2023/02/18

筋力低下のある中等症COPD 1年間の栄養強化による効果と費用対効果

Clinical outcome and cost-effectiveness of a 1-year nutritional intervention programme in COPD patients with low muscle mass: The randomized controlled NUTRAIN trial

Clin Nutr (IF: 7.32; Q1). 2020 Feb;39(2):405-413.


【背景】
COPD患者において、栄養介入による呼吸リハの短期・長期効果は明らかになっておらず、この論文の目的は、筋力低下したCOPD患者における12か月間の栄養介入の臨床アウトカムと費用対効果について検討すること。

【方法】
呼吸リハプログラムの4カ月前に、81例の筋力低下のある中等症COPD患者(男性51%、根平均年齢62.5歳、%FEV1.0 55.1%)で、運動耐容能低下している患者をランダムに1日3食の栄養サプリ(NUTRITION)グループ(ロイシン、ビタミンD、多価不飽和脂肪酸)とプラセボグループに分けた(Phase1)。
非盲見化した8カ月のメンテナンス期(Phase2)に、加速度計で評価した身体活動レベルについてのフィードバックを両グループとも受けた。
NUTRITIONには、追加で1日1食の補助食品を摂取し、栄養カウンセリング介入を行った。
3カ月のフォローアップを含めた(Phase3)。

【結果】
12カ月後、大腿四頭筋力と運動持続時間で測定した運動耐容能に違いは無かったが、身体活動はNUTRITIONグループプラセボグループよりも有意に高くなっていた(Δ1030 steps/day, p = 0.025)。
強化した栄養素の血中濃度は、NUTRITIONグループで有意に高かった(p < 0.001)。
NUTRITIONグループは体重が増加傾向、プラセボグループでの体重減少傾向であり、12カ月後に両群で有意な差を認めた(Δ1.54 kg, p = 0.041)。
HADSの不安スコアと抑うつスコアはNUTRITIONグループのみ改善していた(Δ-1.92 points, p = 0.037).
一般的QOL(EQ-5D)はプラセボグループで減少しており、NUTRITIONグループでは認めなかった(15カ月後の両グループの差は、0.072ポイント、p=.009)
全体を通して、運動や健康的な食事に対してのモチベーションは高く、12カ月後も変わらなかった。健康的な食事に対してのモチベーションのみ、グループ間に有意差を認めた(Δ1.022 points, p = 0.015). 
15カ月後の質調整生存年(QALY)あたりのコストは16750ユーロ(約2,400,108円)であった。

【考察】
筋力低下のある中等症COPD患者に対しての栄養介入は、運動耐容能で表す運動の長期アウトカムを改善させなかった。しかし、患者の許容可能なコスト増加で、強化した栄養素の血中濃度、総体重、身体活動、一般QOLの改善が得られた。

2023/02/14

肺がん周術期の身体活動 SR2022

Physical activity in surgical lung cancer patients: a systematic review

Support Care Cancer (IF: 3.6; Q3). 2022 Aug;30(8):6473-6482.


【目的】
周術期の運動は、手術を行う肺がん患者にとって健康アウトカムを改善させるが、運動介入前の通常の身体活動行動についてはあまり知られていない。
このレビューでは、1)身体活動ガイドラインに適合する患者の割合、2)身体活動の量、3)手術による身体活動の変遷、4)手術前後の身体活動の相関についての身体活動のエビデンスを統合することを目的とした。

【方法】
2021年7月にPubmed等でレビューを実施。
肺がん手術前後で身体活動を測定した観察研究と介入研究を対象とした。
方法の質をthe NIH Quality Assessment Toolsを用いて評価し、標準化されたフォームを用いてデータを抽出した。

【結果】
17件の研究(25論文、1737人の参加者)が対象。
14件の研究ではサンプル数が100未満であった。
13件の研究がfair quality、4件の研究がgood quality
術後6カ月から6年に患者の23-28%がPAガイドライン(週150分の中等度から高度の活動)を満たしていた。
術前の1日の平均歩数は3822-10,603歩、術後1‐3カ月では 3934-8863歩。
身体活動は術後1日‐3カ月の間は、術前と比べて低かった。
周術期の身体活動は、運動耐容能、QOL、術後合併症の減少と関連していた。

【考察】
周術期の肺がん患者の身体活動は低いことが示唆され、術後3カ月は回復しないかもしれない。
身体活動は術後アウトカムを改善させる可能性がある。しかし、既存のエビデンスは弱く、今後大規模縦断研究が必要である。

2023/02/09

6MWT中の動作時低酸素血症があると生存期間が短い。

Exertional Desaturation Has Higher Mortality Than Non-Desaturation in COPD

Medicina (Kaunas) (IF: 2.43; Q2). 2021 Oct 15;57(10):1110.


