2017/03/09

呼吸リハの成功と失敗の予測因子

Predictors of success and failure in pulmonary rehabilitation

 

Eur Respir J 2006; 27: 788–794

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16481381

 

目的はCOPDの呼吸リハが成功する要因と失敗する要因を同定すること。患者はMRCで分類した。

 

対象は74の安定期COPD患者(平均年齢68歳)MRCグレード1,2が21人3,4が29人5が24人平均FEV1.0は1.1L評価項目は大腿四頭筋力6MWD、Brief Assessment Depression Cards 、SGRQドロップアウトと反応(SGRQが4点改善するか6MWDが54m増加)の予測因子をロジスティック回帰分析で検討

 

51の患者が本研究をクリア。39人(77%)は6MWDかSGRQのどちらかで臨床的に著しい改善を示したベースラインの変数は、反応の予測因子として弱かったMRCのグレード別で著しい違いがあった。グレード1,2と3,4の患者のみ改善

していた。抑うつは非抑うつの患者と比べて、ドロップアウトのリスク因子であった。

 

ベースラインの状態は、リハの反応性を予測するには弱かったが、MRC息切れスケールでグレード5の患者は、グレード4以下の患者と比べて効果が小さかった。ドロップアウトのリスクは抑うつの強い患者であった。

 

 

・リハプログラムの内容は、7週間以上実施週に2回の外来リハ1回1時間の運動と教育セッション

・自宅での20分以内運動プログラムを週に5回実施。

・リハの完了は、14回のうち10回は参加することで判断。(10回未満はドロップアウト)

・74人中、23がドロップアウトした。理由は、医療的でない理由、呼吸器疾患、呼吸器以外の疾患。呼吸困難感の悪化はドロップアウトの理由と関係なかった。

・アウトカムの変化量a)6MWD b)大腿四頭筋力 c)SGRQ d)抑うつ

・4つの変数(大腿四頭筋力喫煙歴SGRQ抑うつ)で、ドロップアウトと完了のグループで違いがあった:相関は高くなかった

 

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呼吸困難感は参加してもらえて継続できれば軽減できる。継続のためには環境や喫煙などその他の部分をケアしていくことがドロップアウトを少なくできるかもしれない。



2017/03/08

新たな運動様式の検討 ‐下り坂歩行練習‐

Physiological responses during downhill walking: A new exercise modality for subjects with chronic obstructive pulmonary disease?

 

Chronic Respiratory Disease 2015, Vol. 12(2) 155–164

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25758676

 

大腿四頭筋の低頻度での疲労(LFF:易疲労性?)は、運動によって改善される。健常者において、下り坂歩行(Downhill Walking:DW)によってもたらされる遠心性筋収縮は筋に対して高い負荷を与え、平地歩行(Level Walking:LW)と比べて低い代謝コストで行われる。

 

目的は、COPD患者において、DWの大腿四頭筋LFFと代謝コストを検討すること

 

10人の対象(平均年齢67歳 %FEV1.0 51%)がDWを実施DWでは体重の10%の重りを持つ(DWL)ようにし、無作為に実施大腿四頭筋力(TWqpot)はそれぞれの歩行後に測定筋損傷はそれぞれの歩行前と24時間後に測定(クレアチンキナーゼ:CKをマーカーとした)換気量(VE)と酸素摂取量(VO2)はそれぞれの歩行中呼気ガス分析を実施

 

DWとDWLは結果としてLWと比べて筋力が低下していた。CKはDWとDWLのみに24時間後の上昇が見られた。DWとDWLはLWと比べて低いVEとVO2を示した

 

DWは大腿四頭筋力のLFF改善や心肺負荷コストが低い事と関連していた更にDWでの胸部負荷はこれらの効果が得られなかった。

 

・下りの傾斜は10%、歩行速度は6MWTの75%、時間はできるだけ長く20を目標に(最低15分)

