2022/08/31

6MWT中の低酸素は増悪や死亡率の予測因子

 Oxygen desaturation in 6-min walk test is a risk factor for adverse outcomes in COPD

Eur Respir J (IF: 16.67; Q1). 2016 Jul;48(1):82-91.


【背景】
6MWTはCOPDの身体機能を評価する運動テストであり、低酸素血症に関する情報を提供する。COPDの重要なアウトカム(死亡率、増悪頻度、肺機能減少、除脂肪体重減少)のリスク因子として、6MWT中の低酸素について検討した。

【方法】
Bergenコホート研究に参加している433人のCOPD患者を2006-2009年の3年間追跡。
患者特性として、肺機能、生体電気インピーダンス測定、Charlson併存症スコア、増悪歴、喫煙、動脈血ガスを使用。

【結果】
370人がベースラインの6MWTを実施。
6MWT中に低酸素を経験していた患者の死亡リスクは2倍(HR2.4、95% CI 1.2-5.1)
その後の増悪の経験リスクは50%増加(発生危険率1.6、95% CI 1.1-2.2)
FVCとFEV1.0の年間低下率は2倍(FVC 3.2%vs1.7%、FEV1.0 1.7%vs0.9%)
除脂肪体重の減少率は増加(0.18kg/m2vs0.03kg/m2)

【考察】
低酸素血症のあるCOPD患者は、低酸素血症の無いCOPDよりも予後が悪く、多次元的な重要な疾患アウトカムである。

・433人のCOPDコホート
・6MWT中は酸素無し(4人はLTOTをしていたがテスト中は酸素吸入せず)
・SpO2と脈拍を6MWT前と終了直後に測定。
・予測最大心拍数(220-年齢)に対しての運動後脈拍の割合を努力指標(idnex of effort)として計算
・低酸素血症の定義は、the Royal College of Physicians' guidelinesの定義に従い、テスト前後で4%以上の低下、テスト後SpO2<90%とした。
・カヘキシアの定義はFFMI<14kg/m-2(女性)、<17kg/m-2(男性)
肥満は、FMI >13.5 kg·m−2(女性)、 >9.3  kg·m−2 (男性)

2022/08/23

IPF患者の運動中にハイフローネーザルカニューラを使用 SpO2とStO2は必ずしも一致しない

Impact of high-flow oxygen therapy during exercise in idiopathic pulmonary fibrosis: a pilot crossover clinical trial

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2021 Nov 8;21(1):355.


【背景】
標準的な酸素療法(SOT)はIPF患者の運動耐容能を向上させる。ハイフローネーザルカニューラ(HFNC)はその他の呼吸器疾患の酸素化を改善させるが、IPFの運動能力に影響するかは検討されていない。
HFNCが、SOTと比べてIPF患者の運動耐容能を改善させると仮説した。

【方法】
前向き、クロスオーバー、パイロットランダム化研究。
6MWTにてSPO2≦85%の動作時低酸素血症のあるIPF患者を対象に、定常負荷での亜最大心肺運動負荷試験(CPET)を行い、両方の酸素供給方法を比較した。
プライマリーアウトカム:持続運動時間(Tlim)
セカンダリーアウトカム:筋酸素飽和度(StO2)、呼吸(息切れ)と下肢の症状

【結果】
対象IPF患者:平均71.7歳、男性が90%。
FVC:58±11%、DLCO:31±13%
CPETのTlimはハイフローを使用した方が長かった(494vs381、p=.01)
ハイフローは、吸気予備量(IC)も増加した(19.4vs7.1、p=.04)
同様の傾向がStO2でも得られた。
ふたつのデバイスで、呼吸困難や下肢疲労の自覚症状に違いはなかった。

【考察】
動作時低酸素のあるIPF患者において、ハイフローが運動耐容能を向上させるという最初のエビデンスを示した。
これは、換気メカニクスや筋の酸素化の変化によって説明できる。
さらに大規模な研究で、IPF患者のハイフローの効果について確証を得ることが必要であり、リハビリプログラムに取り入れることができる可能性がある。

・適格基準:室内気(RA)で実施した6MWTにてSPO2≦85%
・除外基準:IPF以外の線維性ILD、COPDや喘息合併、中等度から重度の肺高血圧、整形疾患や認知機能障害でCPETが行えない

