2024/02/22

肺がん化学療法入院と身体不活動、悪液質の影響。

Impact of Cancer Cachexia on Hospitalization-associated Physical Inactivity in Elderly Patients with Advanced Non-small-cell Lung Cancer

Asia Pac J Oncol Nurs (IF: 2.51; Q1). 2018 Oct-Dec;5(4):377-382.


【目的】
急性疾患でわずか1週間入院した高齢患者において、機能障害が新たに生じたり悪化する。
がん悪液質のある高齢がん患者は、機能障害を生じやすい。
この研究の目的は、化学療法で入院した高齢がん患者の身体活動(PA)を測定し、入院と悪液質の影響を調べる事。

【方法】
70歳以上の非小細胞肺がん患者、初回化学療法で入院した18例。
PAはライフコーダを使用。
ベースライン、入院中、退院後毎週(1,2,3週)の歩数を比較。

【結果】
計30回の化学療法による入院で評価。
平均年齢74.5歳
ベースラインの歩数は中央値3756歩
15例は、入院中に歩数が減少し、退院後1週間でベースラインまで回復していなかった。
8日以上の長期入院と悪液質の罹患は、身体不活動の持続と関連していた。
1人の患者は、入院後30日以内に機能障害が進行した。

【考察】
身体不活動は化学療法で入院した非小細胞肺がん患者によくみられる。
長期入院と悪液質の存在は、身体不活動からの回復が遅い要因となっていた。
患者の年齢やがん悪液質の存在を考慮し、個別に入院計画を慎重に検討し、身体不活動や機能障害を予防する必要がある。

2024/02/15

PS良好肺がん患者の握力低下と全身炎症の合併は予後不良

Handgrip weakness, systemic inflammation indicators, and overall survival in lung cancer patients with well performance status: A large multicenter observational study

 Cancer Med (IF: 4.45; Q2). 2023 Feb;12(3):2818-2830.


【背景】
全身炎症と握力低下は多くのがんにおいて死亡率を予測する。
本研究の目的は、炎症指標と握力低下の共存が、PS良好な肺がん患者の生存率と関連しているかを評価した。

【方法】
握力と4つの炎症指標のカットオフ値は、Maxstatを用いて計算した。
時間依存ROC曲線とC-ondexを、肺がん患者の生存率を予測する最適な炎症指標を選択するために使用した。
Cox比例ハザード回帰モデルで、死亡率のHRを算出。
カプランマイヤー曲線にて、肺がん患者の生存と指標の関連を評価した

【結果】
1951例の患者、平均年齢60.6歳、66.6%男性
PS良好な肺がん患者の死亡リスク増加と関連していたのは、
握力低下(HR1.49)
advanced lung cancer inflammation index (ALI)が低い(HR2.05)
systemic immune-inflammation index (SII)が高い(HR1.91)
血小板:リンパ球比(PLR)が高い(HR1.60)
好中球:リンパ球比(NLR)が高い(HR2.01)

ALIは、他の3つの複合指標よりも、肺がん患者の生存を予測し、C-indexが良好であった(0.624)
握力低下とALIの共存は、肺がん患者の死亡リスクを2倍にした(HR2.44)

【考察】
PS良好な肺がん患者において、握力低下とALI低下があると予後不良であった

advanced lung cancer inflammation index (ALI)
肺がん予後予測指標の一つ。
BMI×アルブミン/NLRで算出。
参考↓

非小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤と プラチナ ...

http://www.haigan.gr.jp › journal › full

肺がん術前ホームエクササイズ指導は、術後QOL低下を防ぐ

Effect of Preoperative Home-Based Exercise Training on Quality of Life After Lung Cancer Surgery: A Multicenter Randomized Controlled Trial

Ann Surg Oncol (IF: 5.34; Q2). 2024 Feb;31(2):847-859.


【背景】
術前運動療法は、肺がん術後の離床的アウトカムを改善させるために推奨される。
しかし、術後QOL低下を予防するかについては知られていない。
本研究は、術前ホームエクササイズが術後QOLに及ぼす影響について検討した。

【方法】
待機的肺がん切除術を予定している患者をランダムにホームエクササイズとコントロールに分けた。
ホームエクササイズは、有酸素運動とレジスタンストレーニングを組み合わせて、毎週電話でフォローした。
プライマリーアウトカムは、術前と術後1ヶ月に、EROTC-QLQ-C30(the European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire C30 )で評価したQOL。
セカンダリーアウトカムは入院日数、身体パフォーマンス
主な解析は、要因反復測定分散分析(factorial repeated-measures analysis of variance)。
加えて、ベースラインと術後評価にて、臨床的な悪化を経験した患者の割合とした。

【結果】
41人の患者がintention to treat 解析の対象(68.1歳)
全体的なQoLに関して、有意なグループ×時間の相互作用が観察された(p=0.004)
術前後のグループ間において、全体的なQOLは統計的、臨床的な有意差を認めた。(術前後ともホームエクササイズを行った方がQOLが良好であった)
全体的なQOLの悪化を経験した患者の割合は、コントロールで71.4%、ホームエクササイズで30%(p=0.003)
ホームエクササイズにおいて、疼痛や食欲低下が少なく、身体的、感情的な機能と同様であった(p<0.05)。
コントロールと比べ、ホームエクササイズは術前の5回起立と術後運動耐容能が改善していた。
その他のセカンダリーアウトカムはグループ間で有意差を認めなかった。

【考察】
ホームエクササイズは、術後QOL低下を予防する効果がある。

2024/02/07

IPF急性増悪の予後と関連する因子

Prognostic factors associated with mortality in acute exacerbations of idiopathic pulmonary fibrosis: A systematic review and meta-analysis

Respiratory Medicine Volume 222, February 2024


【背景】
IPF急性増悪は、死亡リスクを増加させるが、どの因子が死亡率を増加させるのかは知られていない。
目的は、IPF急性増悪(AE-IPF)の死亡と関連する因子をレビューすること。

【方法】
AE-IPFと予後因子の関連を報告した論文を対象。
バイアスリスクをQUIPSで評価。

【結果】
35の論文が対象。
ベースラインでの長期酸素療法(aHR2.52)、IPF以外のILDと比べIPFと診断されていること(aHR2.19)がAE-IPFでの死亡リスクが高かった。
HRCT上の拡散パターンは、非拡散パターンと比べ、AE-IPFの高い死亡リスクと関連していた(aHR2.61)。
入院前にコルチコステロイドを使用していること(aHR2.19)、増悪時期の気管支肺胞洗浄(BAL)にて好中球の増加(aHR1.02)は、高い死亡リスクと関連していた。

【解釈】
この結果は、医療者の意思決定や患者の臨床経過を予測するための意味合いを持ち、研究者は、経過を改善するための介入をデザインしたり、ガイドライン作成者は資源の配分についての意思決定をサポートする。