Impact of high-flow oxygen therapy during exercise in idiopathic pulmonary fibrosis: a pilot crossover clinical trial
BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2021 Nov 8;21(1):355.
【背景】
標準的な酸素療法(SOT)はIPF患者の運動耐容能を向上させる。ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)はその他の呼吸器疾患の酸素化を改善させるが、IPFの運動能力に影響するかは検討されていない。
HFNCが、SOTと比べてIPF患者の運動耐容能を改善させると仮説した。
【方法】
前向き、クロスオーバー、パイロットランダム化研究。
6MWTにてSPO2≦85%の動作時低酸素血症のあるIPF患者を対象に、定常負荷での亜最大心肺運動負荷試験(CPET)を行い、両方の酸素供給方法を比較した。
プライマリーアウトカム:持続運動時間(Tlim)
セカンダリーアウトカム:筋酸素飽和度(StO2)、呼吸(息切れ)と下肢の症状
【結果】
対象IPF患者:平均71.7歳、男性が90%。
FVC:58±11%、DLCO:31±13%
CPETのTlimはハイフローを使用した方が長かった(494vs381、p=.01)
ハイフローは、吸気予備量(IC)も増加した(19.4vs7.1、p=.04)
同様の傾向がStO2でも得られた。
ふたつのデバイスで、呼吸困難や下肢疲労の自覚症状に違いはなかった。
【考察】
動作時低酸素のあるIPF患者において、ハイフローが運動耐容能を向上させるという最初のエビデンスを示した。
これは、換気メカニクスや筋の酸素化の変化によって説明できる。
さらに大規模な研究で、IPF患者のハイフローの効果について確証を得ることが必要であり、リハビリプログラムに取り入れることができる可能性がある。
・適格基準:室内気(RA)で実施した6MWTにてSPO2≦85%
・除外基準:IPF以外の線維性ILD、COPDや喘息合併、中等度から重度の肺高血圧、整形疾患や認知機能障害でCPETが行えない
・評価方法:最大運動負荷(WRmax)を計測し、SpO2>85%を保てるFiO2(ベンチュリーマスク)を決定。
・亜最大運動負荷試験(75%WRmax)で2回(ハイフローと通常酸素)CPETを実施
・中止基準:胸部痛、心電図異常、SpO2<80%
・CPET:10wattの負荷、50-60rpmを維持、SpO2≧85%を保てるようFiO2を付加
・通常酸素:ベンチュリーシステムで投与
・ハイフローの設定:フローは40-60L/min、FiO2は同様
・筋酸素飽和度(StO2):筋肉の血中Hb濃度を測定できるNIRS(
製品ホームページ)を使用。
安静時、フリーペダル、CPET中、リカバリータイムのデータを収集。亜最大負荷時中の平均StO2、終了時(回転を維持できなくなった時点)での持続時間を収集。
さらに、StO2の低下幅(運動時の平均StO2ー安静時StO2)、運動負荷していない時期の回復(リカバリー時のStO2平均値ー亜最大運動時の平均値)を算出。
<結果>
平均6MWD436m、歩行中のSpO2は平均81%、軽度肺高血圧(心エコーで平均肺動脈圧>35mmHg)が4例。
CPET中のSPO2≧85%に要したFIO2は0.33±0.07
Tlim(運動持続時間)はハイフローの方が30%長かった
2つの酸素システムによるTlimの違いは6MWTの平均SpO2と負の相関あり(r=-0.705、p=0.02)
StO2はハイフローの方がより高く維持できている傾向にあった。
ハイフローの方が、ICの高い改善が得られた。
二つの酸素システムで、症状に違いはなかった。
<考察>
ハイフローの方がTlimが良好であった理由 1)ウォッシュアウト効果、2)PEEP効果による肺胞虚脱予防の効果
SpO2とStO2の差は、Tlimの差と相関傾向にあった
運動中のSpO2は酸素システムで大きな違いはなかったが、StO2はハイフローの方が良好な傾向を示した
→筋活動により酸素運搬能の変化によって生じた可能性。
ILDでは、筋の機能異常が報告されている。ILDにおける筋弱化のメカニズムは不明だが、デコンディショニングが重要な役割を担っているかもしれない。
(CPET後のSPO2は同等だが、StO2はハイフローの方が高い傾向(43.4%vs47.2%)運動持続時間はハイフローの方が長い(381秒vs494秒)ので、筋活動時間が長いほうがStO2が良好であったことが推測される。)