2023/03/31

COPD患者が横断歩道を安全に渡れるにはどのくらい時間が必要? research letter

Gait speed and pedestrian crossings in COPD

Thorax (IF: 9.14; Q1). 2018 Feb;73(2):191-192.


横断歩道を渡れると想定される最低速度は1.2m/s。
この前向きコホート研究では、4m歩行速度を926人の地域在住高齢者と安定期COPD患者で測定。
平均歩行速度(SD)は、0.91(0.24)m/sであり、1.2m/s以上の速度で歩けていたのは10.7%のみ。
このコホートの95%が横断歩道を安全に歩けるためには、信号機は最低歩行速度を0.5m/sと想定する必要がある(現在より2.4倍長い)
現在の横断歩道を渡るための通常歩行速度はCOPD患者にとっては不適合である。

2023/03/30

退院時4m歩行速度はその後の再入院率、死亡率を予測する。

Gait speed and adverse outcomes following hospitalised exacerbation of COPD

Eur Respir J (IF: 16.67; Q1). 2021 Nov 11;58(5):2004047.


【背景】
4m歩行速度(4MGS)は簡単な身体パフォーマンス評価であり、フレイルの代理マーカーでもあり、高齢者の有害事象と関連している。
4MGSの活動評価が、COPD急性増悪(AECOPD)で入院した患者の予測位因子となるかを検討した。

【方法】
213人のAECOPDで入院した患者が対象(52%男性、平均年齢72歳、%FEV1.0 35%)。
4MGSとベースライン背景は退院時に記録。
全理由による再入院と死亡率を退院1年後に収集し、多変量Cox比例ハザード回帰にて検定。
カプラン-マイヤーと競合リスク分析を使用して、四分位に分けた4MGSで再入院リスクと死亡率を比較。

【結果】
111人(52%)が再入院、35人(16%)は死亡していた。
4MGSは全理由による再入院と関連しており、調整済み下位分布のハザード比は0.1m/s早くなるごとに0.868 (95% CI 0.797-0.945; p=0.001)。死亡リスクはは、0.1m/s早くなるごとに0.747 (95% CI 0.622-0.898; p=0.002)
4MGSを加えた再入院と死亡率モデルは 年齢や%FEV1.0単独よりも高い識別性を示し、それぞれのAUCは、0.73、0.80であった。
カプラン-マイヤーと競合するリスクカーブは、より遅い四分位では、再入院と死亡までの時間を短縮させた(log-rank, both p<0.001).

【考察】
4MGSは退院時COPD患者のリスクを簡便に示した。
退院後のケアやサポート計画に有益な情報を提供する。

・イギリスのコホート研究
・35歳以上のCOPD増悪入院で、退院時にリクルート(介助なしに5m歩行可能)

・退院前24時間以内に評価。
・評価項目:4MGS、喫煙歴、BMI、FEV1.0、自己申告の前年の入院歴、入院日数、MRC息切れスコア、併存症(CCI)、 the DECAF Score、SGRQ、ADL(KatzIndex)、自己記入の身体活動(modified Minnesota Leisure-time Physical Activity Questionnaires)、呼吸リハの参加歴

・退院後12ヶ月フォロー

・再入院:患者からの報告やデータベース、開業医の記録から収集

~考察~
・4MGSが予測因子となった理由
→歩行速度が、フレイルやサルコペニアの代理(surrogate)マーカーである。
→4MGSは、健康関連QOLや運動耐容能、死亡率と関連しているとの過去の報告あり。

・臨床的意義
4MGSでCOPD患者を層別化でき、治療選択や退院後のケア(社会的支援、緩和ケア等)を考慮する際に有効
4MGSが遅い患者グループは、退院後呼吸リハを受ける必要がある。

2023/03/28

COPD増悪後入院中の筋力が30日後の6MDと関連。

Respiratory and peripheral muscle strength influence recovery of exercise capacity after severe exacerbation of COPD? An observational prospective cohort study

Heart Lung (IF: 2.21; Q4). 2023 Mar-Apr;58:91-97.


【背景】
COPD急性増悪患者(AECOPD)は運動耐容能が低下しており、数か月持続するかもしれない。
筋力と運動耐容能の回復の関連についてあまり知られていない。

【目的】
ARCOPDにて入院した患者において、呼吸筋力と骨格筋力が運動耐容能の回復に影響するのかを評価する事。

【方法】
27人のAECOPD患者(年齢69±7歳、56%男性)が対象。
入院後24-72時間の状態を評価。
1)呼吸筋力:最大吸気圧と最大呼気圧
2)骨格筋力:握力と大腿四頭筋力
3)運動耐容能:6MWT
6MWTは30日後に再評価し、運動耐容能の回復とした。

【結果】
30日後、患者の63%が6MWDのMCIDを達成(30m以上の改善)。
37%は変化なし(30m未満の改善)。
入院中、非回復グループは、大腿四頭筋力が弱かった(vs回復グループ。15 ± 5 vs. 22 ± 6
、P = 0.006)
MIP、MEP、握力は明らかな違いはなかった。
大腿四頭筋力のみ、運動耐容能回復と関連していた (r = 0.56; P = 0.003)。

【考察】
入院中の大腿四頭筋力が弱いAECOPD患者は、30日後の運動耐容能改善が乏しかった。
早期リハビリにて大腿四頭筋力を改善することが重要であり、AECOPD後の回復を促進させることを示唆した。

2023/03/22

運動時酸素吸入は、下肢疲労感、筋出力低下を抑制する。

Oxygen supplementation during exercise improves leg muscle fatigue in chronic fibrotic interstitial lung disease

Thorax (IF: 9.14; Q1). 2021 Jul;76(7):672-680.


