2024/08/22

肺癌術前の運動耐容能、筋力、息切れ、QOL

Exercise capacity, muscle strength, dyspnea, physical activity, and quality of life in preoperative patients with lung cancer

Turk J Med Sci (IF: 0.97; Q4). 2021 Oct;51(5):2621-2630.


【背景】
肺癌手術待機患者において、どの身体的機能障害が生じているのかを検討するために、運動耐容能、筋力、身体活動、息切れ、QOLを健常者と比較した。

【方法】
肺がん患者(n=26)と健常者(n=21)を比較
運動耐容能(6MWT)、呼吸筋力(最大吸気圧、最大呼気圧)、大腿四頭筋力(ハンドヘルドダイナモメーター)、身体活動(metabolic holter device)、息切れ(mMRC)、QOL(EORTC-QOL-C30)
を評価。

【結果】
6MWD(平均誤差:78.97m)、%MIP、%MEP、身体活動(エネルギー消費、身体活動時間、平均METs、歩数)、QOLサブスコア(機能、社会機能、全般的健康状態)は、健常者よりも有意に低かった(p<0.05)。
大腿四頭筋力は著明な違いは無かった。
16人の患者(66.7%)は座りがちな生活であった。

【考察】
運動耐容能、呼吸筋力、身体活動レベル、QOLは著しく低下しており、術前患者では明らかに息切れが生じていた。
したがって、患者は、早期に予防的リハビリプログラムに参加し、肺手術前に、有酸素運動、呼吸筋トレーニング、身体活動カウンセリングを行うべきである。

2024/08/08

ハイフローネーザルカニューラにサージカルマスクを装着すると酸素化が改善 -COVID19-

Surgical mask on top of high-flow nasal cannula improves oxygenation in critically ill COVID-19 patients with hypoxemic respiratory failure

Ann Intensive Care (IF: 6.92; Q1). 2020 Sep 29;10(1):125.


【目的】
COVID19感染症によりICUに入院した患者は、重度の低酸素性呼吸不全を示す。
敗血症生存キャンペーン(The Surviving Sepsis Campaign)は、非侵襲的換気によるハイフローネーザルカニューラによる酸素化を推奨している。
この研究のプライマリーアウトカムは、挿管を必要としないICUに入院した低酸素のあるCOVID19における、ハイフローとサージカルマスクを装着することの効果について検討すること。
セカンダリーアウトカムは、臨床的改善に伴うPaCO2の変化と患者の感覚。

【方法】
FiO2は変えずに、サージカルマスクを装着することで、
PaO2は59→79mmHg
P/F ratioは83→111
SpO2は91→94%
へそれぞれ上昇した。(いずれもp<0.001)
サージカルマスクを外すと、装着前の値に戻ったため、自然回復ではなく、マスクの効果であることが証明された。

【考察】
ハイフローで治療している患者にサージカルマスクを装着することで、臨床的な副作用なく、ICUに入院した重度の呼吸不全患者の酸素化を改善することが出来た。

2024/08/05

日本のPICSの有病率 J-PICS study

Prevalence of post-intensive care syndrome among Japanese intensive care unit patients: a prospective, multicenter, observational J-PICS study

Crit Care (IF: 9.1; Q1). 2021 Feb 16;25(1):69.


【背景】
多くの研究で、集中治療後症候群(PICS)患者のQOLが比較されている。
多くの研究で、SF-36が健康状態の指標として用いられているが、ICU入室前後でのSF-36のデータは無い。
このように、SF-36の臨床的に有効な改善値は知られていない。
したがって、ICU入室後6カ月でのPICS障害の併発頻度について検討した。
また、SF-36のサブスケールの変化と患者自身の障害の主観的な重要性についての解釈も行った。

【方法】
前向き、多施設、観察コホート研究。
日本の14の病院における16のICUにて実施。
成人ICU患者で、48時間以上の人工呼吸管理を行った患者が対象で、質問表を用いて6ヶ月後の状態を評価した。
PICSの定義は、身体機能を基に、SF-36の身体のスコア(PCS)が10点以上の変化、精神状態はSF-36のメンタルスコア(MCS)10点以上の変化とした。
認知機能は、Short-Memory Questionnaire (SMQ) scoreを用いて、6カ月時点で40未満を認知機能障害と定義。
多変量ロジスティック回帰モデルで、PICS発生と関連する因子を同定した。
患者の主観的な身体機能と精神機能の症状は、7段階のスケールで評価した。

【結果】
192人の患者、6ヶ月後に48人(25%)が死亡。
6ヶ月後に生存していた患者で、96人から回答を得た。
1項目以上のPICS障害は61人(63.5%)、2項目以上のPICSは17人(17.8%)
各機能障害の割合
 身体機能 32.3%
 精神機能 14.6%
 認知機能 37.5%
義務教育のみが、PICS発症と関連していた(OR 4.0、CI 1.1-18.8)
PCSのMCIDは6.5
MCSのMCIDは8.0

【考察】
人工呼吸管理から生存した患者のうち、64%が6ヶ月後のPICSとなっていた。PICSの併発は20%で生じていた。
PICSは義務教育のみを受けた集団と関連していた。
今後、ICU患者のSF-36のMCIDについての検討が必要であり、PICSの定義の標準化が必要である。

COPD増悪フォロー中の早期からの監視下呼吸リハは死亡率が低い

Lower mortality after early supervised pulmonary rehabilitation following COPD-exacerbations: a systematic review and meta-analysis

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2018 Sep 15;18(1):154.
 

【背景】
呼吸リハ(PR)は、運動を含め多面的な監視下でのプログラムが行われ、COPD管理の重要なもののひとつである。
このシステマティックレビューとメタアナリシスでは、COPD増悪で入院した後の4週間以内に開始した監視下でのPRプログラムが、通常の増悪御ケアと比べて死亡率への影響を調査した。
副次アウトカムは、入院日数、COPD関連の再入院、HR-QOL、運動耐容能(歩行距離)、ADL、転倒リスク、ドロップアウト率。

【方法】
2017年にリサーチしたシステマティックレビューである。

【結果】
13件のランダム化試験(801名)が包含された。
メタアナリシスの結果、早期PRの方が、死亡率が相対的に低く、フォローアップ期間が有意に長かった。
早期PRは、入院日数を2.27日に減少させ、再入院率も減少。
さらに、早期PRは、HR-QOLと歩行距離を改善させ、ドロップアウト率には影響しなかった。
いくつかの研究で、不確実なバイアスリスクがあった。

【考察】
COPD増悪で入院した患者に対して、早期PR後の再入院数と入院日数、死亡率の減少に対して中等度のエビデンスが示された。
死亡率の長期的なエビデンスは十分ではないが、HRQOLと運動耐容能は、少なくとも12カ月は維持されていた。
したがって、COPD増悪入院した患者に対して、監視下のPRを早期に行うことを推奨する。
PRは、入院中もしくは退院後4週間後に開始すべきである。