2022/11/23

運動耐容能と身体活動の関係 "Can do" "do do" concept

"Can do" versus "do do": A Novel Concept to Better Understand Physical Functioning in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease

J Clin Med (IF: 3.3; Q4). 2019 Mar 11;8(3):340. 


【背景】
運動耐容能(physical capacity:PC)と身体活動(physical activity:PA)は関連しているが、身体機能の異なる要素である。この枠組みがCOPD患者の身体機能障害をよく理解するのに有効であることはあまり知られていない。
目的は、
1)PC-PAで4分割し、COPD患者の分布をみる事
2)これら4分割における臨床的特徴に違いがあるかを検討する事。

【方法】
PCは6MWDを使用。PAは加速度計で計測。
4分割は、
1)低PC(予測6MWDの70%未満かつ低PA(5000歩/day未満)="can't do, don't do"
2)高PCかつ低PA="can do, don't do"
3)低PCかつ高PA="can't do, do do"
4)高PCかつ高PA="can do, do do"

【結果】
662人のCOPD患者を分布した
"can't do, don't do": 34%
"can do, don't do": 14%
 "can't do, do do": 21%
 "can do, do do": 31%. 
教育レベルを除くすべての臨床パラメーターに統計的有意差を認めた



【考察】
COPDにおけるPC-PAの概念について示した。
この概念は臨床的に実用的であり、COPD患者の身体機能障害を理解するために有効であり、身体機能改善への適切な介入方法の選択を良くさせるかもしれない。


2022/10/23

COPDの動作時低酸素血症と身体活動の関係 Int J COPD 2019

Physical Activity in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease on Long-Term Oxygen Therapy: A Cross-Sectional Study

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis (IF: 2.77; Q1). 2019 Dec 5;14:2815-2823.


【背景】
長期酸素療法(LTOT)を行ってるCOPD患者の身体活動に関して評価した研究は少ない。
目的は、LTOTを行っており、低酸素血症のあるCOPD患者の身体活動を評価する事。

【方法】
横断研究
肺機能、動脈血ガス、呼吸筋力、骨格筋力、6MWD、1日の消費エネルギー、歩数、健康関連QOLを評価。
LTOTを行っているCOPDグループ(LTOT)と、
2つのコントロールグループ:
 動作時低酸素があるがLTOTは行っていないグループ(HYPOX)
 動作時低酸素血症の無いCOPDグループ(COPD)に分けて比較。
(LTOT vs HYPOX、LTOT vs COPDで比較している)

【結果】
グループ間の患者背景、体格、骨格筋、呼吸筋力に差はなかった。
他のグループと比べ、LTOT患者は、重症の気流閉塞や肺過膨張があり、併存疾患の数や重症度が高く、6MWDが短く、6MWT中の最低SpO2も低く、QOLも悪い。
LTOT患者は、COPDと比べ、1日の消費エネルギーが少なく、3.0METs以上の時間が短く、座っている時間が長い。また、歩数はLTOTグループが少ない。
LTOT vs HYPOXで、身体活動に関するパラメーターの著明な違いはなかった。
LTOT患者において、歩数は、6MWDと強く相関しており、気流閉塞や酸素化の程度、併存症、QOLとは中等度の相関。骨格筋や呼吸筋力は相関なし。
COPDとHYPOX患者では、歩数は6MWDと酸素化(P/F ratio)と強く相関。
6MWD中の平均SpO2と6MWDはどのグループでも相関していなかった。

【考察】
LTOTを行っているCOPD患者は、動作時低酸素の有無に関わらず、LTOTを必要としない患者よりも身体活動が少なかった。
動作時低酸素のある患者では、低酸素の無い患者よりも身体活動が少なかった。

・慢性的に低酸素血症のあるCOPDにおいては疾患の進行や酸素療法(LTOT)が必要となるなど身体活動が著明に低下する要因がある
・低酸素血症の是正は生理学的な改善をもたらすが、社会からの孤立や不活動など生理学的、社会的な問題と関連するかもしれない
・現時点で、運動誘発性低酸素血症や酸素供給デバイスの負担が身体活動にもたらす影響についての情報はない

・仮説:LTOTを行っているCOPD患者は、LTOTが必要ない患者よりも身体活動が少ない

・適格基準:年齢40-85歳、男女、COPDと診断されている、離床的に安定している(pH-7.38-7.42、過去1週間に薬剤の変更が無い)
・除外基準:過去6カ月以内に呼吸リハプログラムを行っている、PAに減少に関連する整形・神経疾患、認知機能障害、精神障害

・患者を3グループに分けた
1.長期酸素グループ(LTOT):過去3カ月間、24時間LTOTを行っている。酸素デバイスは、安静時は液体酸素、移動時はポータブルデバイスとカートを使用
2.低酸素グループ(HYPOX):6MWTにて動作時低酸素があるが、LTOTが必要ない
3.COPDグループ(COPD):6MWTにて動作時低低酸素が無く、LTOTが必要ない

