2018/09/07

急性呼吸不全への早期リハ介入は、長期的には効果なし

A Randomized Trial of an Intensive Physical Therapy Program for Patients with Acute Respiratory Failure

Am J Respir Crit Care Med. 2016 May 15; 193(10): 1101–1110.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4872662/

<背景>
早期理学療法介入は、急性呼吸不全患者において、神経筋低下の予防に効果があるかもしれない。
しかしながら、これらの介入の最適な量は現在明らかになっていない。

<目的>
集中的な理学療法プログラムが、標準的なPTプログラムと比べて長期的な身体機能パフォーマンスを向上させるかを検討すること。

<方法>
少なくとも4日間、人工呼吸管理が必要であった患者が対象。無作為に、4週間の集中的理学療法もしくは標準的理学療法を行った。
身体機能の評価は、急性期や慢性期の施設を利用していない生存者の1,3,6カ月後の状態を評価。
プライマリーアウトカムは 1カ月後のthe Continuous Scale Physical Functional Performance Test short form (CS-PFP-10)

<結果>
5つの病院で120人の患者が対象。介入時間は、集中PTグループは12.4回、合計408分。芳醇PTグループは6.1回、合計86分。
身体機能評価を実施できた患者の割合は、1カ月86%、3カ月後76%、6カ月後60%
両グループとも、身体機能は1,3,6カ月を通して改善したが、まだ減少していた。
2つの介入を比較すると、CS-PFP-10の合計スコアや変化の推移は、3回の評価時点において違いを認めなかった。

<考察>
集中的な理学療法介入は、標準プログラムと比べて、長期的な身体機能パフォーマンスを改善しなかった。

・アメリカ、デンバー州のメトロポリタンエリアの5つの医療機関で実施
・参加基準は18歳以上で最低5日間人工呼吸管理を行っていた患者(神経筋の弱化は人工呼吸管理の4日以降に共通して生じるため)
・集中的リハと標準リハに無作為に振り分けられ、28日リハを実施。

【集中的リハ】
入院中は週7日間介入。退院後は、在宅もしくは外来で週3回継続。リハを28日間実施もしくはプログラムをすべて完了するまで介入。
ICUでは1回30分、一般病棟や外来、在宅では60分介入。
リハの内容は、1)運動中の呼吸法、2)関節可動域、3)筋力トレーニング、4)体幹可動性と筋力向上、5)機能的モビリティ(ベッド上動作、移乗、歩行、バランス)

【標準リハ】
週3回ROM、ポジショニング、機能的モビリティを実施。可能であれば、室内での移乗や歩行の様な活動をアシスト。
自宅退院後は、最初に提示された運動を行うように指導され、正式な外来リハなどは行わない。
バイアスの発生を避けるために、週3回電話連絡を行い、自宅での生活に関する質問を行った。

圧倒的に集中的リハの方が介入時間が多い。


退院後1,3,6ヶ月後の身体機能評価や在院日数は有意差なし

標準PTの方が、スコアは良かった

・集中的リハが効果が無かった考察としては、
1)患者の性質がかなり異なっていた
2)サンプルサイズが少ない
3)介入期間が身体機能の改善には十分ではなかった(しかし、ICU後、長期間介入した報告では改善していなかった)
4)転院先で介入が継続されていなかった
5)介入開始が早すぎた(筋肉にとって、炎症中やタンパク質分解中は、早期PTは有害かもしれない)
6)介入内容が有効ではなかった
7)フォロー出来なかったことがバイアスを招いた
8)集中的リハは、標準ケアプログラムよりも身体機能のメリットを生み出せない可能性