【背景】
動作時低酸素血症(Exertional desaturation:ED)は、COPD患者で見落とされがちである。
目的は、COPDでEDの影響とEDの予測因子と死亡率について検討すること。

【方法】
安定期COPD患者を対象
EDの定義は、6MWTでSpO2<90%もしくはΔSpO2≧4%。
Cox回帰分析で、3年死亡率の危険率(hazard ratio:HR)を推定。

【結果】
113人が対象。EDはn=34、non-EDはn=79
単変量解析にて、EDとnon-EDグループで有意差を認めたのは、%FVC、FEV1.0%、%FEV1.0、%DLCO、最大吸気圧、6MWT中のSpO2、GOLDstage分類、COPD重症度。
6MWT中の最低SpO2と最高心拍数は、多変量解析にてEDと関連していた。
年齢、性別、BMI、6MWD、FEV1.0、mMRC、GOLDstage、図悪、CRP、フィブリノゲン、で調整した多変量解析にて、EDグループは、non-EDグループよりも死亡率が高かった。 (p = 0.012; HR = 4.12; 95% CI 1.37-12.39)
死亡について、EDグループの生存期間はnon-EDグループよりも著明に低かった。(856.4 days vs. 933.8 days, p = 0.033).

【考察】
EDのあるCOPD患者では死亡率が高かった。COPDでは、EDを評価すべきであり、とくに6MWT中の最低SpO2と最高心拍数のある患者では評価すべきである。

2023/02/07

肺がん術後の肺機能と患者報告アウトカムの経時的変化

Longitudinal changes in pulmonary function and patient-reported outcomes after lung cancer surgery

Respir Res (IF: 3.92; Q1). 2022 Aug 30;23(1):224.


【背景】
手術は非小細胞肺がん患者の主な治療であるが、術後の肺機能は特に注意が必要である。
この研究の目的は、肺がん術後患者の術後肺機能の縦断的な変化と患者報告アウトカム(PROs)を評価すること。

【方法】
前向きコホート研究。
術後2週、6カ月、1年のFVC、FEV1.0の変化とmMRC、CATを患者報告アウトカムとして評価。
混合効果モデル(mixed effects model)を肺機能とPROsの変化として利用。

【結果】
620人の患者、477例(76.9%)が肺切除術、120例(19.4%)部分切除/区域切除、23例(3.7%)二葉切除/全摘出。
FVCとFEV1.0は術後2週後に著しく低下し、その後改善。しかし、ベースラインまでは回復しなかった。
mMRC scaleとCATスコアは術後特に悪化。
mMRCスコアは高いままであり、CATスコアは術後1年後にベースラインにまで戻っていた。
しかし、息切れとエネルギーの不足は続いていた。
葉切除をした患者のFVCとFEV1.0のベースラインからの変化と比べて、二葉切除/全摘出患者では特にFVCとFEV1.0は低下しており、部分切除/区域切除では、わずかに低下していた。
二葉切除/全摘出した患者は、mMRCスコアが3グループで最も高かった(息切れが強かった)。
しかし、術後1年後には統計的な違いは見られなかった。

【考察】
肺がん術後、肺機能とPROsは術後の期間で特に低下し、その後回復していた。しかし、息切れスコアとPROsを除いて。
肺機能と症状の変化の経時的変化の適切な情報は、術後患者ケアへのアプローチ指針となる可能性がある。



2023/02/02

身体活動レベル向上に特化した呼吸理学療法の費用対効果

Respiratory physiotherapy interventions focused on exercise training and enhancing physical activity levels in people with chronic obstructive pulmonary disease are likely to be cost-effective: a systematic review

J Physiother (IF: 7; Q1). 2021 Oct;67(4):271-283.


【疑問、方法】
COPD患者の呼吸リハの費用対効果について検討。
1997年から2021年までにパブリッシュされた臨床研究と並行した経済評価についてのシステマティックレビューを実施。
レビュアーは独立して適格基準、除外基準をスクリーニングし、方法の質について評価した。
COPD患者を対象。
呼吸理学療法は、ERSのカリキュラムの呼吸理学療法を行ったものと定義。

【アウトカム】
金額単位で表されるコスト、疾患特異的QOL、質調整生存年数(QALYs)、金額の効果量

【結果】
11本のRCT、3261人が対象
介入は、呼吸リハビリテーション、気道クリアランステクニック、疾患管理プログラム、早期退院支援プログラム、入院呼吸理学療法
メタアナリシスでは、報告された介入の異質性(不均質性)が広いため、無関係であると考えられた。
合計で45の増分費用対効果比(ICER)が抽出された。
経済的な視点に関わらず、全QOL関連ICERsの67%、QALY関連ICERsの71%が、北東部もしくは南東部に位置していた。
6つの研究において、QALY獲得あたりの費用対効果と比較した場合、費用対効果があるとみなすことができた。

【考察】
身体活動レベルを高めることを加えた運動療法に特化した呼吸理学療法介入は、QOL獲得やQALYs獲得あたりの費用対効果があることを示した。
費用対効果の推定には、介入種類の強度やアウトカム評価、比較対象など異なるため、いくつかの不明確なものが存在する。