2025/09/12

6MWDと5回起立、30秒起立の関連、カットオフ

 A comparative study of the five-repetition sit-to-stand test and the 30-second sit-to-stand test to assess exercise tolerance in COPD patients

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018 Sep 10;13:2833–2839.



目的
起立テストはCOPDの運動耐容能評価で用いられるが、どの起立テストが運動耐容能の低下を予測するのか、比較したものは無い。
5回起立(5STS)、30秒起立(30STS)を比較し、どちらが6MWD低下を予測するかを検証した。

Population
 安定期COPD患者128例

Exposure
 5STSと30STSを行い、その際の息切れmBorg Scaleを質問
 その他の評価項目:肺機能、mMRC、CAT、大腿四頭筋力(QMS)

Comparison
 対照群はなし

Outcome
 6MWDやその他評価と5STS,30STSの相関
 6MWD<350mを予測する5STSと30STSのカットオフを算出


【結果】
・相関
5STSと30STS:negativeな強い相関(r=−0.783, P<0.001).
5STSと6MWD:(r=−0.508, P<0.001) 
30STSと6MWD:(r=0.528, P<0.001)

・6MWD<350mを予測するカットオフ
5STS:6.25秒(感度76.0% 特異度62.8% AUC0.731)
30STS:21.5回(感度62.0% 特異度75.0% AUC0.724)

--------------------------------
5STS 6.2秒って結構速いなという印象。
30秒の方が持久力反映するのかと思いきや、思ったよりも相関係数に差が無かった。

2025/06/25

転移性小細胞肺がん 運動耐容能、運動習慣の予後的意義

Prognostic significance of functional capacity and exercise behavior in patients with metastatic non-small cell lung cancer

Lung Cancer. 2012 May;76(2):248-52.


Population
 StageⅢB、Ⅳの再発転移(手術不能)NSCLC患者118例
 平均年齢61±10歳、BMI26 6MWD 396m

Exposure
 運動機能評価:6MWT
 運動習慣(行動):自己記入式で評価(the leisure score index (LSI) of the Godin Leisure-Time Exercise Questionnaire (GLTEQ))
(LSIとは・・ 通常の1週間での軽度、中等度、高強度の活動を質問し、それぞれの強度ごとに平均的な頻度、時間を調査する。総運動時間、各強度ごとの運動頻度を算出。単位はMETs-hour/week.)
 3METs:軽度、5METs:中等度、高強度:9METs

Comparison
 運動機能と運動習慣、生存との関係について解析
 PS2以上と未満に分けて、6MWDと運動習慣の生存予測への寄与を評価するCOXモデルを構築

Outcome
 運動機能、運動習慣、生存期間
 フォロー期間は、中央値26.6カ月。この間に77例が死亡(65%)
 6MWDを3分位すると、中央値283m(90-356.8m)、中央値416m(358.5-450m)、中央値510m(452-640m)。
 6MWDは生存の独立した予測因子であり、50m改善するごとに、死亡リスクは13%減少
 6MWD<358.5mと比較した、調整された危険率(adjusted hazard ratio)は、358.5-450mは0.61、450以上は0.48
 運動行動(身体活動)と予後に関連は示されr、9MWTs-hour/week未満は12.89カ月、9METs-hour/week以上は25.63カ月生存していた。

新規性:6MWDのよう運動機能評価が、これまでリスク因子とされていたもの(PS)よりも生存を強く予測した。

運動機能評価が、有効ないくつかの理由
・PSでは測定できない、ATP合成のためのO2輸送および心血管系と骨格筋系の統合能力を評価しており、この酸素輸送効率は、人間が健康を長く維持するために重要な要素の一つである。
・運動のエンドポイント(最大酸素摂取量や6MWD)が、心血管系など様々な臨床現場で利用されており、全死亡原因を強く予測しカットオフポイントも報告されている。
・運動能力評価は、治療介入にもなり得る

9METs-hour/weekとはどのくらい?
週合計で9METsの身体活動
・普通のウォーキング(4.0km/h 3METs 30分 週6日)
・毎日ラジオ体操(4.0METs 15分 週6日)+軽いスクワット(3.0METs 20分 週3回)

これなら習慣になればできそうな気もします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
運動能力評価と合わせて身体活動の評価も重要である
9METs-hour/weekは、実現可能な感じもするが、6MWD380mというのは絶妙に活動能力が変わりそうなラインな印象(動けなくはないけど、ちょっと運動能力は低い方かな)。

2025/06/24

cancer surviverの身体活動レベル(IPAQ)と関連する因子

Associations among physical activity, comorbidity, functional capacity, peripheral muscle strength and depression in breast cancer survivors

Asian Pac J Cancer Prev. 2015;16(2):585-9.


