2020/03/21

COPD急性増悪時の四肢筋の悪化

Deterioration of Limb Muscle Function during Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease.

Am J Respir Crit Care Med. 2018 Feb 15;197(4):433-449.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29064260

COPDで安定期と増悪期の重要な役割として、骨格筋の機能低下がある。
増悪中の四肢筋の機能低下はいくつかのアウトカム(入院期間の延長、再入院、死亡)の悪化と関連している。
筋肉の機能異常を導く要因として、低酸素血症、電解質異常、炎症、薬剤(糖質コルチコイド;ステロイドなど)がある。
これらの要素は、局所の炎症変化や構造的変化の引き金となるかもしれない。
臨床的な筋力低下を防ぐものとして、現在、身体的/呼吸リハの様な療法があるが、参加者が少なく影響は限定的である。
最近、同様の機能障害に対しての薬物介入があり、これらの報告は、COPDで入院している患者において発見を容易にするかもしれない。

それにも関わらず、治療者はそれぞれの介入の制限のある知見をもって、対象者へ介入すべきである。

今回の簡潔なシステマティックレビューでは、COPD急性増悪で入院した患者の急性筋機能異常の全体像を示し、この対象における薬物治療戦略について述べる。


【エネルギーインバランス】
AECOPDで入院した患者は、体重が減少する。ICUAWによってタンパク質の合成が阻害されているためかもしれない。
安定期COPDでは、呼吸仕事量の増加により、エネルギー摂取と消費が不利なバランスとなっている。
重症増悪時は、換気の酸素消費量が増大し、安静時エネルギー代謝(REE)が増加することで、体重減少や筋力低下を招く。
成長ホルモン(GH)/インスリン用成長因子-1(IGF-1)は、急性期と慢性期のタンパク質合成にポジティブに影響する。
増悪初期に、IGF-1は低酸素に反応して上昇する。
更にレプチンが増悪の初日に増加し、患者は、低摂取/高REE状態となる。
レプチンは、REE減少と食事摂取増加のために減少すべきであるが、増悪後15日間はいまだ増加する患者もある。

【低酸素血症、高二酸化炭素血症アシドーシス】
低酸素血症は、カルシウム依存プロテアーゼの刺激による筋タンパク合成に抑制定期に作用し、一方、アシドーシスはユビキチン-プロテアーゼ回路によるタンパク質加水分解を刺激する。
ヒドロキシル化が抑制されることによって、低酸素誘導因子(HIF-1α)が低酸素状態の骨格筋において上昇する。HIF-1αの増加は、グルコースと酸化代謝とDNA置換、ミオシン重鎖の減少に影響する。
この分子機序は、筋細胞内のpHの減少によって変化するものかもしれず、結果として、筋電位信号の変化と筋線維伝導速度の減少が生じているかもしれない。

安定期COPD患者で、筋収縮中に大腿四頭筋がアシドーシスを呈していることが示された。
これは、上肢筋では見られなかったため、筋の形態学的な違いでの機序を示唆していた。