・評価方法:最大運動負荷(WRmax)を計測し、SpO2>85%を保てるFiO2(ベンチュリーマスク)を決定。
・亜最大運動負荷試験(75%WRmax)で2回(ハイフローと通常酸素)CPETを実施
・中止基準:胸部痛、心電図異常、SpO2<80%
・CPET:10wattの負荷、50-60rpmを維持、SpO2≧85%を保てるようFiO2を付加
・通常酸素:ベンチュリーシステムで投与
・ハイフローの設定:フローは40-60L/min、FiO2は同様

・筋酸素飽和度(StO2):筋肉の血中Hb濃度を測定できるNIRS(製品ホームページ)を使用。
安静時、フリーペダル、CPET中、リカバリータイムのデータを収集。亜最大負荷時中の平均StO2、終了時(回転を維持できなくなった時点)での持続時間を収集。
さらに、StO2の低下幅(運動時の平均StO2ー安静時StO2)、運動負荷していない時期の回復(リカバリー時のStO2平均値ー亜最大運動時の平均値)を算出。

<結果>
平均6MWD436m、歩行中のSpO2は平均81%、軽度肺高血圧(心エコーで平均肺動脈圧>35mmHg)が4例。
CPET中のSPO2≧85%に要したFIO2は0.33±0.07
Tlim(運動持続時間)はハイフローの方が30%長かった
2つの酸素システムによるTlimの違いは6MWTの平均SpO2と負の相関あり(r=-0.705、p=0.02)
StO2はハイフローの方がより高く維持できている傾向にあった。
ハイフローの方が、ICの高い改善が得られた。
二つの酸素システムで、症状に違いはなかった。

<考察>
ハイフローの方がTlimが良好であった理由 1)ウォッシュアウト効果、2)PEEP効果による肺胞虚脱予防の効果
SpO2とStO2の差は、Tlimの差と相関傾向にあった
運動中のSpO2は酸素システムで大きな違いはなかったが、StO2はハイフローの方が良好な傾向を示した
→筋活動により酸素運搬能の変化によって生じた可能性。
ILDでは、筋の機能異常が報告されている。ILDにおける筋弱化のメカニズムは不明だが、デコンディショニングが重要な役割を担っているかもしれない。

(CPET後のSPO2は同等だが、StO2はハイフローの方が高い傾向(43.4%vs47.2%)運動持続時間はハイフローの方が長い(381秒vs494秒)ので、筋活動時間が長いほうがStO2が良好であったことが推測される。)

2022/08/01

動作時低酸素のみのILD患者に酸素投与はHRQOL改善と関連

Effect of ambulatory oxygen on quality of life for patients with fibrotic lung disease (AmbOx): a prospective, open-label, mixed-method, crossover randomised controlled trial

Lancet Respir Med (IF: 30.7; Q1). 2018 Oct;6(10):759-770.


【背景】
線維性肺疾患において、動作時息切れは健康関連QOLと強く関連している。息切れは、しばしば酸素不飽和と関連しているが、動作時酸素の使用についてのデータは少ない。
目的は、動作時低酸素のある間質性肺疾患患者のHRQOLと動作時酸素の影響について検討すること。

【方法】
AmbOxは前向き、オープンラベル、複合法、クロスオーバー、ランダム化比較試験。
イギリスのILDの3施設にて実施。
適格患者:18歳以上、線維性肺疾患、安静時低酸素は無く6MWTにて88%以下へ低下がある、過去2週間で呼吸器症状が安定している
参加者は1:1でランダムに酸素療法と酸素療法なしに振り分け2週間、他にクロスオーバーし、2週間実施。
ITT解析を使用
プライマリーアウトカム:the King's Brief Interstitial Lung Disease questionnaire (K-BILD)の酸素使用と酸素不使用で2週間後の変化

【結果】
2014年から2016年に84人の患者がランダム化し、41人がまず酸素療法、43人が酸素無しに振り分け。
76人がトライアルを完了させた。
酸素無しと比べて、動作時酸素療法はK-BILDのtotalスコア、息切れ、活動の著明な改善と関連。
しかし、心理的ドメインでは影響なかった。
最も共通した有害事象は上気道感染であった。
最も重大な有害事象5件のうち、2件の死亡があったが、治療との関連は考慮されなかった。

【考察】
動作時酸素は、動作時低酸素のあるILD患者のHRQOL改善と関連しており、治療オプションとしてこれらの患者群には有効であろう。
今後の検討が必要である。