DWLはDWと同様のセッティングで体重の10%の重りをベストに入れて着用(負荷量を増加させる目的で)

LWはトレッドミルで傾斜をつけずに歩行

・必要であればサイドバーを持っても良い。

 

・アウトカム測定:大腿四頭筋力をそれぞれの歩行前15分後40分後に測定

・歩行中は呼気ガス分析を実施。

・大腿四頭筋力はDWで15%減少DWではLFFが強く表れていた。

大腿四頭筋力の変化:a)平地歩行 b)下り坂歩行 c)負荷付き下り坂歩行

 

DWとDWLは平地歩行よりもVO2とVEが低かった

 

 



2017/03/06

呼吸困難のきっかけには前頭前皮質が関連している。

Dyspnea-Related Cues Engage the Prefrontal Cortex

-Evidence From Functional Brain Imaging in COPD -

 

CHEST  2015; 148(4): 953-961

 

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012369215502845

 

背景

呼吸困難感はCOPDの活動制限の主な原因である。環境的なきっかけ(階段を上る状況など)が呼吸困難と関連しており、身体活動を始める前から呼吸困難のトリガーになっているかもしれない。今回の検討では、脳の活動がこのようなきっかけによって異なるかをCOPDと健常グループで比較し、患者においては感情機序の結びつきを反映していると仮説した。

 

方法

機能的MRI(FMRI)を使用して41人のCOPD患者と40人の年齢をマッチさせた健常者の呼吸困難による脳の反応を調べた。併せて、自己記入の質問表のスコアとFMRIの関連を調べた

 

結果

COPD患者は内側前頭前野皮質と前方帯状皮質に活動が見られ、VASと相関していた。この活動は患者の抑うつ疲労感、息切れの警戒心の質問への回答と独立して相関していた前方島皮質外側前頭前野皮質楔前部の活性化とVASの息切れスケールが相関していたが、質問とは関連がなかった

 

結語

今回の結果は、脳の感情機能回路がCOPDの息切れの発現関連している重要な解釈がなされ、抑うつ疲労感警戒心によって活性化していた目立った反応が高められたのは、慢性疼痛や喘息の症状の増強と関連しており、COPDでも同じようなメカニズムが確認されるかもしれないことを示唆していた。

 

・対象は呼吸リハを提供されている40以上の軽症から中等症のCOPD患者

MRIでスキャン中に対象者へ無作為に呼吸困難のきっかけに関連した言葉を伝えた

これらの言葉を確認して、どの程度息切れを感じるか不安感を感じるかをVASで測定

・運動機能の評価は修正シャトルウォーキングテスト(MSWT)で実施

COPD患者はMRI中の言葉によって、呼吸困難を強く感じており、息切れの不安も同様に強く感じていた

 

COPD患者のMRIで息切れ(VAS scale)と関連していた部位:内側前前野、前島皮質外側前前皮質前帯状皮質楔前部

 

 

・健常者のMRIで息切れ(VAS scale)と関連していた部位:前頭前野、前島皮質被殻尾状核角回、縁上上前頭回

 

COPDと健常者で比較:共通して左脳の前島皮質が反応COPDのほうが左脳の内側前前野前帯状皮質が強く反応健常者では対照的に角回、縁上上前頭、楔前部が反応

 

 

・抑うつ、疲労感と内側前前野外側前前皮質前帯状皮質の活動に負の相関。

 

 

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情動系と呼吸が関係しているという証拠になるかな。

脳の解剖や機能について誰か解説してほしい。。。泣 

 



2017/03/02

疲労感や疲労感の強さのアウトカムへの影響

The Effect of Fatigue and Fatigue Intensity on Exercise Tolerance in Moderate COPD

 

Lung (2016) 194:889–895

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27549363

 

背景

疲労感はCOPDでよく見られる症状のひとつである。しかし、疲労感の機能障害への影響についてはあまり知られていない。運動耐容能における疲労感と疲労強度の影響をその他の要因を調整し多変量解析と息切れの比較をした。

