2020/09/02

重症ARDSの腹臥位療法の生存効果 NEJM2013

 Prone Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome

N Engl J Med (IF: 74.699; Q1). 2013 Jun 6;368(23):2159-68.



<背景>
急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者の予防的研究では、人工呼吸管理中の腹臥位の効果は示されなかった。
今回、重症ARDS患者で腹臥位療法の早期実施の効果を検討した。

<方法>
多施設、前向き、ランダム化比較試験。466人の重症ARDS患者で、16時間の腹臥位もしくは左背臥位を実施。
重症ARDSの基準はP/F ratio≦150mmHg(少なくともFiO2 0.6)、PEEP5cmH2O以上、1回換気量6ml/kg。
プライマリーアウトカムは、28日以内の死亡率。

<結果>
237人が腹臥位グループ、229人が背臥位グループ。
28日後の死亡率は、腹臥位で16.0%、背臥位で32.8%
腹臥位での死亡のハザード比(Hazard Ratio)は0.39。
90日後の死亡率は、腹臥位で23.6%、背臥位で41.0%、ハザード比は0.44
合併症の発生は、両グループで差はなく、背臥位グループで心停止の割合が多かった。

<考察>
重症ARDS患者において、長時間の腹臥位を早期に行うことは、28日後、90日後の死亡率を減少させた。

・対象患者
挿管されて36時間以内
重症ARDSは、 PaO2:FiO2 ratio of <150 mmHg, with an FiO2 of ≥0.6, a PEEP of ≥5 cmH2O 、1回換気量 6 ml/kg
ICU入室後12-24時間後の状態で基準を満たすかを判断

・腹臥位
標準的なICUベッドを使用し、完全腹臥位を最低16時間実施。
呼吸器設定は、VCモード、目標1回換気量は6ml/kg
・腹臥位の中止基準
酸素化の改善(P/Fratio>150mmHg、PEEP≦10cmH2O、FiO2≦0.6)
P/Fratioの20%以上の低下
腹臥位中の合併症の発生:予定外抜管、主気管挿管、末梢気管チューブ閉塞、喀血、SpO2<85%もしくはPaO2<55mmHgがFiO2 0.1で5分以上持続、心停止、HR≦30bpmが1分以上継続、収縮期血圧≦60mmHgが5分以上、その他専門家が危険と判断した場合。

腹臥位療法後は背臥位へ。腹臥位は毎日実施。

・ウィーニングの基準は両グループとも同じ。毎朝、ウィーニングを検討。