【背景】
運動時低酸素血症は、慢性線維性間質性肺疾患(f-ILD)の特徴である。
重度の低酸素血症が運動筋の疲労を増大させるかについて明らかになっておらず、仮にそうであれば、動作時に酸素療法を行うことはこられの問題を解決させるかもしれない。

【方法】
16人の患者(12人男性、9人IPF)を定常負荷サイクルテスト(最大負荷の60%)を症候限界まで実施(Tlim)。
15人の年齢、性別をマッチさせたコントロールグループでTlimを計測。
患者は、繰り返して、同様の時間をO2(42%±7%)使用して実施。
近赤外分光法で外側広筋の酸化ヘモグロビン(HbO2)を評価。
運動前と運動後の筋力の変化(ΔTw)を大腿神経磁気刺激で筋疲労を定量化した。

【結果】
患者は重度の低酸素血症を示し(最低SpO2 80%)、これはコントロールグループと比べて、酸化ヘモグロビンの緩やかな増加と関連していた(+1.3±0.3 µmol vs +4.4±0.4 µmol, respectively; p<0.001)
コントロールグループの運動負荷よりも1/3以上低いにもかかわらず、ΔTwは患者で大きかった。
ΔTwは患者でより大きかった。
O2吸入は動作時低酸素血症からの回復、酸化ヘモグロビンの増加と関連しており、ΔTwの低下を抑制していた(酸素使用した方が筋出力低下を抑制していた)。
酸素吸入は、下肢疲労感を改善させた(p=.005)。

【考察】
運動中の酸素療法は、f-ILD患者の下肢筋の酸素化と疲労感を改善させた。
運動耐容能を向上させるために、末梢筋の疲労を軽減させることは、治療目標として無視されており、この患者グループにおいては、注意すべきである。

2023/03/21

術前QOLが低いと術後入院日数長い

Poor preoperative quality of life predicts prolonged hospital stay after VATS lobectomy for lung cancer

 Eur J Cardiothorac Surg. 2021.


【目的】
VATSにて葉切除を行った肺がん患者のQOLが入院日数(LOS)と関連しているか検証すること。

【方法】
単施設後方視研究。250例が対象。
233例が葉切除、17例が区域切除。
QOL評価は、 European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-C30 questionnaire.を使用。
単変量もしくは多変量解析を用いて、QOLとLOSの関連についてベースラインや手術パラメーターと比較。

【結果】
30日以内の呼吸循環合併症、死亡率は22%、2.4%
LOSの中央値は4日(IQR 3-7)
51例(20%)の患者は術後7日以上入院していた。
"一般的な健康(GHS)"、"身体機能"、"機能的役割"の項目で、入院が長くなった患者において悪い結果であった。
ロジスティック回帰分析にて、その他とテスト項目は高い相関を認めた。
年齢、FEV1.0低値、DLCO、脳血管障害の既往に加えて、GHSを含むモデルがもっともすぐれていた。
59例の患者はGHS<58(四分位値よりも低い)
このうち31例は入院日数が長かった。

【考察】
術前QOLは術後入院日数の延長と関連していた。
ベースラインのQOLの状態は、術後回復を促すための心理サポートプログラムを含めるか考慮するために、評価すべきである。

2023/03/06

重症患者に対するROMex、マッサージで筋力向上効果

A randomized controlled clinical trial of the effects of range of motion exercises and massage on muscle strength in critically ill patients

BMC Sports Sci Med Rehabil (IF: 1.93; Q4). 2022 May 26;14(1):96.


【背景】
筋萎縮と筋力低下は、ICU入室の重症患者に共通した問題である。
筋力低下が重度のケースでは、四肢麻痺、腱反射の低下や消失、人工呼吸器からの離脱遅延、身体不活動、死亡率の低下などを引き起こす。
この研究の目的は、ICU入室患者に対して、関節可動域練習(ROMex)とマッサージが筋力に有効かを検討した。

【方法】
イラン南東部のAfzalipour hospitalにおける単盲検ランダム化比較試験。
90人の意識のあるICU患者が対象。ランダムに3グループに分けた(マッサージ、ROMex、コントロール)
研究者/共同研究者が、1日1回、週7日マッサージやROMexを実施。
ハンドヘルドダイナモメーターで介入前、4日目、7日目の筋力をPM8時に測定。

【結果】
介入前と比べた各筋力の変化
右上肢筋力:ROMex0.63kg上昇、マッサージ0.29kg上昇、コントロール0.55kg減少
左上肢筋力:ROMex0.61kg上昇、マッサージは0.28kg上昇、コントロール0.56kg減少
右下肢:ROMex0.53kg、マッサージ0.27kg上昇、コントロール0.70kg減少
左下肢:ROMex0.54kg、マッサージ0.26kg上昇、コントロール0.71kg減少

【考察】
ICU入室患者に対して、ROMex、マッサージ介入は、筋力向上に有効な介入であった。

対象:18歳以上、意識障害無し、上下肢骨折無し、神経疾患無し、DVT無し、電解質(カリウム、リン、マグネシウム)異常なし

筋力測定
 上肢:三角筋、上腕二頭筋、手関節伸筋
 下肢;腸腰筋、大腿直筋、大腿四頭筋、前脛骨筋
3回測定し最高値を採用。

ROMex
 入院初日から開始。通常ケアに加え、他動、自動、自動介助ROMを1日1回、週7日
 患者は仰臥位で、状態に応じて実施
 上肢:肩屈曲/伸展/外転、肘屈曲/伸展、手関節屈曲/伸展、手指
 下肢:股関節屈曲/伸展外転、膝関節屈曲、、足関節底背屈
 30-60分実施

マッサージ
 全身マッサージを1日1回週7日
 "the Swedish massage style"を実施
 
コントロール
 通常のROMexを15分(Additional file 1に内容は収録)