2017/08/11

ILD患者の運動中の肺循環の反応

Pulmonary vascular response patterns during exercise in interstitial lung disease

Eur Respir J 2015; 46: 738–749

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25976688

<背景>
間質性肺疾患(ILD)に明らかな肺高血圧症が発生していると、運動耐容能の低下に関与する。ILDにおける運動による肺動脈圧(PAP)の不安定さが機能面に影響していると考えた。

<目的>
27人のILD患者と11人の年齢をマッチした健常者を対象に、侵襲的心肺運動負荷試験(iCPET)を実施。平均PAP(mPAP)は、運動中の心拍出量(Q'T)を指標としてmPAP-Q'T slope≧3mmHg/Lを、肺循環反応不良の基準とした。

<結果>
全コントロールグループの対象者はmPAP-Q'T<3mmHg/L。15人のILD患者はmPAP-Q'T≧3mmHg/Lで、ILDと肺循環機能不全(PVD)を合併している(ILD+PVD)と分類。ILD患者で肺高血圧症がない患者(ILD-PVD)は12人。PVD合併の有無で分けても、性別年齢、BMI、肺機能、動作時低酸素に有意差は無かった。最大酸素消費量はPVD合併の方がPVD無しやコントロールグループよりも低かった。PVD合併患者は、死腔換気(VD)/1回換気(VT)と、分時換気量/二酸化炭素産生量が多かった。

<結論>
ILDにおいて、mPAP-Q'T slope≧3mmHg/Lは低酸素消費量と死腔換気の増加、換気効率の低下と関連していた。非侵襲的なパラメーターは運動における肺循環の危険を予測することはできず、iCPETによるmPAP-Q'TslopeがILD患者の早期肺循環疾患を同定でき、身体機能を著明に表すのかもしれない。

・肺動脈圧と心拍出量の関係に基づく運動誘発性肺高血圧は、最大運動中の平均肺動脈圧よりも肺循環疾患のを反映する指標と考えられている
・運動中の肺高血圧は、心不全患者や肺高血圧症患者の身体機能の低下と関連している

・対象はアメリカでiCPETを実施した患者536人、肺高血圧の基準は、mPAP>25mmHgとした。

・ILD患者は健常者よりもmPAPは高い。

心拍出量の増加とmPAPの関係。PVDがあるほど肺動脈圧の増加が速い。

最大mPAPとPVDの有無で人数を比較。
PVDがあると肺動脈圧が高い。


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運動すると心拍出量が増加するのは当然ながら、今回のように肺動脈圧が高い患者にとっては、運動することにより、肺動脈圧が上昇し、心負荷を高めてしまう可能性が考えられる。低負荷運動が良いのでは。
簡単な指標でこれが見分けられれば、運動処方に役立つかもしれない。