2021/07/08

脛骨プラトー骨折後の理学療法 systematic review2020

Physiotherapy after tibial plateau fracture fixation: A systematic review of the literature

SAGE Open Med (IF: 0; Q4). 2020 Oct 14;8:2050312120965316.


【背景】
脛骨プラトー骨折は整形外科手術でよく見かける障害である。患者の生活にネガティブな影響を及ぼすことが報告されており、QOLの低下、長期間の作業(work)の継続、活動レベルを低下させる。

【目的】
興味深いことに、これらの患者の術後リハビリに関する報告は十分ではない。
このレビューの目的は、この領域の文献を紹介し、4つの主な疑問に対しての答えを提示する事:術後ROM運動、不動、荷重状態、リハビリの継続

【方法】
pubmed、Google scholarで検索し、採用基準を満たした39文献が対象

【結果】
この対象の文献は希少性があり、議論の的になっている。早期ROMは、術後できるだけ早期から行うべきである。
プレート固定後の不動は、患者のその他メリットとの相関は無いようである。
荷重状況は、最も議論されている内容であり、多くの最近の報告では、早期からの荷重が多い。
脛骨プラトー骨折は、患者の生活へ大きな影響を与え、大腿四頭筋力強化と固有感覚運動に焦点をおいたリハビリの継続が推奨される。

【考察】
今回のレビューでは、脛骨プラトー骨折の理学療法についての文献について焦点を当てた。
早期ROM運動と早期荷重は推奨されるべきである。
不動(固定)は、効果をもたらさないかもしれない。
より良い臨床アウトカムのために、リハビリの継続を考慮すべきである。


<ROMに関して>
ROMexの重要性は明白であるが、タイミングやROMの種類に関しては、様々な意見がある。
他動、自動、自動介助での運動を術後2日後もしくは傷が治ったらすぐに開始している。
Sinhaらは、ROMexを早期から行った患者で、術後の疼痛コントロール(術後5-14日)が良好であったと報告している。
Blokkerらは、術後すぐROMをした場合と、術後2週間後から開始した場合に、長期的なアウトカムに効果は見られなかったと報告している。
CPMの使用は、患者のアウトカムや合併症の予防に対しての十分な効果は不明確である。
術式によってプロトコルは異なっている。円形フレーム(創外固定?)を膝をまたぐように使用している場合、リングを除去するまでROMの開始が遅れていた。
円形フレームが膝をまたいでいない場合は、できるだけ早期から膝関節のROMexを推奨する。

<固定に関して>
関節内固定術を行った際にのみニーブレースが使用される。
使用期間は、10日から6週。
文献での報告の頻度は少なく、1/3の研究でのみ使用が推奨されていた。
Chauhanらが最初にランダム化試験を行ったが、検出力が弱く、臨床的、画像的なアウトカムに違いはなかった。
Polatらの報告では、術後6週以上固定すると、最終的なアウトカムが不良であったとしており、術後2週以上の固定は行わないとしている。

<荷重に関して>
最も議論されているところである
レントゲンの状態を指標に全荷重に向けて進めていく
最も多いプロトコルは、部分荷重4-6週であった。
Thewlisらは、部分荷重を行っている患者の歩行分析にて、アウトカムへの影響は認めなかったとしている。
Kalmetらは、部分荷重と荷重制限を比較したところ、合併症や患者報告アウトカムに違いが無かったとしている。
部分荷重の患者の方が、全荷重までの期間が速かった。
Polatらは、全荷重が12週以上遅れると、アウトカム不良であったとしており、部分荷重6週、全荷重6-12週を推奨している。

<リハビリの実施>
Krausらは、治療2年後のスポーツ活動レベルが著明に低下していたと報告。
疼痛、膝関節硬化、不安定性、再発などにより、患者の5人に1人以下しか、受傷前の活動レベルに戻れない。
これらは、患者の満足度と活動レベル向上のためにリハビリの継続が必要であることを示している。
歩行に関して、ElsoeとLarsenは、フレーム除去後1年、歩行パターンの非対称性が増していたと報告。
この非対称性は患者の健康関連QOLと関連していた。
早期にリハビリを開始することが必要であり、機能障害の回避や長期アウトカム改善のために、大腿四頭筋力強化と固有感覚運動に重点をおいたリハビリの継続が求められる。
Sinhaらは、等尺性の大腿四頭筋運動を術後2日目から開始している。

<今後の課題>
今回、プラトー骨折の理学療法の文献をレビューしたが、ランダム化比較試験が少なく、対象者の少ない文献が多かった。
Falzaranoらは、脛骨遠位ピロン骨折後の歩行パターンについて検討し、異なる固定タイプの結果、骨折治療と四肢アライメントが同様の期間で復元したと報告した。
脛骨近位部骨折やプラトー骨折でも固定の種類と歩行パターンのアウトカムの違いについての検討も興味深いのではないか。