2020/03/07

間質性肺疾患のリハビリテーション review

Current best practice in rehabilitation in interstitial lung disease.

Ther Adv Respir Dis (IF: 3.286) 2017 Feb;11(2):115-128.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28150539

<背景>
間質性肺疾患(ILD)は動作時の息切れと健康関連QOLの低下という特徴的な慢性呼吸器疾患である。
ILD患者は、換気制限、ガス交換障害、心機能低下、骨格筋機能異常などによって著明な運動制限を呈している。
呼吸リハは、COPD患者のように運動制限と動作時息切れを克服するために確立されている。
ILD患者においても呼吸リハの同様の効果があると報告が増えている。
このレビューでは、ILDの呼吸リハのエビデンス、呼吸リハの構成要素のアウトラインについて考察する。


<ILDの運動制限>
運動制限は、安静時の肺機能よりも予後を強く予測する。
IPFにおいて、6MWDは死亡の独立つした予測因子であった。
IPF患者のベースライン6MWD<250mは、死亡リスクが2倍増加することと関連した。
ベースラインと24週後の6MWDが50m以上低下していると、死亡リスクが3倍増加した。
ILDの運動制限は、複数の要素が関連している:ガス交換障害、肺循環、換気不全、筋機能異常。筋機能異常は、呼吸リハで改善可能な新たな分野かもしれない。


<筋機能異常>
骨格筋の機能異常はILDの原因の炎症に影響するかもしれない。
IPF患者において、抗酸化能は減少しており、活性酸素として反応する。これらは酸化ストレスを引き起こす。
活性酸素の産生には、運動後の抗酸化能の減少と関連している。加えて、ILD患者は、糖質コルチコイドや免疫抑制療法を行っており、薬剤性ミオパチーの原因である。

慢性呼吸器疾患において、ステロイドを日常的に1年以上使用していると、筋機能の著明な減少があった。
骨格筋以上は、加齢や栄養の影響もあるかもしれない。


<ILDの呼吸リハの効果>
ILD患者の短期間呼吸リハの効果についてはいくつか報告されている。
5-12週で効果検証を実施した報告であった。
呼吸リハによる有害事象は報告されていない。
呼吸リハによって、6MWDが44.34m増加、最大酸素摂取量は1.24ml/kg/min増加。
3-6ヵ月の研究では、運動耐容能とHRQOLの優位な改善を認めなかった。

<患者選択とタイミング>
重症度や自然経過が異なるため予後予測は困難である。
進行した患者では効果が無いかもしれない。
しかし、IPF患者で、呼吸リハを行うと、他のILD疾患と同等の6MWDの改善を認めたことがCochraneに示された。
より高いFVC、動作時低酸素血症が少ない、呼吸リハ開始時の活動制限が少ないと、運動耐容能が著明に改善している。
より息切れが重症な例でも同様に、呼吸リハ6か月後の運動耐容能が改善した。
ベースラインでの6MWDが短いことは、呼吸リハでの6MWDの改善の独立した予測因子である。
IPFにおいて、より軽症な症例が、良いアウトカムとなる可能性が高い。
しかし、現在のエビデンスでは、呼吸リハを開始するタイミングについては言及できないが、より軽症から開始するとよい効果が得られるかもしれない。

<トレーニング期間>
ILDのトレーニング期間については明らかにされていない。
英国ガイドラインでは、6-12週の呼吸リハが推奨されているが、ILD特異的に推奨されていない。
ILDの外来患者の呼吸リハでは期間は5-12週。
より長くリハを行うと効果が維持できるかもしれない。


<運動内容>
持久力トレーニング:
 最初の運動強度は、6MWTの歩行速度やCPETの最大運動負荷の70-80%から開始する。
 インターバルでも良いので、30分を運動を行うべき
 最小頻度は2回/週を推奨
レジスタンストレーニング:
 呼吸リハ特異的な運動処方のガイドラインは無い。
 アメリカスポーツ医学会(ACSM)の成人や高齢者への処方が一般的に使われている。
 2-3日/週、1セット10-15回、
 筋力増強なら1RMの40-50%、出力増強であれば1RMの20-50%
 
インターバルトレーニング:
 持続トレーニングに代わる運動様式である。持続トレーニングよりも多くの時間運動できることを目的とする。
 COPDにおいては、持続トレーニングと比べて、運動耐容能や運動耐容能に著明な違いは無かったとされている。

<IPF増悪後のリハビリテーション>
IPF急性増悪後のリハビリの実施については言及されていない。COPD急性増悪後は、推奨されているが、IPF増悪後は推奨されていない。
最近、慢性呼吸器疾患増悪後のリハビリのネガティブな効果が報告されている(運動耐容能、QOLに有意差なし、12か月後の死亡率が介入群で多い)。[Greening et al. 2014].
しかし、急性得増悪後の早期モビライゼーションは、早期退院やADLの回復に寄与するかもしれない。
急性増悪後のリハビリ介入は気を付けてアプローチをすべきかもしれない。