目的
 乳がんサバイバーにおいて、身体活動レベルと関連する因子(併存症、運動耐容能、骨格筋力、心理状態)を調べる事。

Population 
 20-60歳、Stage1-2で化学療法を行った40人のがん患者。
 少なくとも3年前には治療が完了している。
 
Exposure 
 なし

Comparison 
 なし

Outcome
 身体活動:IPAQ
 骨格筋力:大腿四頭筋の等尺性収縮筋力
 運動耐容能:6MWT
 心理状態:HADS(不安、抑うつ)
 併存症:Charlson Comorbidity Index


結果:
 身体活動は、40%が不活動、57.5%は最小の活動、2.5%が十分活動的
 IPAQ歩行スコア大腿四頭筋力、HADS抑うつスコア、併存症スコアに相関あり
 IPAQ合計スコアと大腿四頭筋、HADS抑うつスコアに良い相関あり
 6MWTはどの項目とも関連が無かった
 回帰分析で、大腿四頭筋力と心理状態は、身体活動レベルを予測する因子であり、二つを合わせると身体活動レベルの35%を占めている。


----------------------------------
身体活動≠運動耐容能
筋力、抑うつ状態の方が活動量と関連が強かったと。

2025/06/20

COPD合併肺癌の術後運動療法の効果

Effect of postoperative exercise training on physical function and quality of life of lung cancer patients with chronic obstructive pulmonary disease: A randomized controlled trial

Medicine (Baltimore). 2024 Mar 8;103(10):e37285.


Population
肺癌(非小細胞肺がん)とCOPDの両方を診断されている84例。
無作為に運動グループとコントロールグループに振り分け。

Exposure
両グループとも術後1週間は標準的なリハビリを実施
 →早期離床、咳嗽、呼吸法、酸素療法、ネブライザー

その後・・
 運動グループ:24回のセッションから構成される運動プログラムに参加
 ⇒エルゴ30分、1日2回、週6日、強度は予測HR20%から始めて60-70%まで段階的に上昇。 

Comparison
 コントロールグループ:必要であれば酸素療法とネブライザーのみ。

Outocome
 ベースラインをオペ3日前、エンドポイントは運動プログラム終了の1日後に評価
 CPET、6MWT、歩数、QOL(EOR-QLQ-C30)

結果:
・CPET(-3.2 vs -1.2、p=.043)、歩行距離(-83.1 vs -48.6、p=.029)、肺機能(FVC; -577.7 vs -378.3。p=.034)、歩数(-2857 vs -1888、p=.002)は、運動グループの方がベースラインからの低下が少ない。
・QOLは有意差なし。

新規性:肺がん+COPDの術後運動療法の効果を検証したRCTであること

----------------------------------
COPD合併していない術後肺癌よりも、運動機能の回復に時間がかかる印象。
1日2回、週6日を24セッション=約2週間 ? 行ってもベースラインから-50mとすると、リカバリーに時間がかかるか。

COPD合併ということは、元の活動量自体も低めだと推測される。ベースの活動量が低いと運動に対する忍容性や反応性も違うのだろうか。

2025/03/24

上肢活動時の横隔膜の姿勢制御に関する働き

Postural activity of the diaphragm is reduced in humans when respiratory demand increases

Journal of Physiology (2001), 537.3, pp.999–1008



・横隔膜とその他の呼吸筋の活動は通常、四肢を動かした時の体幹の姿勢制御のように、その他の活動と同調する。
呼吸運動ニューロンによる2つのインプットの和によって統合が生じるかもしれない。
本研究では、過換気によって呼吸ドライブが増加した時、横隔膜の姿勢活動が変化するかを検討した。

・横隔膜とその他体幹筋の筋電図(ECG)を13人の健常者の筋内電極で記録した。コントロールされた状態で、死腔を増やすような呼吸活動を行い、脊柱の安定性を乱すために50秒間隔で10秒間連続を4set対象者は素早く腕を動かした。

・呼気終末CO2と換気量は最初の60−120秒で増加し、プラトーに達した。死腔換気を始めて素早く腕を動かしている間、筋電図が強直し、呼吸の周波数で変調が重なった。
しかし、過換気を開始し60秒後の上肢活動しているとき、呼気中の緊張性横隔膜筋電図と腕の動きに伴う位相性筋電図が減少または消失した。
同様の変化が呼気の腹横筋でも認められたが、脊柱起立筋では異なっていた。
腹腔内圧の平均変化と腕の動きに伴う位相変化は、60秒の過呼吸の後に減少した。

・本研究のデータは、中枢性呼吸駆動の増加は、運動ニューロンに到達する姿勢指令を減衰させる可能性がある。この減衰は主要な吸気筋と呼気筋に影響を及ぼし、運動ニューロン以前の部位で調整されている可能性が高い。