Inspiratory muscle training to enhance recovery from mechanical ventilation: a randomised trial
Thorax. 2016 Sep;71(9):812-9.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27257003
背景
人工呼吸器管理を行っている患者において、吸気筋力は弱く、疲れやすいためウィーニングに際して、呼吸困難や機能回復に限界を生じる。吸気筋力トレーニングはウィーニングの際の吸気筋力と持久力を回復させるかもしれず、呼吸困難感やQOLの改善する可能性がある。
方法
無作為化検者盲検、intention-to-treat解析で実施。ウィーニングに成功して48時間フォローしている70人の患者(7日間以上人工呼吸器管理)を、無作為に通常ケアに加えて吸気筋トレーニングを1日1回、週5日を2週間実施するグループと通常ケア(コントロールグループ)に分けた。プライマリーエンドポイントは2週間実施しての吸気筋力と疲労耐性インデックス( fatigue resistance index :FRI)。セカンダリーエンドポイントは、呼吸困難、身体機能、QOL、集中ケア後の在院日数、入院中の死亡率。
結果
34人の患者が無作為化によってトレーニンググループに入り、36人がコントロールグループになった。トレーニンググループは、吸気筋力が著しく改善した。FRI、身体機能、呼吸困難に統計的に有意な差は無かった。QOLの改善はトレーニンググループにおいて著しく改善。入院中の死亡率はトレーニンググループが高かった。
結語
ウィーニングに成功しフォロー中の吸気筋トレーニングでは、吸気筋力とQOLが改善した。しかし、入院中の死亡率のリスクが増加していることとの関係については確信をもって無視することはできない。
・オーストラリアの病院にて7日以上人工呼吸管理を行っていた患者が対象。48時間以上ウィーニングに成功しており、ウィーニングに成功して7日以内の患者を採用
・人工呼吸管理中に吸気筋とレーニングを行っている患者、参加に否定的、妊娠中、疼痛の増強、臨床的に安定していない患者は除外
・トレーニングはPTがプロトコルに沿って、指導。PTはグループ分けのブラインドは行っていない
・通常ケアは、PTが個別プログラムを指導:活動の補助、呼気陽圧法を含む排痰指導
、深呼吸、上下肢トレーニング
・吸気筋トレーニングはThresholdを使用。最初の負荷量は、最大吸気圧の50%。6回呼吸が出来たら最高負荷に上げた
・セット間で次のセットを開始できると感じるまで約1分未満、休憩した
・負荷強度は日に日に増加し、各呼吸6回目の呼吸で負荷バルブを開けられる負荷で設定。期間は平日の1日1回を2週間
・その他評価項目:SF-36、EQ-5D、修正ボルグスケール(安静座位時、過去24時間で最も動いた時)、機能面の急性期ケアインデックス(ACIF:精神面、ベッド上動作、移乗、動作を評価)
・対象の平均年齢59歳、疾患は敗血症、肺炎、多発性損傷、脳血管障害、呼吸不全、心血管術後など。ICU在室日数は平均15日程、人口呼吸器日数10日程
・2週間後、吸気筋力、EQ-5Dは介入グループで統計的に有意に改善。死亡率は介入グループで有意に多い(12% vs 0%)
・死亡率に関して、研究デザインの予測された数値(12.8%)に近い。知る限りでは、吸気筋トレーニングで死亡率の上昇ということは報告されていない。吸気筋トレーニングが直接、呼吸器合併症や死亡率に関連することは無いだろう。疾患の不均質の影響ではないか
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吸気筋トレーニングは最近見るようになった気がする。今回は急性期領域だからか評価項目が少々マニアックなような印象を受ける。吸気筋力が向上するのは当然だと思うが、QOLが吸気筋トレーニングをしたほうが改善しているという結果の考察が気になる。身体機能や息切れは有意差無いのに。。。
Acute care indexとかFatigue Resistance Indexとか初めて聞いた。知らないこといっぱいだな。