Effect of ambulatory oxygen on exertional dyspnea in IPF patients without resting hypoxemia
Respir Med (IF: 3.095; Q1). 2013 Aug;107(8):1241-6.
<背景>
安静時低酸素血症が無いIPF患者に、動作時酸素投与を行う影響は明らかになっていない。
目的は、安静時に低酸素血症はないが、動作時に低酸素血症がある患者に対して、酸素投与を行う効果について検証すること。
<方法>
二重盲検無作為化比較試験。
安静時PaO2 60-80mmHgかつ6MWTでSpO2<88%の患者が対象。
標準的な6MWTと6分間自由歩行を室内気(空気)下と酸素投与下にて実施。
酸素と空気の投与量は4L/min。
息切れの程度を、歩行試験終了直後、1分後、2分後に評価。
<結果>
20人の患者(16人男性)、平均年齢73.5歳、%FVC 71.0%、%DLCO 57.0%、PaO2 72.5mmHg
息切れの程度は、それぞれの計測ポイントで有意差はなかった。
しかし、何人かの患者は、酸素投与にて息切れの改善を示した。
<考察>
酸素投与によって、動作時息切れ改善の追加効果(室内気と比較して有意差はない)は見られなかったため、動作時酸素投与をルーチンで処方することは、推奨されない。
しかし、個別性の検証は必要である。
・息切れ評価は修正borg scale
・6分間自由歩行試験は、快適歩行速度(日常的に歩く速さ)で6分間歩行。
・酸素投与下において、6MWT後のSpO2は改善した(歩行直後:84% vs 80%、1分後:90% vs 83%、2分後:96% vs 91%)
・歩行距離、心拍数、息切れ、下肢疲労感は有意差なし
考察
・COPDを対象にした同様の試験では、息切れや運動パフォーマンスの改善の効果はまちまいである
・cochrane reviewにおいて、動作時酸素投与によって息切れの改善を示したが、効果量は限定的であった
・IPFの息切れのメカニズムは複数の因子が関与しており、酸素化だけでなく、換気需要や呼吸筋機能、骨格筋機能、循環因子が影響する
・息切れの程度は患者によって様々であり、IPF患者において、低酸素血症は息切れの主な原因ではないことを示唆した
・動作時低酸素血症があることで、酸素を処方(在宅酸素)することは、息切れを改善させるとは限らず、患者のQOLを低下させるため、ルーチンで処方することは避けるべき
・興味深いことに、息切れBorgが1以上の改善で臨床的に有効とされるが、3人の患者でborg2以上の改善を示した
⇒低酸素が自覚症状に影響しており、酸素投与によって自覚症状の改善が得られた患者