2024/08/05

日本のPICSの有病率 J-PICS study

Prevalence of post-intensive care syndrome among Japanese intensive care unit patients: a prospective, multicenter, observational J-PICS study

Crit Care (IF: 9.1; Q1). 2021 Feb 16;25(1):69.


【背景】
多くの研究で、集中治療後症候群(PICS)患者のQOLが比較されている。
多くの研究で、SF-36が健康状態の指標として用いられているが、ICU入室前後でのSF-36のデータは無い。
このように、SF-36の臨床的に有効な改善値は知られていない。
したがって、ICU入室後6カ月でのPICS障害の併発頻度について検討した。
また、SF-36のサブスケールの変化と患者自身の障害の主観的な重要性についての解釈も行った。

【方法】
前向き、多施設、観察コホート研究。
日本の14の病院における16のICUにて実施。
成人ICU患者で、48時間以上の人工呼吸管理を行った患者が対象で、質問表を用いて6ヶ月後の状態を評価した。
PICSの定義は、身体機能を基に、SF-36の身体のスコア(PCS)が10点以上の変化、精神状態はSF-36のメンタルスコア(MCS)10点以上の変化とした。
認知機能は、Short-Memory Questionnaire (SMQ) scoreを用いて、6カ月時点で40未満を認知機能障害と定義。
多変量ロジスティック回帰モデルで、PICS発生と関連する因子を同定した。
患者の主観的な身体機能と精神機能の症状は、7段階のスケールで評価した。

【結果】
192人の患者、6ヶ月後に48人(25%)が死亡。
6ヶ月後に生存していた患者で、96人から回答を得た。
1項目以上のPICS障害は61人(63.5%)、2項目以上のPICSは17人(17.8%)
各機能障害の割合
 身体機能 32.3%
 精神機能 14.6%
 認知機能 37.5%
義務教育のみが、PICS発症と関連していた(OR 4.0、CI 1.1-18.8)
PCSのMCIDは6.5
MCSのMCIDは8.0

【考察】
人工呼吸管理から生存した患者のうち、64%が6ヶ月後のPICSとなっていた。PICSの併発は20%で生じていた。
PICSは義務教育のみを受けた集団と関連していた。
今後、ICU患者のSF-36のMCIDについての検討が必要であり、PICSの定義の標準化が必要である。