2024/11/02

術前身体活動は術後アウトカムと関連するか。SA and MA

Is preoperative physical activity level of patients undergoing cancer surgery associated with postoperative outcomes? A systematic review and meta-analysis

Eur J Surg Oncol (IF: 4.42; Q2). 2019 Apr;45(4):510-518.


【背景】
がんの手術を行った患者において、術前の身体活動が術後アウトカムを改善させる役割があるのかについては不明確である。

【目的】
がん手術を行う患者の術前身体活動(PA)が、術後合併症率、入院日数(LOS)、QOLと関連するのかを検討すること。

【方法】
2017年11月に電子文献サイトでリサーチを行った。
PAレベルと術後合併症、LOS、QOLを検討した論文を対象とした。
バイアスリスクは、QUIPS toolを使用。
可能であればオッズ比(OR)と95%CIをランダム効果モデルを使用して算出した。

【結果】
13本の研究(5523人)が対象。
全体的にバイアスリスクは低いから中等度であった。
より高いPAレベルは、術後合併症率と関連していなかった(OR = 2.60; 95%CI = 0.59 to 11.37)が、LOS短縮 (OR = 3.66; 95%CI = 1.38 to 9.6)と術後QOL (OR = 1.29; 95%CI = 1.11 to 1.49)との関連は認めた。


【考察】
今回得られた結果は、より高いPAレベルは、より良い術後アウトカム、特にLOS短縮とQOLと関連しているかもしれないことを示した。
術前PAと術後アウトカムの関連についてより高い質の研究が必要である。

2024/10/23

動的肺過膨張と心血管系の反応

Cardiovascular effects of exercise induced dynamic hyperinflation in COPD patients-Dynamically hyperinflated and non-hyperinflated subgroups

PLoS One (IF: 3.24; Q2). 2023 Jan 20;18(1):e0274585.


【背景】
呼吸数増加と呼気制限は動的肺過膨張(DH)を誘発し、胸腔内圧の上昇により静脈還流の悪化に関連し、1回拍出量(SV)や心拍出量(CO)へ悪影響を及ぼしているかもしれない。
COPDにおいて、運動に対する循環の適応不良がDHと関連しているのか、心血管能力自体が低下しているのか明らかになっていない。
COPD患者の一部のみが運動中の動的肺過膨張を呈している。

【方法】
肺のメカニズムと心血管の変化を示すために、運動中の動的肺過膨張のある、もしくは無いCOPD患者を対象として、新たに研究を設定した。
33人の同じ重症度と左室駆出率のCOPD患者を対象とした。
非侵襲的なデバイスを用いてthe left ventricular ejection time index (LVETi) を含む心血管パラメーターと運動中の最大吸気量(IC)を測定した。

【結果】
21人のCOPD患者がDHを呈しており、12人はDHは無かった。
最大負荷時と安静時の差を計測した。
ΔSVとΔCOはDH無しグループのほうが高かった
(ΔSV: non-DH 9,7 ± 13,22 ml vs. DH -3,6 ± 14,34 ml, p = 0.0142; 
 ΔCO: non-DH 2,26 ± 1,46 l/min vs. DH 0,88 ± 1,35 l/min, p = 0.0024).
LVETi はどちらのグループでも違いはなかった
最大負荷時の酸素運搬能(DO2)は、DH無しの方が高かった。

【考察】
COPDにおいて、運動時の心血管系の運動適応は低いことは、運動時の肺過膨張が関連している可能性があると結論付けた。


2024/10/18

手術不能肺がんの身体活動と死亡率の減少の関係

Association between Physical Activity and Reduced Mortality in Inoperable Lung Cancer

J Clin Med (IF: 3.3; Q4). 2023 Nov 27;12(23):7346.


手術不能な肺がんを対象に、デバイスで測定された身体活動、座位時間と12ヶ月後の死亡率の関係について検討した。
治療開始前7日間、加速度計を装着した。
PA,座位時間の変数は、軽負荷PA、中等度から高強度のPA(MVPA)、歩数、座位時間の合計、通常の座位継続時間を使用。
疾患ステージ、臨床的変数、12か月後の死亡率を記録より収集。
Cox回帰モデルをPA、座位時間と12ヶ月後の死亡率の関係を推定。
モデルは、疾患ステージと好中球-リンパ球比を調整因子とした。

全てのPAと座位時間は、分析のために中央値で2分した。

89人が対象(70±10歳、62%男性)
12ヶ月後の死亡率は30%。
MVPAが1日4.6分未満と比較して、4.6分より多いグループの12ヶ月後の死亡相対リスクは60%減少(ハザード比 0.4、95%CI 0.16-0.96)
その他のPA、座位時間の変数は、12か月後の死亡率とは関連していなかった。
MVPAがより多いほど、12ヶ月後の死亡率減少と関連していた。

2024/10/17

口すぼめ呼吸の効果 systematic review

Effects of acute use of pursed-lips breathing during exercise in patients with COPD: a systematic review and meta-analysis

Physiotherapy (IF: 3.36; Q1). 2018 Mar;104(1):9-17.


【背景】
口すぼめ呼吸(PLB)は、COPD患者が息切れ軽減のために広く用いられている呼吸戦略であり、運動耐容能向上のための呼吸戦略として広く指導されている。
目的は、運動中のCOPD患者を対象に、PLBをしようすることの急性効果を、運動パフォーマンス、息切れ、換気パラメーター、酸素飽和度をっ用いて検証する事

【方法】
運動中のCOPD患者に対する呼吸戦略としてPLBについて検討した横断研究、ランダム化、準ランダム化比較試験を対象とした。

【結果】
8件の研究が対象。
メタアナリシスの結果、運動中のPLBの効果は、分時換気量と呼吸数を減少させることであった。
6MWDには統計的な有意差は認めなかった。

【考察】
PLBは運動中のCOPD患者の分時換気量と呼吸数を減少させた。
PLBによる恩恵を受けられる患者(responder)については不明のままである。
今後の研究では、運動耐容能や症状についての質の高い検証が必要である。



2024/09/27

トレッドミルとエルゴの運動における違い

Perceptual and Physiologic Responses During Treadmill and Cycle Exercise in Patients With COPD

CHEST 2009; 135:384-390

【背景】
エルゴメーターは、呼吸器疾患患者における伝統的な運動方法である。
これは知覚的な反応ではなく、トレッドミルよりも好みの運動であるために用いられている。
我々の仮説は、
1)息切れと酸素摂取量はエルゴよりもトレッドミルの方が高い
2)下肢疲労感とVO2には回帰直線的な関連がある。これはトレッドミルよりもエルゴの方が強い。

【方法】
20人のCOPD患者。エルゴとトレッドミルでの運動中の息切れと下肢疲労感の経時的な変化を記録した。

【結果】
エルゴの方が下肢疲労感と息切れをより早期に感じていた。
最大の息切れの程度はトレッドミルのほうが高かった。一方下肢疲労感はエルゴの方が高かった。
息切れの回帰直線、VO2と分時換気量はトレッドミルの方が高かった。
下肢疲労感とVO2の回帰直線はトレッドミルとエルゴで同等であった。
最大VO2は、トレッドミルの方が高かった。

【考察】
COPD患者において、トレッドミル歩行とエルゴで異なる自覚症状と身体的な反応を示していた。
息切れの程度は、同じVO2レベルにおいてはエルゴの方がより高く感じていたが、身体的刺激(VO2 と VE)としては、トレッドミルの方が高かった。
下肢疲労感はエルゴを行う際の主な症状である。