 

方法

119人の患者中等症から重症のCOPD(38%が女性平均年齢66歳)

評価項目はMRC、Manchester COPD fatigue scale (MCFS) 、Borg Scale6MWD

CES-D(抑うつスケール)SGRQBODE index肺機能血ガス全身炎症マーカー、 fat-free mass index (FFMI)。

 

結果

MCFSで測定した疲労感は、6MWDと関連しており、22%が妥当な結果であった。6MWT終了時点でのボルグスケールで2点以上の増加があった患者の割合は、疲労感が33%、息切れで50%疲労感と息切れの両方は23%に見られた

6MWT前後の疲労のスコアは6MWDと負の相関があった。

 

結語

中等症の安定期COPDにおいて、疲労感は、息切れ同じように、機能障害を加速させるものかもしれない。

 

・疲労感の評価のMCFSとは、身体的認知心理社会的な疲労感を総合して評価点数は0-54点で、高得点は疲労感が強いことを表す。

6MWDをBODEindexのベースと運動機能低下の指標として350mをカットオフとした。

6MWT前後でのボルグスケールを聴取2点の変化が呼吸困難の改善のMCIDとされている。

・全身炎症マーカーはTNF-α、IL-6CRPを採用

MCFSと6MWDに高い負の相関がった。(疲労感が強いと6MWDが短い)

6MWTでのボルグスケールが2点以上の増加があった患者は、6MWD短く重症COPDで抑うつ傾向QOLが悪化していた

 

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"Fatigue"って日本語でいうところの"だるさ"や"倦怠感"も含まれるみたい。

下肢に限定したFatigueも関連していそう。



2017/03/01

CPAPがCOPD患者の吸気予備量を増加させた

Continuous positive airway pressure increases inspiratory capacity of COPD patients

 

Respirology.2008 May;13(3):387-93.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18399861

 

目的

過膨張は吸気予備量(IC)を減少させ、状態安定に関わらずCOPD患者に見られるCPAPは過膨張を減少させる可能性がある。

目的は、安定期COPD患者のICを増加させるかを検討すること。

 

方法

21の安定期COPD患者を対象(9人は気腫型12人は気管支炎型)CPAPは4cmH2O,

7cmH2O,11cmH2O5分間実施それぞれのCPAPトライアル前後にFVCとSVCを測定3つのレベルでCPAPを行った結果ICが最も減少していたを見つけ更に2cmH2Oでのトライアルも追加して行った。それぞれの患者に、最良のCPAP( best CPAP)レベルを最もよかったICと関連している圧を1つ決めた

 

結果

15の患者でICとSVCが増加平均IC変化量は159ml平均SVC変化量は240ml気腫型の3人の患者で平均IC変化量は216ml気管支炎型の6人の患者ではICの増加は見られなかった

 

結語

最良の個別のCPAPは安定期COPD患者特に気腫型の患者においてICの増加が得られた

 

CPAPのインターフェイスはフェイスマスクFiO2は0.21(ルームエアー)だがSpO2が90%を下回る場合は最大0.5まで増加し

CPAPは4cmH2Oから開始7cmH2O11cmH2Oを試した

・もし、ICがこの3種類の圧で減少したら、2cmH2Oでのトライアルを行い、ICを増加させる最も低いCPAPを検討した

・研究プロトコル

 

best CPAPは最もICが増加したとしたもし、全てのトライアルでICが減少した場合は、最も減少が少ないとした。

・平均年齢63歳、BMI27.3、FEV1.0 0.98L(40.7%Predicted)、FVC  2.18L

 

・最初からICが高い患者にCPAPをするとICが減少していた。

 

・Best CPAPの前後で比較すると、CPAP後のICは同じレベルになっていた。

 

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Best CPAPの圧がどれくらいだったか見当たらなかったが、気腫型の方が改善が大きいというのは納得。エアートラッピングへの対処として機械換気を利用するのも対応のひとつ。