). 2020;46(3):381-389.


【背景】
神経発達治療(Neurodevelopmental treatment (NDT))と動的神経安定Dynamic neuromuscular stabilization (DNS)を基にした運動は、脳卒中患者の体幹安定性向上と姿勢制御に有効である。

【目的】
脳卒中患者に対して、DNSと従来のNDTを横隔膜の動き、体幹筋厚、姿勢制御への影響を比較すること。

【方法】
対象者をランダムにDNS(N=16)とNDT(N=15)に分けた。
それぞれを1日30分、週3日を4週間実施
横隔膜の動きと体幹筋の厚みは超音波を使用して計測。
体幹障害スケールThe trunk impairment scale (TIS)とBBSで姿勢制御について計測。
The functional ambulation category (FAC)を歩行能力として計測。
共分散分析(ANCOVA)にて、DNSとNDTを行なった後の評価結果の変化を比較。

【結果】
ANCOVAでは、DNSの方が横隔膜の動き、体幹筋厚(腹横筋、内腹斜筋)において優れていることが明らかとなり、BBSとFACも同様に結果であった。

【考察】
DNSトレーニングの方が、体幹動作の制御と歩行能力、バランス、横隔膜可動性の向上に有効であることを示唆した。

2024/12/16

COVID-19感染後の息切れに横隔膜筋力低下が関連するかもしれない

Diaphragm Muscle Weakness Might Explain Exertional Dyspnea 15 Months after Hospitalization for COVID-19

Am J Respir Crit Care Med. 2023 Jan 3;207(8):1012–1021. 


【背景】
循環機能、呼吸機能が正常にも関わらず、急性COVID-19感染後の息切れ症状はしばしば持続している。
目的は、COVID-19感染後の横隔膜筋力と動作時息切れとの関連について検討すること。

【方法】
50人のCOVID-19で入院したことのある患者が対象(女性14例、年齢58歳)
人工呼吸器装着やICU以外での治療を行なった患者を含む。
評価は、呼吸機能、6MWT、心エコー、横隔膜神経根の頸部磁気刺激後のけいれん経横隔膜圧、横隔膜エコー
横隔膜機能は、健常コントロールグループと比較

【結果】
退院15ヶ月後の中等度から重度の息切れを感じている患者は、2/3に及んでいた。
肺機能や心エコーで異常は認めなかった。
横隔膜圧は健常者と比べて、COVIDで入院したことのある患者の方が障害されており、疾患重症度とは独立していた。
横隔膜圧と動作時息切れの重症度は関連を認めた(p=0.03)。

【考察】
横隔膜筋力は、人工呼吸器を必要としないCOVIDで入院した患者において、15ヶ月経過しても残存していた。
この筋力低下は動作時息切れと関連していた。
この研究では、心機能や肺機能が正常なCOVID19後の患者における息切れの症状と横隔膜筋力低下が関連していたことを示した。

2024/12/11

ILDにおける横隔膜機能障害の有病率-超音波を使用-

Prevalence of diaphragm dysfunction in patients with interstitial lung disease (ILD): The role of diaphragmatic ultrasound

Respir Med (IF: 3.42; Q2). 2023 Sep:216:107293. 


【背景】
横隔膜超音波は重症患者において広く用いられているが、ILDの外来患者のデータは限られている。
IPFや膠原病関連ILD患者の超音波で評価した横隔膜機能は、健常者と比べて障害されていると仮説を立てた。
さらに、この機能障害は臨床的、機能的パラメーターに影響するとも考えられた。

【方法】
CTD-ILD患者とIPF患者をリクルート。
横隔膜変位(DD)、吸気時の厚み(Ti)、呼気時の厚み(Te)、thickening fraction(吸気時の厚みの変化? TF)、呼吸機能パラメーターを測定。
横隔膜機能障害(TF<30%)の有病率を記録した。

【結果】
82例(CTD-ILD41例、IPF41例)と年齢、性別をマッチさせた健常者が対象。
82例中24例(29%)が横隔膜機能障害を有していた。
CTD-ILDにおいて、DDとTiはIPFと比べて低かった(p = 0.021 and p = 0.036)
横隔膜機能障害は健常者と比べても有病率は高かった(37% vs 7%, p = 0.043)。
TFはCTD-ILDグループにおいて、呼吸機能と正の相関を認めたが、IPFでは見られなかった。
横隔膜機能障害は、CTD-ILDとIPFにおいて、中等度から重度の息切れと関連していた(p = 0.021).

【考察】
ILD患者の29%が横隔膜機能障害を有しており、中等度から重度の息切れと関連していた。
CTD-ILD患者は、IPF患者と比べてDDがより低く、健常者と比べて横隔膜機能障害の有病率は高かった。
TFは、CTD-ILDにおいてのみ肺機能と関連しており、包括的な患者評価において潜在的役割がある可能性を示唆した。