2019/01/03

がん生存者の疲労感軽減に対する運動の効果(高強度vs中等度-低強度)

Randomized controlled trial of the effects of high intensity and low-to-moderate intensity exercise on physical fitness and fatigue in cancer survivors: results of the Resistance and Endurance exercise After ChemoTherapy (REACT) study

BMC Med (IF: 9.088) 2015 Oct 29;13:275.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26515383

<背景>
国際的なガイドラインにて、全てのがん生存者の標準的ケアの一部として、運動療法は推奨されている。しかし、現在、運動強度については明らかになっていない。
したがって、今回の目的は、化学療法を含む最初のがん治療を完了したがん生存患者に対して、高強度(HI)と中等度から低強度(LMI)の抵抗運動と持久力運動について待機リスト群(WLC)と比較して、身体機能と疲労感に対する効果を評価した。

<方法>
277人のがん患者を無作為に12週間のHI(n = 91),、LMI(n = 95)、WLC(n = 91)に分けた。
介入は、運動の種類、期間、頻度は同じにし、強度のみ変えた。
評価は、ベースライン(初期治療後4-6週後)と介入後。
プライマリーアウトカムは最高酸素摂取量(peakVO2)、筋力(握力、30秒椅子立ち)、自己記入の疲労感 (Multidimensional Fatigue Inventory; MFI)。
セカンダリーアウトカムは、健康関連QOL、身体活動性、日常機能、身体組成、気分、睡眠障害。
多変量直線回帰分析にて、介入効果を検証。

<結果>
HIの71%、LMIの70%の患者は、運動セッションの80%以上に参加した。
HIとLMIは、WLCと比べてPeak VO2が大きく改善。
Peak VO2の改善は、HIの方がLMIよりも大きかったが、統計的な有意差は無かった(P = 0.08)
握力と30秒椅子立ちテストには有意な介入効果は無かった。
HIとLMIは、全身的また身体的な疲労感を著明に軽減し、活動時の疲労感(MFIのサブスケール)を軽減したが、運動強度による著明な違いは無かった。
WLCと比較して、HI後の全体的なQOLと不安が著明に改善し、HIとLMI後の身体機能の改善があり、LMI後の仕事への問題が少なかった。

<考察>
がん治療が終了した後の短期間ではあるが、高強度と中等度から低強度の運動は、安全で効果的であった。
運動強度とPeak VO2の関係については、高強度の方が優れているかもしれない。
HIとLMIは、全身的、身体的疲労感の軽減に同程度の効果があった。


・運動の内容
【筋トレ】
主動作筋をターゲットにして6種類の抵抗運動を10回2セット。
強度は、高強度は1RMの70%から開始し、12週間で1RMの85%まで徐々に増やした。
LMIは1RMの40%から開始し、1RMの55%までを目標に徐々に増やした。
4週間ごとにPTが筋力を測定し、運動負荷を調整した。

【持久力】
心肺機能の改善を目的として2種類の持久運動を実施
最初の4週間:自転車8分2セット。負荷はランプテストから最大運動耐用能から2つの負荷を交互に実施。
HIは、推定耐容能の65%負荷で30分と30%負荷で60分
LMIは、推定耐容能の45%負荷で30分と30%負荷で60分
5週目以降は、インターバルセッションを追加。
運動負荷はカルボーネンの予測心拍数(HRR)で設定。
HI=HRRの80%以上、LMI=HRRの40-50%

【理学療法士の介入】
運動の監視
モチベーションカウンセリングなどで運動制限を可能な限り除外し、活動的なライフスタイルを推奨。
患者は、週3回、1回30分の中等度強度の活動を行うよう運動指導した。
合わせて、自宅での管理された運動を週2回実施し、週3回がん生存者の身体活動ガイドラインに基づいて活動した。