2022/12/23

COPD増悪後、6MWD改善に大腿四頭筋力が関連

Respiratory and peripheral muscle strength influence recovery of exercise capacity after severe exacerbation of COPD? An observational prospective cohort study

Heart Lung (IF: 2.21; Q4). 2022 Nov 23;58:91-97.


【背景】
COPD急性増悪(AECOPD)は運動耐容能が低下し、数カ月持続するかもしれない。
筋力と運動耐容能の回復の関係についてはあまり知られていない。

【目的】
呼吸筋力と骨格筋力がAECOPDで入院した患者の運動耐容能の回復を促進させるかどうかを検討すること。

【方法】
27人のAECOPD患者(平均年齢69歳)が対象
入院して24-72時間以内に評価を実施:1)呼吸筋力(MIP、MEP)、2)骨格筋力(握力、大腿四頭筋力)、3)運動耐容能(6MWD)
6MWDは30日後に再評価し、運動耐容能の回復を評価。

【結果】
30日後、6MWDのMCID(30m以上の改善)を63%の患者が達成、37%の患者が改善しなかった(30m未満の改善)。
入院中、改善しないグループは、改善グループと比べて大腿四頭筋力が低く、MIP、MEP、握力に明らかな違いは無かった。
大腿四頭筋力のみが、運動耐容能の改善と関連していた(r = 0.56; P = 0.003)。

【考察】
入院中の大腿四頭筋力の弱化は、30日後の運動耐容能の改善が乏しい。
この結果は、大腿四頭筋力の改善に対する早期リハビリが、AECOPD後の機能改善を加速させることを示唆した。

2022/12/10

5回起立2点以下は重症増悪の予測

The five-repetition sit-to-stand test is a predictive factor of severe exacerbations in COPD

Ther Adv Chronic Dis (IF: 5.09; Q1). 2021 Jan 22;12:2040622320986718.


【背景】
6MWTはCOPDの増悪を予測するが、5回起立(5STS)や4m歩行速度(4MGS)のようにより迅速で、簡便な評価に関する研究が必要とされている。

【目的】
安定期COPD患者の重症増悪を予測するために5STSや4MGSが有効であるかを検討すること
入院のハイリスク患者を同定するために最も優れた評価を検討すること

【方法】
137人の安定期COPD患者
多変量ロジスティック回帰モデルを構築し、6MWT、5STS、4MGSが重症増悪と関連しているかどうかを評価した。
ROC曲線とAUCで重症増悪する患者を同定するための、それぞれのテストの正確性を評価。

【結果】
6MWT<350m、5STS≦2点(SPPBのスコアリング)が年齢と前年の増悪回数と独立して重症増悪と関連していた。
5STSと6MWTは、非常によく似た95%CI予測能力と識別能力を示した。
オッズ比は、5STS:3.2(95%CI1.14-8.96)、6MWT:3.84(95%CI1.14-12.94)
AUCは、5STS:0.793(95% CI 0.704-0.882)、6MWT:0.783(95% CI 0.686-0.879)

【考察】
5STSが重症増悪をもっともよく予測した。
5STSは、入院のハイリスク患者を同定するための6MWTに変わる評価となりえるかもしれない。

2022/12/01

運動時低酸素血症(EID)の予測因子 DLCO、CATスコア

Prediction of exercise-induced desaturation in COPD patients without resting hypoxemia: a retrospective study

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2022 Nov 8;22(1):405. 


【背景】
運動誘発性低酸素血症(EID)に関して広く用いられている基準はない。
目的は、COPD患者でEIDの基準を2つ用いて、EIDに関するリスク因子や予測について検討すること。

【方法】
安定期COPD患者で6MWTをSpO2のモニタリングをしながら実施。
2つの基準を用いてEID発生を評価する基準とした
基準A:安静時SpO2-最低SpO2≧4%もしくは最低SpO2≦90%
基準B:安静時SpO2-終了時SpO2≧4%もしくは終了時SpO2≦90%
その他の評価として、肺機能、mMRC、CAT、BODE index、CTでの気腫化を評価。
単変量と多変量ロジスティック回帰分析でEID出現の因子を同定。
6MWTにおける予測EIDの項目をROC曲線で推定した。

【結果】
124人の患者が対象。
基準AでのEID発現率は62.1%、基準Bでは51.6%であった。
基準Bで発見したEID患者はすべて、基準Aで新たに発見した13人に含まれていた。
2つの基準の間に、統計的な有意差はなかったが、見事に一致していた(Kappa = 0.807, P = 0.001)
ロジスティック回帰分析において、%DLCO、%DLCO/VA、CATスコア、平均密度、PD15(CT肺濃度の15パーセンタイル)、気腫量、%LAAがEIDの重要な決定要因であった。
EIDを予測するためのカットオフは、
%DLCO:50.45%(AUC0.689)
%DLCO/VA:75.0%(AUC0.707)
CATスコア:15点(AUC0.727)
PD15:- 955.00HU(AUC0.691)
平均密度:- 856.46HU(AUC0.671)
気腫量:338.14 ml(AUC0.668)
%LAA:7.63%(AUC0.656)

【考察】
2つの基準でEIDを評価し、良好な結果が得られ、基準Aのように最低SpO2に着目した方がよりEID患者を発見できた。
条件が絞られると、基準BのようにCOPD患者のEID評価がより評価できる。
EIDの予測においては、%DLCO、%DLCO/VA、CATスコア、CTでの気腫量が、EIDを発見するための統計的に有意な評価であった。

※DLCO:拡散能の指標。肺容量の大きさに依存する(肺が大きければ高い)
※DLCO/VA:肺の単位体積(1.0L)あたりのDLCO。肺容量を補正(肺の大きさの影響を取り除いた)した指標。