2020/10/18

重症COPD患者が運動中にマスクを着けてもガス交換に影響しない

 Effect of Face Masks on Gas Exchange in Healthy Persons and Patients with COPD

Ann Am Thorac Soc (IF: 4.836; Q1). 2020 Oct 2.


<背景>
観察研究のシステマティックレビューと疫学モデルによる現在のエビデンスは、一般的なサージカルマスクを使用することで、COVID-19感染と致死率を緩和する。
しかし、一般的なマスクを使用することは、政治的な影響が強く、一貫性のない勧告により、世論が分かれている。
反対のエビデンスがあるにも関わらず、US/UKのオンライン調査で、わずか29.7%-37.8%の参加者のみが、マスクを装着することは、COVID-19感染予防効果があると回答した。
そのほかのマスクを装着しない共通した理由として、マスクが、二酸化炭素の再呼吸を促進する事と、低酸素血症に対する安全性への懸念があり、マスクは致命的とさえ考えられている。

<目的>
肺疾患の有る、または、無い対象者に対して、サージカルマスクを装着することでガス交換の異常をきたすかを検討した。

<方法>
呼気終末二酸化炭素(ETCO2)と酸素飽和度(SpO2)をサージカルマスク着用前後で測定。
対象は、肺疾患のない健常者15人(年齢31.1歳、60%が男性)と重症COPD15人(年齢71.6歳、%FEV1.0 44.0%、全員男性)
患者は、気管支拡張薬吸入後の肺機能検査にて、%FEV1<50%かつFEV1.0%<0.7であること、6MWTで必要な酸素量を評価。
筆者の施設では、6MWT開始前と終了直後の動脈血ガスを採取し、長期酸素療法が必要かを評価。

COVID-19パンデミックのため、6MWTはサージカルマスクを着用して実施。
ベースライン評価は、マスクないの室内気環境において、非侵襲的モニターで評価。続けてマスクを着用してモニタリングを行った。

5分後と30分後、安静時のどのポイントにおいても、ETCO2とSpO2 の値に両グループ間での有意差はなかった。
6MWTにおいて、重症COPD患者はSpO2 が低下した。
しかし、COPD患者で、サージカルマスクを着用して6MWTを測定した後の血ガスにおいて、生理的な変化を示さなかった。特に、CO2の再呼吸は見られなかった

<考察>
1回換気量や分時換気量の変化は測定していないが、今回データは、重症肺疾患患者がマスクを着用することによるガス交換への影響を受けないことを示唆した。
今回は、20人の健常ボランティアに対して、1時間マスクを着用し中等度の仕事量を行っても同様の結果を示した。(若干の生理的な反応の上昇を認めたが、臨床的に有意な差ではなかかった)
マスク装着による不快感は、神経学的な反応(マスクで覆っている範囲の熱受容体の求心性インパルスの上昇や吸気の温度上昇による)、もしくは、不安や閉所恐怖症、呼吸困難感に対する反応のような心理的な反応が関連している。

今回の結果は、N-95マスク装着とは対照的な結果で、肺疾患のない健康な者が使用するとPaCO2のが上昇するかもしれないが、生理的な反応はないだろう。