Geriatr Gerontol Int (IF: 2.73; Q3). 2020 Jan;20(1):7-13.
肺炎は、高齢者の主な死亡原因であり、死亡数は上昇している。現在の肺炎管理ガイドラインは、病理思考型戦略による抗菌薬治療が基になっている。
肺炎で入院している高齢患者は、誤嚥性肺炎の発生率が高い。
誤嚥性肺炎の主な原因は、嚥下と咳嗽反射の障害である。
これらの要素は、現在の管理戦略の限界を示しており、新たな治療戦略が必要である。
サルコペニアは、加齢による筋力と筋肉量の減少、身体機能低下である。
近年、嚥下筋の筋力・筋量低下と、嚥下機能障害との関連が示唆されている。
全身性および嚥下筋のサルコペニアによる嚥下障害のことを”サルコペニア嚥下障害”と呼ばれている。
いくつかの研究で、誤嚥性肺炎とサルコペニア嚥下障害の関係が報告されている。
咳嗽反射と咳嗽力は誤嚥性肺炎を予防し、咳嗽力は呼吸筋力によって規定される。
いくつかの研究で、高齢者の肺炎と筋力の関連が報告されている。
サルコペニアは高齢患者の肺炎のリスク因子であり、誤嚥性肺炎で入院した患者で筋肉量が低いと高い死亡率を示す。
動物モデルと人間において、呼吸筋、嚥下筋、骨格筋の筋萎縮は誤嚥性肺炎を引き起こす。
呼吸筋力と肺炎の関係は現在調査中である。
サルコペニアの評価と管理は、高齢肺炎患者の予防と治療の新たな治療戦略となり得るかについての研究は最近始まったばかりである。
【サルコペニア嚥下障害】
オトガイ舌骨筋と舌筋は主な嚥下筋であり、舌圧は主に嚥下筋力の指標として用いられる。
高齢者のオトガイ舌骨筋は、若年者と比べて、筋肉量が少なく、脂肪浸潤が多い。
オトガイ舌骨筋の減少は、嚥下機能の低下を招く。
舌圧が良好であると、経口摂取の機能が良い。
いくつかの報告で、全身筋力と嚥下機能が関連している一方で、舌圧は握力と関連していた。
高齢入院患者において、サルコペニアは嚥下障害のリスク因子である。
サルコペニア嚥下障害を最初に報告した論文(2012年)では、水嚥下テストと上腕周径に軽度の相関を認めた。
嚥下障害は嚥下反射障害だけでなく、全身と嚥下筋の筋力低下も関連している。
【誤嚥性肺炎のリスク因子と予防】
口腔内細菌の誤嚥による下気道感染症が誤嚥性肺炎の原因として最も重要。
高齢者において、不顕性誤嚥が他の病理タイプよりも、肺炎の原因として最も多い。
嚥下障害によって誤嚥は生じるが、咳嗽によって気道外へ除去されれば、肺炎になることは稀である。
サブスタンスPは咳嗽反射と嚥下に影響する神経伝達物質である。アンジオテンシン変換酵素(ACE)はサブスタンスPを分解する。
Yamayaらは、抗菌薬治療は肺炎を予防せず、誤嚥したものの病原菌をへらすことが重要であると示した。
口腔ケアは、肺炎の発生率を減少させる。
ACE阻害薬は、咳嗽と嚥下反射の感度を向上させる。
さらに、脳卒中患者において、ACE阻害薬は肺炎の発症を予防した。
カプサイシンは、サブスタンスPの放出を促進し、嚥下反射を改善させる。
肺炎の再発のリスク因子として、肺がん、COPD、吸入ステロイド、睡眠薬があり、一方、ACR阻害薬は再発リスクを減少させた。