2022/04/09

肺高血圧症の運動療法

Standardized exercise training is feasible, safe, and effective in pulmonary arterial and chronic thromboembolic pulmonary hypertension: results from a large European multicentre randomized controlled trial

European Heart Journal, Volume 42, Issue 23, 14 June 2021, Pages 2284–2295,


【目的】
この前向きランダム化、対照群、多施設研究の目的は、肺高血圧症(PAH)と慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者に対する運動療法が有効で安全であるかを検討すること。

【方法と結果】
欧州10か国、11の施設において、PAH/CTEPHに特化したリハビリプログラムを実施。
129人の患者がエントリーされ、疾患特異的薬物療法を完了した116人(58人ずつをランダムに2群に振り分け)が対象(85人女性、平均年齢53.6歳、平均肺動脈圧46.6mmHg:WHO機能分類で、class2 53%、class3 46%;PAH98人、CTEPH18人)。
トレーニンググループは、病院にて標準化されたリハプログラムを平均25日間実施し自宅でも継続した。
プライマリーエンドポイントは、6MWDの変化で、トレーニンググループにおいて平均34.1m向上(95%CI:18-51m、p<.0001)。
運動療法は実施可能で、安全であり、良好な忍容性を認めた。
セカンダリーエンドポイントはQOLもSF-36の精神項目で7.3ポイントの向上を認めた(p=.004)。
WHO機能的クラス分類(training vs. control: improvement 9:1, worsening 4:3; χ2P = 0.027) と最大酸素消費も対照群と比較して、運動したグループで改善を認めた(0.9 ± 0.5 mL/min/kg, P = 0.048) 。

【考察】
これは最初の対施設間の大規模ランダム化比較試験で、PAHとCTEPH患者において、薬物療法に運動療法を加えることが安全、実現可能、有効であることを示した。
この研究を含め、標準的な病院でのプログラムが開始されており、欧州10か国において成功した。

・欧州10か国(オーストリア、ベルギー、ドイツ、イタリア、リトアニア、オランダ、ポルトガル、スコットランド、スペイン、スイス)の11施設において、共通のプロトコルを使用した運動療法を実施
・対象基準:前毛細血管性肺高血圧症(precapillary PH):右心カテーテルでPAHもしくはCTEPHと診断された患者。18歳以上、WHOクラス分類Ⅱ-Ⅳ、最低2か月間PAHをターゲットにした治療を行っている。
・除外基準:門脈圧亢進症や複合型先天性心疾患によるPH、HIV、肺静脈閉塞性疾患。さらに、離床的に関連する肺疾患、左心疾患、活動性肝疾患、急性感染症、歩行不可、ヘモグロビンが正常値の75%未満、収縮期血圧<85mmHg、最近の失神、運動に影響する筋の問題。

・研究期間:15週間。ランダムにトレーニンググループ、コントロールグループに分けた。
トレーニンググループ:最初の10-30日は院内(stayed in-house)で行い、その他11-12週を自宅でプログラムを実施。
コントロールグループ:自宅にて通常通りの活動を実施。

・プライマリーエンドポイント:ベースラインと15週目の6MWDの変化。
・セカンダリーエンドポイント:ベースラインと15週目の最大酸素消費量の変化、WHOクラス分類、NT-proBNP、QOL、安静時と運動負荷試験時の心電図異常の有無

・トレーニンググループの内容:最初の期間は5-7日/週、自宅では3-7日/週。
運動強度は、ベースライン運動テストでの最大負荷の40-60%。