2017/06/24

間質性肺疾患の運動療法のエビデンス

The evidence of benefits of exercise training in interstitial lung disease: a randomised controlled trial

Thorax 2017;72:610–619.

http://thorax.bmj.com/content/72/7/610


<背景>
間質性肺疾患(ILD)において、運動療法の臨床的な有効性については明らかになっていない。

<目的>
病因と重症度別にILD患者の運動療法の高価について検討すること。

<方法>
142人のILD患者が対象。内訳は61人IPF、22人石綿肺、23人結合組織疾患関連ILD、36人がその他ILD。
無作為に運動療法と通常ケアに分けて、8週間実施。
評価項目は6MWD、CRDQ、SGRQ-I、mMRC息切れスケール。評価のタイミングはベースライン、9週間、6か月。

<結果>
運動療法で、6MWDは25m増加、QOLも著しく改善。6MWDとCRDQ、SGRQ-I、呼吸困難は、石綿肺とIPFにおいて、大きく改善。しかし、サブグループではいくつかの大きな違いがあった。
結合組織疾患関連ILDは6か月で高価が低下した。ベースラインで6MWDが短い、症状が強いことは、トレーニングによって6MWDと症状の改善が大きいことと関連していた。
大きな効果は、運動処方がプロトコルにそって進んだ患者に得られていた。6ヶ月時点で、6MWDと症状の改善が維持されたことは、べースラインの肺機能の良かったことと、肺高血圧がなかったことと関連していた。

<結論>
運動療法は、ILD患者に有効であった。臨床的に意味のある改善は石綿肺とIPFに見られた。運動の成功を最大限得られて治療効果を維持できたのは、より軽症患者であるようだ。


・オーストラリアのメルボルンにある3つの病院で行われた研究、臨床的に安定していて、最大限の治療を行っているが、息切れ症状がある患者が対象。
・除外基準は、ILD以外の呼吸器疾患、運動に支障のある併存症の存在
・無作為に8週間の通常ケアか運動介入かの2グループに分けられた

・運動介入:週2回、外来で実施。30分の有酸素運動と上下肢の筋トレ。
・運動負荷:歩行の速度は6MWTの歩行速度の80%、自転車エルゴは6MWTから推測した最大負荷の70%、抵抗運動は10-12RM(10-12回繰り返してできる重さ)で設定

・酸素吸入はSpO2≧88%になるように必要に応じて実施
・運動は病院でのプログラムを継続し、患者教育もすべての患者に推奨した

・コントロールグループは、週1回の電話で一般的なサポートを実施。

・プライマリーアウトカムは6MWDの変化量。セカンダリーアウトカムは膝伸展筋力と肘屈曲筋力、HRQOL(CRDQ、SGRQ-I)、息切れ(UCSD-SOBQ、mMRC)、不安抑うつ(HADS)
・評価のタイミングはベースライン、9週間後、6か月後。


6MWDの変化量。6か月後には、ベースラインに戻っている。持続効果はない?

ILDの疾患別。塵肺は効果を持続できている。
対照的にIPFや結合組織疾患関連肺線維症は効果が得られにくい。

健康関連QOL:Aは症状、Bは活動、Cは影響、Dは合計。
点数が低いほど、QOLが高いと判定。
塵肺はQOLが改善していて、持続されている。
IPFは大きく差はなく維持されているという感じ。
結合組織疾患関連ILDは徐々に改善している。
特に、活動の項目で6か月後に著明に改善している。


<運動の反応性>
・ステップワイズ多変量解析にて、ベースラインの6MWDが短いことが9週間後の改善と関係。
・ベースラインの6MWDが10m増加するごとに、9週間後の結果は1.4mずつ減少。
・肺動脈圧が10mmHg減少もしくはFVCが100mL増加するごとに、6か月後の6MWDは1.5mもしくは2.1mずつ増加。
・ROC曲線で、ベースラインの6MWDが477m以上あると、MID以上の改善はしにくい傾向にある肺動脈圧が31.5mmHg以上あると、6か月後にMIDを達成しにい傾向にあり、また、疲労感の改善効果も乏しい傾向にあった。


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最初から歩ける患者は、その時点が最大ということで、天井効果という感じか。
肺高血圧の影響は運動療法を行う上で重要だと思う。低酸素血症を引き起こし、運動継続が難しくなる印象がある。