2023/06/10

肝・膵・胆管の悪性腫瘍の術後合併症予防のために必要な歩数は?

How Many Steps Per Day are Necessary to Prevent Postoperative Complications Following Hepato-Pancreato-Biliary Surgeries for Malignancy?

Ann Surg Oncol (IF: 5.34; Q2). 2020 May;27(5):1387-1397.


【目的】
肝臓・膵臓・胆管(HPB)悪性腫瘍の手術を行った患者の、術前平均身体活動と術後アウトカムの関係について検討した。

【方法】
HPB悪性腫瘍に対して予定開腹手術(肝臓大切除術、膵頭十二指腸切除術、肝膵頭十二指腸切除術)を行った患者が対象。
平均歩数は加速度計で記録し、それぞれの患者の術前待期期間で計算。
身体活動レベルは、平均歩数が少ない(1日5000歩未満)と多い(1日5000歩以上)で層別化。

【結果】
対象になった105名の患者のうち、78人が適格基準を満たした。
歩数の中央値は6174歩。48人(62%)が良好な身体活動、30人(38%)が少ない身体活動。
身体活動が少ない患者は、Clavien grade3以上の合併症の割合が多く(63% vs. 35%, p = 0.016)、感染症の合併が多く(53% vs. 23%, p = 0.006)、術後入院日数が長かった30 vs. 21 days, p < 0.001)。
多変量解析にて、身体活動が少ないと、主な合併症の発症(odds ratio, 2.842, p = 0.042)と感染症発生(odds ratio, 3.844, p = 0.007)の独立したリスク因子であった。

【考察】
術前身体活動レベルが、HPB悪性腫瘍の手術における術後合併症の発生と関連していたことを示した。

2023/06/08

胃がん術前の栄養と運動介入は、術後アウトカムに影響

Preoperative nutrition and exercise intervention in frailty patients with gastric cancer undergoing gastrectomy

Int J Clin Oncol (IF: 3.4; Q3)2022 Sep;27(9):1421-1427.


【背景】
フレイルは、術後アウトカム不良と関連しており、いくつかのがんにおいて不良な予後とも関連している。
目的は、栄養と運動介入(nutrition and exercise intervention (NEI))を行ったいフレイルな胃がん患者における有効性を検討すること。

【方法】
58例の根治手術を行ったフレイルな胃がん患者。
15例はNEIを栄養とリハビリのサポートチームによって実施。
NEIと非NEIで手術アウトカムを比較し、栄養とリハビリの指標をNEI前とNEI後で比較。

【結果】
NEIグループの術後合併症は、6.7%であり、非NEIよりも有意に少なかった(p.08)
NEIグループの平均在院日数は、13.0±1.0日であり、非NEIグループよりも有意に短かった(p=.03)
末梢好中球/リンパ球比(NLR)は、NEI前で4.3±0.6で、NEI介入前後で著明に改善した。

【考察】
NEIがフレイルな胃がん患者において手術アウトカムに、臨床的な効果をもたらした。
今回の結果が、フレイル患者における最適治療戦略の選択やフレイル管理において臨床的に有意な影響がある可能性を示した。

2023/06/06

直腸がん患者:体組成、身体活動、エネルギー推奨量との関連

colorectal cancer: associations with body composition, physical activity, and energy recommendations

Am J Clin Nutr (IF: 7.04; Q1). 2019 Aug 1;110(2):367-376.


【背景】
早期がん患者の総エネルギー消費量(TEE)データは、少なく、エネルギー摂取量の理解を妨げている。

【目的】
横断的に直腸がん患者(CRC)のTEEの特徴を調査し、エネルギー推奨量と比較した。
TEEは、体組成、身体活動レベル(PAL)によって異なり、現在のエネルギー推奨量は、個別のレベルによっては不足していると仮設した。

【方法】
新たにCRCと診断され、安静時エネルギー消費量(REE)を間接熱量計で評価し、二重標識水によるTEEと比較した。
※二重標識水:エネルギー消費量を正確に測定できる方法。安定同位体で標識された水を摂取したのちに尿中の安定同位体比の変化を測定し、エネルギー推奨量を算出する。通常の生活条件でのエネルギー消費量を測定できるが、高価で測定分析に技術を要す。

代謝亢進症は、予測値の110%以上のTEEと定義。
体組成はDXAで評価。
身体活動は、TEEとREEの比と残存活動エネルギー量(RAEE)で算出。
TEEは25-30kcal/dayのエネルギー消費と比較して、食事摂取基準(DRIs)をブランドアルトマンプロットで解析。
患者は、中央値BMI、PAL、性別、除脂肪体重との関連で層別化。

【結果】
21人の患者が参加(男性14名、BMI28.3、年齢57歳)。
stage1-2が最も多く(n=20)、stage4が1例。
半分(n=11)は代謝亢進していた:TEEは代謝亢進で違いは無く、対標準予測としてのREEはTEEと関連していなかった。
平均TEEは2473±499kcal/day、もしくは29.7kcal/kg。
平均PALは1.43±0.27。
TEEから推測した総エネルギー摂取推奨量は、25kcal/kg。
総エネルギー推奨量は、同意が得られにくい。
高BMI、FM:FMMはキログラムやkcalを使用した総消費量とは異なっていた。

【考察】
TEE予測値は、総エネルギー推奨量を反映していない。
誤差は、体格、体組成、身体活動と関連している。