2017/07/25

安静時低酸素の無いIPF患者に酸素投与すると、運動能力と息切れが改善

Greater endurance capacity and improved dyspnoea with acute
oxygen supplementation in idiopathic pulmonary fibrosis patients
without resting hypoxaemia

Respirology. 2017 Jul;22(5):957-964.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28225205

<背景>
酸素療法は、特発性肺線維症(IPF)によく処方されるが、効果についてあまり提供されていない。この研究の目的は、酸化ストレス、サイトカインの産生、骨格筋の代謝、運動時の身体反応に関する酸素の効果を検討すること。

<方法>
IPF患者11人に酸素療法を実施:安静時に1時間の圧縮空気もしくはFiO2 0.5の投与と、最大運動負荷の85%で自転車負荷試験を実施。血液サンプルは安静時と運動中に採取:酸化ストレスマーカー、骨格筋の代謝、サイトカイン。プロトコルは、1週間後に交互に実施。

<結果>
室内空気と圧縮空気を比較すると、安静時にバイオマーカー濃度に違いは無く、運動持続時間、息切れ、収縮期血圧、最低SpO2、2分と5分のSpO2、最大運動キサンチン濃度は改善・向上していた。
圧縮空気は、2分時にIL-10が著明に上昇していた。
チオバルビツール酸化反応物質(TBARs)、IL-6、TNF-α、クレアチンキナーゼ、乳酸、心拍数、疲労感は、2つの介入で差は無かった。

<結論>
IPF患者において、安静時にFiO2 0.5の酸素を吸入することは安全である。
運動中の酸素吸入は、運動耐容能の改善、運動誘発性低酸素の軽減、息切れの軽減をもたらす。
酸素と骨格筋代謝の向上については今後検討すべきである。

・ニュージーランドにて酸素療法をしていないIPF患者11人をリクルートして、室内吸入気下にてSpO2≦85%になるものは除外
・ダブルブラインド無作為化クロスオーバー試験で実施。
・1周目に肺機能と運動負荷試験を実施。
・その1週後にFiO2 0.5もしくは圧縮空気15L/minをベンチュリ―マスクで1時間安静にして吸入。(FiO2 0.5の根拠は、COPDの先行研究にてFiO2 0.5で運動耐容能が向上したという結果から)
・その状態で定常負荷試験を最大負荷の85%で実施。

・患者の平均年齢71歳、%FVC 76%、%TLCO 49%
・運動持続時間は酸素吸入で有意に増加(425秒vs524秒)、SpO2の低下も少ない、
サイトカインの濃度
A)IL-6、B)IL-10、C)TNF-α
□:室内吸入気 ■:酸素吸入

運動によるサイトカインの変化
A)IL-6、B)IL-10、C)TNF-α
○:室内吸入気 ●:酸素吸入


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低酸素が無くても、酸素吸入を行うことで、炎症マーカーが低下していたというスタディ。
軽症でも酸素吸入をためらう必要は無いのかもしれない。