2020/10/11

高齢がん患者に対する身体活動のアドバイスは身体機能低下を予防しない

Effects of a physical activity programme to prevent physical performance decline in onco‐geriatric patients: a randomized multicentre trial

J Cachexia Sarcopenia Muscle (IF: 9.802; Q1). 2019 Apr;10(2):287-297. 


<背景>
高齢がん患者は、がん自体と治療の両方の影響で長期的に身体機能の低下を経験する。運動は、年齢やがんによる機能低下を最小限にできるかもしれない。

<方法>
他施設共同無作為化試験。70歳以上のリンパ腫やがんで、治療的介入が必要であった患者を2群に分けて12か月介入。
研究開始時のがん治療の段階はいずれの段階(手術、化学療法、放射線治療)も含まれた。
通常ケア群(Usual Care Group:UCG)は、現在の身体活動に関する国際的なガイドラインをもとに介入。
介入群(Intervention Group:IG)は、身体的評価(最初の半年は月2回、その後は毎月評価)をもとに個別に身体活動のアドバイスを電話で行った。
プライマリーアウトカムは、1年後の身体機能が低下していた患者の割合(SPPB1点以上の減少を低下と定義)
セカンダリーアウトカムは、身体的、認知的、臨床的状態。

<結果>
301人の患者(76.7歳、女性60.6%)が対象。
ベースラインのSPPB中央値は、UCG10点、IG12点。
腫瘍の部位は乳がんが最も多かった(35.7%)
1年後、UCGの14.0%、IGの18.7%がSPPBスコアが1点以上減少していた。(p=0.772)
2年後、SPPBに違いはなかった。
2年後のサブグループ解析にて、乳がん患者において、UCGの29.8%、IGの5.0%がSPPBの低下を示した(p=0.006)
女性において、UCGの21.7%、IGの6.2%でSPPB低下(P = 0.019)
栄養状態が正常の患者は、UCGで24.5%、IGで11.1%でSPPB低下(P = 0.009).
転倒、入院、死亡率は、両群とも似ていた

<考察>
個別の電話による身体活動アドバイスは、1年後の身体活動の低下を抑制しなかった。
しかし、高齢の乳がん患者において、2年後の身体活動低下を予防できるかもしれないという限定的なエビデンスを示した