・評価項目
性別、年齢、BMI、並存症の数(CIRS)、並存症指数(CI)、重症度(SI)
LTOTグループのみは、いつLTOTを始めたか、運搬方法、安静時と動作時の酸素流量
動作時低酸素の定義:6MWT中のSpO2が90%未満へ4%低下、もしくは、テスト中の平均SPO2が88%未満。LTOTグループは、いつも使用しているデバイスと酸素流量でテストを実施
そのほかの評価項目:最大吸気/呼気筋力、大腿四頭筋力、上腕二頭筋力、身体活動(Sense Wear Armbandを右上腕中間位に装着)
・身体活動計測は、週末を含めた連続3日、20時間以上装着できていた日が解析対象
・身体活動の内容:平均エネルギー消費、平均歩数、平均中等度活動時間(3METs以上)、平均安静時間(1.5METs以下)、平均睡眠時間と臥位時間
・QOLはEQ-5DとEQ-5D-VASを使用

各グループの1日の歩数
HOTを導入すると、歩数が有意に減少していた

HOT機器で消費カロリーに違いが生じていた
通常の携帯型ボンベと酸素カートとの比較


2022/09/26

電気刺激療法時の代謝応答

Metabolic load during strength training or NMES in individuals with COPD: results from the DICES trial

BMC Pulm Med (IF: 3.32; Q2). 2014 Sep 2;14:146.


【背景】
筋力トレーニングと神経筋電気刺激(NMES)はCOPD患者の筋機能、運動パフォーマンス、健康状態を改善させる。
目的は、これらのトレーニング方法の代謝負荷を分析すること。

【方法】
24人のCOPD患者(FEV1: 34 ± 2% predicted, men: 58%, age: 66 (61-68) years)が対象
最大酸素摂取量(VO2)、最大分時換気量(VE)、心拍数、酸素飽和度、症状のスコアを高負荷(HF)NMES:75Hz、低負荷(LF)NMES:15Hz、筋力トレーニングで呼吸リハプログラム実施中の3つのタイミング(ベースライン、中間、8週後)で測定。

【結果】
介入によって、HF、LF、筋トレ中のVO2は変わりなかった。
VEは、筋トレ、LFでは経過中に変化なし。HFでは増加。
VO2とVEは、LFやHFと比べて、筋トレ中に有意に高かった。
酸素飽和度は、ベースラインの筋トレとHF中に低下を認めたが、そのほかの測定時では変化無かった。
心拍数はベースラインと比較してどのグループでも上昇を認め、筋トレ後が特に大きく上昇していた。
息切れ、下肢疲労、筋肉痛(muscle pain)のスコア
HF:1→3、0.5→2、0→6
LF:2→3、2→5、0→9
筋トレ:2→5、1.5→4、0→28

2022/09/14

COPD患者の低酸素血症について:原因、影響、疾患の進行 Int j COPD2011

Hypoxemia in patients with COPD: cause, effects, and disease progression

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis (IF: 2.77; Q1). 2011;6:199-208.


COPDは、世界的な死亡や機能障害の主な原因である。肺胞低酸素とその結果として生じる低酸素血症は疾患重症度が増すにつれて、罹患率も上昇する。
換気血流ミスマッチが、気流制限と気腫化の結果として生じ、この低酸素の重要な要素である。これは睡眠や運動によって悪化することがあるかもしれない。
未治療の慢性低酸素血症は、肺高血圧症、二次的な多血症、全身炎症、骨格筋異常など、COPDの進行と関連している。
これらの要素の併発がQOL低下、運動耐容能低下、心血管合併症のリスク増加、死亡リスク増加につながる。
睡眠時の呼吸障害の併発は、COPD患者のうち少数ではあるが、これらの合併症リスクを高めると考えられる。
長期間酸素療法は、肺血行動態の改善、赤血球増加の抑制、重度の低酸素血症を伴う呼吸不全患者の生存率向上を示す。
しかし、動作時の低酸素血症、睡眠時のみの低酸素、軽度から中等度の安静時低酸素のある患者に対しての最適な治療に関しては明らかになっていない。

【COPDにおける低酸素血症の病態生理】
・典型的なCOPDの低酸素血症は、気流制限と気腫化による肺胞毛細血管床減少による換気血流比不均等(V/Q mismatch)の結果生じている。
・気腫化タイプのCOPDでは、換気の少ない肺のユニットが増え(V/Q比の増加)、生理学的な死腔量が増加する。
・気道病変タイプでは、V/Q比が小さいことが多く、不均質な肺胞低換気、低換気領域への血流、その結果生じる生理学的シャントが生じる。
・気腫化や細気管支病変によるV/Qミスマッチは軽症COPDで観測されるが、疾患進行に伴い出現頻度は増加する。
・COPD増悪では、V/Q比の不均等が増加する。また、静脈血酸素飽和度の低下により観測される組織での酸素消費の増加が増悪中の低酸素を助長するが、これは、心拍出量増加によって相対的に相殺される。

