2017/07/30

COPD急性増悪時に横隔膜の動きが悪化する患者がいる

Prevalence and outcomes of diaphragmatic dysfunction assessed by ultrasound technology during acute exacerbation of COPD:A pilot study

Respirology. 2017 Feb;22(2):338-344.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27743430

<背景>
COPD急性増悪患者の横隔膜の機能障害の有病率や影響について知られていない。目的は(1)超音波検査で横隔膜機能障害の有病率を評価すること、(2)非侵襲的換気(NIV)失敗、入院期間、重症の急性増悪による死亡、呼吸器ICUへの入室への横隔膜機能障害の影響を調べること。

<方法>
41人の呼吸性アシドーシスのあるCOPD増悪患者を12ヶ月間調査。横隔膜機能障害の評価は、超音波検査で、NIV開始前に実施。横隔膜の厚さ(⊿Tdi)が持続呼吸中に20%以下であれば、横隔膜の機能障害と判定。
NIVの失敗とその他の臨床的アウトカム(機械換気の期間、気管切開、入院期間、死亡率)を記録。

<結果>
41人中10人(24.3%)に横隔膜機能障害があり、ステロイドの使用と強く関連していた。また、横隔膜機能障害は、NIVの失敗、ICU在室期間の延長、機械換気の延長、気管切開の必要性と相関していた。
カプランマイヤーで、生存率を推定すると、NIV失敗と呼吸器ICUでの死亡は、横隔膜機能障害と強く関連していた。

<結論>
COPD急性増悪で入院し、NIVが行われた重症の横隔膜機能障害のある患者は、4分の1で見られた。横隔膜機能障害はNIV失敗の原因かもしれず、臨床的資源の使用に影響し、患者の短期間での死亡率に影響するかもしれない。

・イタリアの大学病院ICUで1年間研究
・対象は、18歳以上で2型呼吸不全でNIVが必要な患者(肥満と横隔膜の可動性は関連が無いため、肥満患者も含まれている)

・NIVの設定:5cmH2OのPEEPをかけ、プレッシャーサポート(PS)を10cmH2Oに設定し、徐々に増やした。目標は一回換気量(Vt)8-10mL/kg、呼吸数<30回
・FiO2は、SpO2が88-94%を保てるように調整
・沈静はかけずに、NIV装着時過の目標は1日目はできるだけ長く、2日目は16時間、3日目は12時間を目標とした
・NIV失敗の定義は、1)血ガスが不変もしくは悪化、2)神経機能の低下もしくは分泌物の増加による気道保護の必要性、3)血行動態不安定や心電図上の異常、4)呼吸困難が不変もしくは悪化、5)マスクに耐えられない

・⊿Tdi(%)=(吸気終末横隔膜肥厚-呼気終末横隔膜肥厚/呼気終末横隔膜肥厚)×100


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図がダウンロード出来なかったので分かりにくいが、COPDってだけでも肺過膨張によって横隔膜が収縮しにくい状態のはず。それが増悪するとより動きにくいという感じだろうか。
急性増悪に対するNPPVはエビデンスもあるはずだが、この結果からすると、横隔膜の平低化が著しい患者は、NPPVしても失敗する可能性も十分にありえる。
沈静をかければ出来る可能性もある?呼吸介助を併用しても一緒だろうか?