【動作時低酸素血症とCOPD】
・運動は、換気の分布が均等になることによるV/Qミスマッチの改善により、軽症COPDにおいてはガス交換能を改善させる。
・しかし、重症になると、V/Qミスマッチと骨格筋の酸素消費量が増加し、動的肺過膨張も加わり、結果として動作時低酸素を生じる。
・動作時低酸素は死亡リスクの増加と関連するが、酸素療法の役割(生存率を改善するか)については明らかでない。
・酸素により、短期間の症状緩和や運動パフォーマンスを改善するとの報告もいくつかあるが、長期のデータは不足している。
・動作時の酸素療法が生存率を延長するかについてのエビデンスは少ない。
・酸素を使用することは、無害ではなく逆効果であることもある(後述)

【低酸素性肺高血圧】
・低酸素はCOPD患者の肺高血圧症の進行に影響する重要な要因である
・罹患率は不明だが、中等症から重症COPDにてよく観測される
・120人の重症肺気腫患者を対象にした報告で、右心カテーテルで測定した肺動脈圧が90.8%の患者で基準値以上であった。
・215人の肺移植待機中のCOPD患者にて、肺高血圧が50.2%の症例で認められた。
・別の報告では、998人中27人でのみ肺動脈圧が40mmHg以上であったとしている。
・Thabutらは、中等症から重症COPDで低酸素があり、重度の肺高血圧のある患者の非典型的な患者の特徴を明記→睡眠時無呼吸、肥満、慢性血栓性疾患などの並存症がある
・COPD関連の肺高血圧は緩徐に進行するが、増悪時は一時的に上昇する
・右心不全、四肢浮腫など肺性心の特徴的な症状は稀なケース

【解剖的な肺高血圧進行の要素】
・肺血管床の減少、血栓塞栓症、肺血管収縮とリモデリング
・肺高血圧のあるCOPDの肺循環の特徴=血管内膜の肥厚や細動脈の筋性動脈化:muscularization of arteriole(動脈硬化による正常なら筋層はほとんど存在しない細動脈(20~30μm)にまで筋層が出現する)による血管腔狭小化がある
・低酸素性肺血管抵抗の上昇は、低酸素の重症度や機関に付随して出現する
・分子レベルでの原因は不明
・Rhoキナーゼの活動が、低酸素により活性化され、血管の緊張を高めているかもしれない
・Rhoキナーゼ(Rho kinase):血管収縮に必要な酵素
・低酸素が血管内皮の機能障害(血管収縮と拡張のバランスが崩れる)を引き起こしている可能性
・血管内皮由来の血管拡張メディエーターに一酸化窒素がある
・低酸素は血管内皮性の血管弛緩効果が重症COPDでは障害されており、NOが全身にいきわたらないことを示唆する。
・逆に、低酸素によってエンドセリン1(血管収縮作用を持つ血管内皮由来のタンパク)のような血管収縮メディエーターの産生が増大されることによって、血圧上昇を招いている。

【長期酸素療法(LTOT)】
・肺高血圧のあるCOPDの治療として選択される。
・夜間の持続酸素投与によって、血管抵抗や血圧が減少することが報告された。
・LTOTは肺血行動態を安定させる
・COPD患者において、肺高血圧を改善させたり安定させることがある。しかし、LTOTを行っている患者の有害事象の予測がいまだ存在する。

2022/09/06

COPD 運動時酸素吸入にて息切れ症状は改善、生存率には影響しない

Exercise response to oxygen supplementation is not associated with survival in hypoxemic patients with obstructive lung disease

Int J Chron Obstruct Pulmon Dis (IF: 2.77; Q1). 2018 May 17;13:1607-1612.


【背景】
低酸素血症は、重症肺疾患やアウトカムの悪化と関連している。動作時低酸素血症のあるCOPD患者において、酸素療法は運動耐容能を向上させる。
離床的に、酸素療法によるこの運動の反応は不明である。

【方法】
動作時酸素の評価のために6MWTを行い、室内気で低酸素があり、酸素吸入をテストに追加したCOPD患者。
酸素療法が有効と判断した基準は、酸素吸入にて26m以上の歩行距離延長が得られた患者。
2006年から2016年に追跡。生存率は2017年時点で判断。
酸素に反応した患者と反応しなかった患者で生存率を比較した。

【結果】
174人の患者が参加
年齢中央値70歳。77人(44.3%)が酸素に反応した。
酸素吸入によって、息切れのborgは1.4ポイント改善(p<.0005)。
生存中央値は66カ月で、84人(48.2%)が死亡。
カプランマイヤーにおいて、酸素反応グループと非反応グループに生存率の違いはなかった(p=0.571)。
Cox回帰分析で、より高い死亡リスクと関連していたのは、室内気で6MWTでの低酸素がより大きい、歩行距離が短い、男性、低Hb、低BMIであった。

【考察】
酸素療法による急性運動反応はCOPD患者の長期予後に関連しなかった。
これは、動作時の酸素療法は対症的な目的にのみの使用を支持した。